海外のニュースサイト『THE SUN』など複数のメディアは6月6日、ブラジルで1990年代から2000年代初頭に活躍した大人気司会者のウォレス・ソウザ氏が、視聴率稼ぎのため殺人を指示していた事件がNetflixでドキュメンタリー作品になったと報じた。

 ソウザ氏が司会をしていたバラエティ番組『カナル・リブレ』は、他の追随を許さない圧倒的人気を獲得していた。元警官の彼は麻薬取引の犯行現場に赴き、警察に同行するなどして、自らの勇敢かつ積極的な取材ぶりを生中継で放送。殺人や誘拐、時には権力者にも果敢に挑む彼の姿は、人々の支持を得て人気番組となった。

 同番組は警察が到着する前に犯罪現場を伝える速報性の高さで人気を博したが、番組スタッフが毎回のように第一発見者となる点や、犠牲者の映像が多数出てくる点について、やらせではないかとの噂もあったようだ。警察当局は、2008年冬に放送された回で発見された麻薬密売人とされる人物の遺体が殺害直後とみられることを不審に思い、同番組を疑い始めたという。決定打になったのは2009年、番組の視聴率を稼ぐために5人の殺し屋を雇ったとの疑惑が浮上したこと。州議会議員も務めていたソウザ氏は多くの非難を受け、前代未聞の事件として世界中のメディアで取り上げられたという。

 元ボディーガードが麻薬の密輸や殺害をソウザ氏に指示されたと告発したことから、2009年10月、起訴されることとなったソウザ氏。しかし、自身の無実を訴え続けながら、2010年7月27日、心臓発作で死亡したと同記事は報じている。

 ソウザ氏の死により、捜査は早い段階で中断されたそうだが、ソウザ氏の息子は殺人・薬物密売、銃の不法所持などで2009年8月に逮捕され、刑務所に収監され、2015年まで服役していたそうだ。彼も自身と父の無実を2019年現在も訴え続けているという。

 このニュースを受け「この事件は、誰を信じるべきかわからない」「当時この番組を観ていたときはスリリングな展開に興奮したね」「自分自身が犯罪者になって番組を面白くするとはね」「まぁ自分で殺人指示してそれをスクープにすれば視聴率は取れるよね。殺人ではないにしろ、そういう自作自演メディアってあるよ」などと、事件の真相に疑問を示し、番組作りに意見するコメントが寄せられている。

 テレビ番組のスクープのねつ造問題は他国でも起こっている。

 2007年7月、中国メディアが、北京市内の露店で「段ボール肉まん」が販売されていると報じたが、実はねつ造であったことを同国政府が明らかにしたという。やらせ番組が多いといわれる中国だが、「段ボール肉まん」報道に北京では一時大パニックとなったそうだ。日本でも、当時メディアで大きく取り上げられた。その後、同月22日に国際ニュースサイト『AFPBB News』は、政府がねつ造と発表したものの、多くの国民は政府の発表を信じていないと報じた。

 テレビ番組の「やらせ問題」は日本でも耳にするが、視聴率欲しさに殺人事件まで起こしているとなると、何とも恐ろしい事件だ。

記事内容の引用について
Netflix fans call new documentary Killer Ratings ‘the most insane thing ever' as show reveals TV host MURDERED people to boost ratings (THE SUN)
https://www.thesun.co.uk/tvandshowbiz/9239425/netflix-killer-ratings-fans-insane-thing-ever/

段ボール肉まん報道、ねつ造と発表も国民は冷ややか(AFPBB News)
https://www.afpbb.com/articles/-/2257460?pid=1834214

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