日本はチリに4失点の大敗 初の先発フル出場を飾った久保は王者チリ相手に存在感

 日本代表は現地時間17日、コパ・アメリカ南米選手権)初戦でチリ代表と対戦し、0-4で大敗を喫した。若手主体で臨んだ日本は、A代表デビューとなる6選手を先発に送り込んだものの、大会連覇中の王者に勝負強さの違いを見せつけられる格好となった。

 この結果を受け、かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を6大会連続で取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、初の先発フル出場を飾ったMF久保建英FC東京レアル・マドリード)のパフォーマンスについて「輝かしい未来を提示するには充分なショータイムとなった」と惜しみない賛辞を送り、「日本サッカー界の新たな新時代の到来を垣間見た」と、久保が引き続きA代表をけん引する存在となることに太鼓判を押している。

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 王者チリが徹底的に日本のスカッドの未熟さを露呈させたため、おそらく久保建英は今後、初の先発フル出場を懐かしく振り返ることはないだろう。4-0のスコアは残酷だったかもしれない。上田綺世(法政大)が得点をもたらしていたら、おそらく一方的な展開とはなっていなかっただろう。しかし、レアル・マドリードへ向かう10代は、輝かしい未来を提示するには充分なショータイムとなった。

 彼の先発出場は、ここ数年で最も熱望されていたものであり、おそらく1998年のワールド・カップ予選でデビューした小野伸二北海道コンサドーレ札幌)以来となるだろう。この18歳は、歯車の合わないチームの中で、視線を集めるプレーを見せていた。1トップに配置された上田の背後に入り、左に中島翔哉(アル・ドゥハイル)、右に前田大然松本山雅FC)が置かれたなか、創造性を生み出す役割は久保の肩に一任されていた。エリック・プルガル(ボローニャ)の徹底的な監視下にあったにもかかわらず、一切怯むことがなかった。

 太い首がタトゥーで覆われているプルガルは、素質や自信に欠けている選手を怯えさせるような存在だが、両者の間で行われたバトルは白熱した接戦であったことが証明されていた。セリエAで活躍するMFは、試合の立ち上がりの場面で久保から素早くボールを奪取した一方、日本のプレーメーカーもすぐに洒落た股抜きでリベンジを果たした。その際、プルガルに自身のフィジカルでは久保が巧みなボールタッチと守備網を打開する才能を披露するのを潰すことはできないということを悟らせた。

「彼のクオリティーが頭角を現わすのはこれから」

 日本にはポゼッションを高める能力がなく、あまりに多発したパスミスは、頻繁に時機を逸する犠牲を払っていた。それは森保監督にもダメージを与え、チリを後方に追いやるチャンスを久保や中島に与えることもほとんどできなかった。しかし、励みとなるのは、久保にそのようなチャンスが与えられた際は、王者に対して攻撃を仕掛ける期待感を持つことができたということだ。ターンし前を向く動きや、ボールを運ぶドリブル、攻撃陣に向けた狭いスペースへのパスなど、彼の存在感はチリの守備陣に気を張らせ続けた。

 相手に立て続けにゴールを奪われてもなお、このヤングスターはチームメートが気力を取り戻すべく、刺激を呼び起こそうと試みていた。彼が試合で見せた最高の瞬間は、中山からパスを受けた際、ペナルティーエリア付近で3人のチリの防波堤をかいくぐり、サイドネットを叩くシュートを打ち込んだ場面だ。フィニッシュには落胆することになったが、彼の存在感は自信とクオリティーを際立たせる強烈な破裂音を鳴らしていた。

 久保が完成された作品であるとは誰も考えていないし、FC東京を旅立った男はA代表で習得すべき優先事項がたくさんあることに疑いの余地はない。しかし、輝かしい未来を提示するショータイムを披露しており、サムライブルーの先発レギュラーとして、トップ下のMF南野拓実ザルツブルク)からポジションを奪い得る存在だ。久保は優秀な選手に囲まれる環境に身を置いているが、コパ・アメリカのスカッドが日本の素晴らしい才能のすべてを揃えていると鼻を高くするのはやめよう。彼のクオリティーが頭角を現わすのはこれからだ。その日はまもなくやってくるだろうが、火曜日は日本サッカー界の新時代の到来を垣間見ることができた。(マイケル・チャーチ/Michael Church)

日本代表MF久保建英【写真:AP】