8代目となるアウディA6が日本に上陸した。ラリーで活躍したビッグクワトロをイメージさせる、エッジの効いたシャープなエクステリアが印象的だ。 REPORT◉吉田拓生(YOSHIDA Takuo) PHOTO◉神村 聖(KAMIMURA Satoshi) ※本記事は『GENROQ』2019年6月号の記事を再編集・再構成したものです。

 近ごろのガソリン車は先代の特徴を色濃く踏襲することが多い。今まさに本邦上陸を果たしたばかりの新型アウディA6も、スタイリングを見る限りそんな流行に則っているように思える。

 スモーSUVのQ2によって新たなデザインスキームを提示してみせたアウディだが、新型A6を見てもわかる通り、セダン系はこれまでの延長線上ともいえるコンサバなデザインに終始している。ボディサイズは先代より全体的に微かに大きくなっている。

タッチパネルを多用したインパネが特徴的な室内。水平基調のシンプルなデザインは最近のアウディの特徴だ。

 日本市場に最初に導入されたモデルのパワーユニットはガソリンの3.0ℓV6ターボをメインの動力源としているがBAS(ベルト・オルターネーター・スターター)とリチウムイオンバッテリーを組み合わせた48Vのマイルドハイブリッドシステムも組み合わさったシステムになっており、最高出力は340㎰となる。

 最近のアウディはモデルネームの中にグレードを示す2ケタの数字を含めており、ガソリン3.0ℓモデルは55となる。これまでアウディの車名は排気量のみの提示だったので、今後はもう少し車格を捉えやすくなるかもしれない。

試乗車はリヤコンフォートパッケージ(30万円)を装備しており、シートヒーターや4ゾーンエアコンを装備。

 今回は同一のパワートレインを搭載したセダンとアバントのSラインモデルを一気に試乗できた。実車を目の当たりにした第一印象は「けっこうお値段張りそう!」というもの。全体の伸びやかなシルエットこそ歴代A6を受け継いでいるが、バンパーやヘッドランプフェンダー、ドア等の端々にエッジが効いており、面の主張も強く、高級感を増している。特にテールエンドに向けてルーフが早めに下降しはじめるアバントのリヤスタイルは都会的な印象が漂う。

 インテリアは外装に輪をかけて上質に見える。操作に戸惑うほどの変更ではないが、シルバーで縁取られた颯爽とした眺めの中に黒いモニターや操作系が上手に散りばめられており、インフォテインメントシステムのデザインが最新のiPhoneのようなデジタルガジェットに上手く馴染んできている。

荷室容量は通常時で565ℓ。後席を倒せば1680ℓに達する。

 ドライ路面をゆったりと走らせている限り、新型A6の走りに特筆すべき点は“良い意味で”見当たらない。駆動システムはもちろんAWDクワトロなのだが、スポーツ系オンデマンド4駆を急加速させた時のようなクセも一切ない。そしてエアサスとセットオプションになっているダイナミックオールステアリングホイールと呼ばれる後輪操舵も、サイドミラーを下に向けていると舵を切る様子がはっきりわかるほど切れているのに、フィーリングは実に自然な感じで好感が持てる。

 マイルドハイブリッドシステムの効果に関しても、明確なサポートの様子を感じることができなかった。だがエフィシェンシィモードで比較的静かに走っている時には、停止する際にスロットルオフするとエンジンがスッと切れ、積極的に回生が行われていることがわかった。


自動運転技術の実用化に積極的なアウディなので、グリルレーダーなどセンサー類は豊富に装備されている。

 普通にドライ路面を走っている限りでは「新型アウディA6、フツーに良いクルマでした。以上!」という感じなのだが、今回は試乗後半にけっこうな雨が降ったことで、なかなか得難い経験できたので報告しよう。高速道路で周りのクルマが止まって見えるくらい、A6は速いのだ。ヘビーウエットでも少しも不安に感じることなくドライと同じペースで走ることができる。

 エンジン縦置きのアウディが使用しているトランスミッションはポピュラーなZF製8速なので、これまで僕はクワトロ・システムと言っても他メーカーの4駆とあまり違わないのでは? と思っていた。ところが先日アウディのセンターデフを製作している某メーカーの方と話す機会があり、こちらの勝手な思い込みを反省することになった。

搭載される3.0ℓV6ターボエンジンは48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされ、22㎞/h以下でエンジン停止する。

 トルセンLSDのような多数のギヤで構成されたクワトロ用センターデフは常時噛合なのでどんな細かい電制カップリングよりフィーリングが自然。安いオンデマンド4駆とはワケが違う! とのこと。

 そんな先入観をもって雨の高速道路で新型A6を走らせてみると、なるほど駆動の切れ間のなさが違和感のなさに直結している。結果としてグイグイとスロットルが踏めてしまう。「もし滑ったらすぐにフロントも駆動しますよ」というその他大勢とは安心感が確かに違うのだ。

 表面的な変化に留まっているように見えるデザインに代表されるように、昨今のクルマの基本的な性能や構成手法はある程度煮詰まっているのだろう。けれどコストを掛けるか掛けないかという違いがなくなることはない。新型A6はセダンもアバントも1000万円超えだが、それに見合った内容、質感はちゃんと持ち合わせているのである。

アウディA6 55 TFSIクワトロ Sライン
〈A6アバント 55 TFSIクワトロ Sライン〉
■ボディサイズ:全長4950×全幅1885×全高1430〈1465〉㎜ ホイールベース:2925㎜
■車両重量:1880〈1930〉㎏
■エンジン:V型6気筒DOHCターボ 総排気量:2994㏄ 圧縮比:11.2 最高出力:250kW(340㎰)/5200~6400rpm 最大トルク:500Nm(51.0㎏m)/1370~4500rpm 
■トランスミッション:7速DCT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕ&Ⓡダブルウイッシュボーン
ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ245/45R19
■環境性能(JC08モード) 燃料消費率:12.3㎞/ℓ
■車両本体価格:1006〈1041〉万円