Sleepless in Japan Tour  2019.6.16  さいたまスーパーアリーナ(DAY2)

アリトアラユル問題も  タビカサナルそんな困難も  いつだって僕たちは――
本編の終盤、何度も何度も聴いてきたはずの「Adventure」のフレーズに胸を熱くした。

[ALEXANDROS]が昨年11月リリースしたアルバムSleepless in Brooklyn』を携えてまわったツアーの最終公演、2日目、さいたまスーパーアリーナ。『Sleepless in Brooklyn』が音楽的な多様性に富み、新しいフェイズを示す作品であるだけに、そのツアーがどのようなサウンドや演出、構成になるのか?というのは当然大きな注目点であったが、そのこととは別に今回のツアーは彼らにとって、期せずして大きな挑戦となった。半年にも及ぶ期間中、川上洋平(Vo/Gt)の喉の不調、庄村聡泰(Dr)の腰部の怪我、磯部寛之(Ba)の足の怪我……と何度もアクシデントに見舞われながら、バンドは歩みを止めなかった。試行錯誤を重ね、ときに周りのバンドマンに助けられながら、ついに辿りついたツアーファイナルがこの日なのである。

[ALEXANDROS]  撮影=河本悠貴

[ALEXANDROS] 撮影=河本悠貴

タイトルにある“ブルックリン”をイメージしたものか、左右の花道やセンターステージへと延びるランウェイの側面、ステージの背後にはストリート風味のペインティングが施されている。大歓声の中オープニングムービーが流れた後、真っ白レーザーが放たれる中をメンバーが登場すると、「LAST MINUTE」からライブが始まった。ミドルテンポクールな感触を持つ楽曲による落ち着いた立ち上がりだが、よく低音の効いたベースの音色が前に出ており、アリーナ全体がジワジワと熱を帯びていくような感覚は、嵐の前の静けさといったところか。事実、庄村のドラムソロから川上がランウェイの半ばでイントロギターを奏で、サウンドが弾けると同時にキャノン砲が轟いた「Starrrrrrr」、磯部とサポートキーボディストROSEによるパーカッションビートを刻む上に川上のラップが乗った「I Don’t Believe In You」と場内は一気に加速していった。

[ALEXANDROS]  撮影=河本悠貴

[ALEXANDROS] 撮影=河本悠貴

白井眞輝のギターが唸りを上げ、ガレージロックを思わせるストレートバンドサウンドファルセットボイスボーカル美しい「Follow Me」や、ヒップホップダンスミュージックといった要素を人力のバンドサウンドと融合させた「Come Closer」と、前半はシングルカップリング曲も盛り込みながら進行。光の粒が場内を巡る中、川上がセンターステージで歌った「SNOW SOUND」では、アリーナマイクを向けると大きなシンガロングが巻き起こる。「最高の歌声ですよ。今の曲をシンガロングできるってすごくないですか? キー高いですよ?」と嬉しそうな川上は、これまでのツアー振り返り、「一つ一つのライブが最高だったし、それがあるから今がある」と断言。そう、冒頭で触れたような出来事を経験しながらも、この日の会場に感傷的な空気は皆無だった。むしろそれらを乗り越えて血肉とした4人が揃って音を鳴らしていること、それを観られることへの大きな歓びに包まれていたように思う。メンバーの表情も柔らかく楽しそうだったし、MCの回数やそこでの発言内容、テンションも含め、2時間近くぶっ通しでライブをすることも多かったここ最近の姿とは一味違って見えた。

[ALEXANDROS]  撮影=山川哲矢

[ALEXANDROS] 撮影=山川哲矢

全体的に過度なショーアップは無いものの、洗練された華やかさのあったこの日において、中盤はちょっと色が変わり、音源を凌駕する迫力を伴うヘヴィなナンバーが並んだ。「Kaiju」で、復帰したばかりは思えない庄村の強烈なビートに射抜かれ、ランウェイで仰向けになった川上の宙を射抜くようなポーズを合図に放たれた「MILK」では、レイジアゲインスト・ザ・マシーンやビースティ・ボーイズなど往年のミクスチャーフラッシュバック。座ってのプレイにもかかわらず磯部、頭振りまくり。「Mosquito Bite」の間奏で向き合いながらギターを重ねたあと、グータッチする川上と白井の姿には思わず顔がほころんだ。早くもこちらを仕留めにきたか?という「Kick&Spin」の熱狂のあと、センターステージの頭上に据えられたビジョンの中からドラムセットキーボードが降りてきて、川上がそちらへ向かう。

[ALEXANDROS]  撮影=ハタサトシ

[ALEXANDROS] 撮影=ハタサトシ

バレンタインはみんな結構プレゼントを送ってくれるけど、誕生日にはあまり来ない、ちなみに自分の誕生日は来週だ――と他愛もない話で沸かせたあと、アコギ一本で弾き語り始めたのは「You’re So Sweet & I Love You」だ。途中でメインステージの方から白井が歩いてきて、その後もROSE、庄村と加わり、最後に松葉杖をつきながら磯部が合流。そのままセンターステージから、もはや完全にアンセムの一つとなった「明日、また」を投下する。その後メインステージに戻って演奏されたのは「NEW WALL」だった。敵いそうも無い壁が立ちはだかって傷を望んでも、僕はそれを愛するだろう、と歌われるこの曲がセットリストに乗ったことは、この日のライブに見た彼らの不撓不屈っぷりを象徴する一幕といえる。

[ALEXANDROS]  撮影=ハタサトシ

[ALEXANDROS] 撮影=ハタサトシ

再び磯部とROSE、今度は白井も加わってのパーカッションプレイから「FISH TACOS PARTY」が始まる頃には、その音が生む祝祭感とともにライブは終わりに近づいていく。「Your Song」は『Sleepless in Brooklyn』のジャケットに手足の生えたキャラクターが登場する映像とともに。歌詞でいうところの「君の歌」と時の流れを題材としたその内容にすっかりジーンとさせられたところで、最後のMCがあった。
「やっぱり自分たちは世界一だなと思ってます」「何があってもALEXANDROSは進み続けます。クソジジイになっても死ぬまで続けます。お前らが付いてこなくなっても続けます。必ず俺らは、一番になってみせます」
川上の力強い言葉に特大のリアクションで応えるオーディエンス。そんな輝かしい光景のもと、先述した「Adventure」を、そしてラストアルバムリード曲「アルペジオ」を届けて彼らはステージを後にした。

[ALEXANDROS]  撮影=ハタサトシ

[ALEXANDROS] 撮影=ハタサトシ

「埼玉、ぶっ壊れようぜ!!」
いつもはライブ冒頭で流れるカウントダウンコールと、そこからの「Burgur Queen」で華々しくはじまったアンコールは、まるでそこから別のライブを観るかのよう。『Sleepless in Brooklyn』とそのツアー、というフェイズをひとまず終えた彼らの、その先へ向かう意志を強く感じさせてくれるものだった。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』日本版主題歌の名バラードPray」も、アクエリアスのCMで話題となっているドロス節炸裂の新曲「月色ホライズン」もここで披露。満を持しての「ワタリドリ」では銀テープが宙を舞い、多幸感に満たされた幕切れとなった。

[ALEXANDROS]  撮影=ハタサトシ

[ALEXANDROS] 撮影=ハタサトシ

この日、磯部による印象的なMCがあった。それは、さいたまスーパーアリーナのすぐ近くにあるライブハウス、HEAVEN'S ROCKさいたま新都心 VJ-3)は[ALEXANDROS]が他アーティストに帯同して回った“武者修行ツアー”の初日に立ったステージだということ、そこで初めて自主制作CDが70枚も売れたこと。初めて自分たちに価値を見出してもらえて気がして嬉しくて、帰りに焼肉を食べて盛り上がったこと。
それから10年の間に、[ALEXANDROS]は何千、何万倍の目と耳に触れるようになった。ただし、まだまだ道半ば。かなりスロースタートだった彼らがこの10年で切り拓いてきた道の最新到達点がこの日のライブだとすれば、この先の10年で道はどこまで繋がっていくのか。想いを馳せずにはいられない。


取材・文=風間大洋   撮影=河本悠貴、山川哲矢、ハタサトシ

[ALEXANDROS] 撮影=河本悠貴

[ALEXANDROS] 撮影=河本悠貴

[ALEXANDROS] 撮影=山川哲矢