日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は6月14日、都内でサマーセミナーを開催した。基調講演では、東京大学大学院工学系研究科 工学博士の中須賀真一教授が「超小型衛星による新しい宇宙開発利用への挑戦 ~安い・早い・多いが、新しい未来を作る~」と題し、東京大学がこれまで開発してきた超小型衛星とそれを活用したビジネス応用例を紹介した。

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 冒頭、中須賀教授は「超小型衛星がゲームチェンジを起こしている」と語った。宇宙開発の領域では中・大型衛星の開発が中心だ。中・大型衛星は5~10年と開発期間が長く、1機当たり数百億円の開発費が必要になる。そのため、「顧客のほとんどは国。ビジネスとしてなかなか横に広がらない」と中須賀教授は説明する。

 それに対して、最近増えているのが重さ50kg以下の超小型衛星を使ったビジネスだ。数千万円から開発でき、開発期間も1~2年と短い。2017年時点では300機前後だった超小型衛星の打ち上げ台数が、22年には430~570機まで増加すると調査会社は予想している。

 超小型衛星の開発は東京大学も行っている。03年には世界で初めて重さ1㎏の超小型衛星を打ち上げた。開発期間は2年間で、開発コストは約300万円だ。「宇宙は過酷な環境で、この環境に耐えられる専用の部品は非常に高額。蛍光灯1本で1000万円もかかる。私たちは秋葉原などで宇宙環境に耐えられる民生部品を探し出し、大幅にコストを抑えることができた」と中須賀教授は話す。

 衛星開発費、開発期間を大幅に抑えることで、これまで潜在化しなかったニーズが生まれた。「気象予報会社から、航海の安全情報として北極海の氷山情報を衛星で収集したいという相談があり、この件はビジネス化した。海外の例では、衛星写真からタンク内のオイル量やトラックの台数を測定するなど経済状況を把握するビジネスがある。このほか、衛星データを収穫高の予想に活用することもできる」と中須賀教授は語る。国内でも超小型衛星を活用した宇宙ビジネスを手掛けるベンチャー企業が生まれている。

 最後に中須賀教授は「超小型衛星はお弁当箱のようなもの。箱の中にどんなおかずを入れ、栄養素を重視したお弁当にするか、見た目を重視したお弁当にするか、アイデアによって変わる。このお弁当の文化は日本独特なもの。この特性を生かして、超小型衛星にどんな機能をのせるかアイデアを生かし、日本が超小型衛星の世界でリーダーシップを発揮してほしい」と締めくくった。

東京大学の中須賀真一教授