現在の東海道・山陽新幹線をメインで走るN700系の「プロトタイプ」が引退。先頭車を含む3両がJR東海の「リニア・鉄道館」で保存・展示されることになり、先頭車1両が搬入されました。

先頭車含む3両を屋外に設置

JR東海が2019年6月19日(水)、同社の博物館施設「リニア・鉄道館」(名古屋市港区)に、N700系新幹線電車1両を搬入しました。

7月からの一般公開に向けたもので、このたび搬入されたのは、N700系の「量産先行試作車(プロトタイプ)」として開発された「X0編成」16両のうち、新大阪寄りの先頭車(1号車の普通車。車両番号は783-9001)。午前3時50分ごろ、トレーラーでリニア・鉄道館に運び込まれました。

今後、中間車の8号車(グリーン車の775-9001)と14号車(普通車の786-9201)も搬入され、これまで在来線117系電車が展示されていたスペースに、1号車、14号車、8号車の順で並べられる予定です。

N700系「量産先行試作車」とは? 量産車デビュー後も試験で使用

N700系700系に次ぐ車両として開発された、東海道・山陽新幹線用の電車。最高運転速度は700系より15km/h向上し、東海道新幹線285km/h、山陽新幹線を300km/hで走ります。また、新幹線の車両としては初めて車体傾斜装置を導入。カーブがきつい区間では車体を傾けて遠心力を弱め、乗り心地を悪くせずに高速運転できます。

N700系は、まず量産先行試作車の「Z0編成」が2005(平成17)年に製造され、走行試験を実施。その結果が、2009(平成21)年にデビューした量産車に反映されました。一方、Z0編成は引き続き試験用の車両として使われ、同年11月に行われた走行試験では最高速度332km/hを記録しています。

その後、2013(平成25)年にN700系の改良型「N700A」がデビューし、従来のN700系は全車N700Aタイプに改造されました。Z0編成もN700Aタイプに改造されて「X0編成」に生まれ変わりましたが、N700Aに続く新型車両「N700S」の確認試験車「J0編成」が2018年に完成したのに伴い、X0編成は2019年2月に引退しました。

リニア・鉄道館で展示される3両は、7月17日(水)から一般公開される予定。車内も公開され、弁当やドリンクなどを持ち込んでの飲食も可能です。なお、これまで屋外展示コーナーに設置されていた117系電車3両のうち先頭車1両が屋内展示スペースに移設されます。

同館は東海道新幹線を走った車両のうち、0系から700系まで6形式10両を屋内で展示していますが、N700系を展示するのはX0編成の3両が初めて。同館の屋外で展示される新幹線車両も、この3両が初めてになります。

クレーンでつり上げられたN700系X0編成の先頭車(2019年6月19日、草町義和撮影)。