声優・小野友樹が、ミニアルバム『Friend Tree Wonderland』を6月19日にリリース。その制作秘話を聞いたインタビューが、発売中の「アニメディア7月号」に掲載されている。「超!アニメディア」では、本誌記事内ではお届けしきれなかった部分も含めたインタビュー全文をご紹介する。
■交友関係の広い小野ならではのメンバーが参加
ーーこの音楽プロジェクトは、どういうきっかけでスタートしましたか?
ランティスさんから『パーティーマン』シリーズと題した三部作を出させていただいて、江口拓也くんと“Teamゆーたく”という活動を8年やっています。『パーティーマン』シリーズを終えて2年、改めて自分のなかにある表現したい音楽は何か、声優として活動をさせていただけているからこその音楽とは? それを探してみたいと思いました。ゆーたくとも違った、小野友樹個人の音楽を模索するというところで、自主制作に近い形を取りました。
ーーでも声優業を行いながらの自主制作は、大変じゃないですか?
やらなければいけないことがたくさんあるので、そういう意味では大変ですけど、その先にはみんなと作りたいものや、自分が作りたいと思っているものがあるので、それに対する楽しみのほうが大きいですね。
ーー今回リリースする『Friend Tree Wonderland』は、その“みんなと”という言葉もキーワードになっている作品だと思いました。タイトルも小野さんの名前“友樹”の漢字二文字をそれぞれ英語にして、それをテーマパークに見立てています。
ニコ生の『行こうぜ!友トピア』をリニューアルするときに、遊園地をテーマにしようということになって。そこからのインスパイアもあって、このミニアルバムも遊園地をモチーフにしようと思ったんです。この遊園地にはショーをやる小屋があって、収録曲はそこで上演される演目のテーマ曲というイメージです。だから曲ごとにうっすらとしたストーリー設定があります。
ーー今作でも作詞作曲をたくさんやられていますが、いつもどういう風に作っているのですか?
まず自分のなかにある思いや感情を言葉にして、ノートに書き出していって。それを見ながら「これはAメロっぽい」「これはサビっぽい」という感じで、何となく歌詞を構成していきます。それで、ICレコーダーを回しながらひとまず歌ってみるんです。
ーーそれをアレンジャーさんに渡して、仕上げてもらうと。ピアノやギターなどの楽器は使わないんですね。
そうですね。ピアノやギターも弾けますけど、コードや伴奏を付けると、それに影響されてメロディが変わってしまうことがあるんです。だからまずは楽器を使わずに、自分のなかにあるメロディだけを引き出すように心がけています。
ーーこれまでどのくらい作っているのですか?
数十曲という感じですけど、今までは、「こういう曲が作りたい」というテーマがあって、それに沿って作っていました。だから何もないところから、自分の内側にあるメロディを引っ張り出すという作り方は初めてでした。
ーーその時点で、バックのサウンドは頭のなかで鳴っているんですか?
一応あります。アレンジャーの方にはその都度イメージを伝えて作っていただいています。曲によってほとんどお任せしてしまっているものもありますけど、表題曲「Friend Tree Wonderland」のアレンジはマネージャーのRくんから「友樹さんといつか音楽をやってほしい方がいる」と提案していただいて、アニメ『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』の音楽などに携わっていらっしゃる川村竜さんにお願いしました。
ーー川村さんには、どんな風にイメージを伝えたのですか?
最初は言葉で伝えて、ベースとなるものを作っていただいて。その上で、「ここにこういう楽器がほしい」「ここはこうしたい」と、細かいアイデアを提示させていただきました。同時に「ここはこうしたほうがいいよ」と意見もたくさんくださって、素人の僕の頭で鳴っている音楽にすごく寄り添ってくださって、勉強になるところも多かったですね。
ーーその「Friend Tree Wonderland」で、こだわったところは?
“ザ・バンド!”といったサウンドではなく、ショーを感じさせるきらびやかな音をお願いしました。鐘やストリングスなどいろいろな音が入っていて、〈星の瞬く丘〉という歌詞のところには、さりげなくウィンドチャイムの音を入っています。あと2番のAメロの歌詞は、このアルバムに収録しているほかの曲の要素を入れていて、その歌詞に対応したいろんな音を入れてくださっているので、とても聴き応えがある曲になりましたね。
ーー続いて「天ノ川レコード」は、七夕がテーマ。和楽器バンドのベーシスト・亜沙さんが作詞・作曲・編曲を担当した、和テイストの楽曲でセリフもあります。
亜沙さんが作った「吉原ラメント」という曲を歌わせていただいたのがご縁で仲良くなって、「いつか一緒に何かやりたいね」と話をしていました。「吉原ラメント」が、遊郭の花魁からの視点の歌詞だったので、亜沙さんと作るときはその曲のような感覚がほしいと思っていて、今回それがついに叶いました。僕からは「和のイメージ」ということを伝えただけで、七夕の設定などは亜沙さんのアイデアです。
ーー「Liar Circus」は、小野さんが作詞、作曲は桑原聖さん、編曲は山本恭平さん。ダークさのある格好いいロックチューンですね。
これはストーリーがあって、聴いたみなさんで想像してほしいのであえて多くは語りませんが、1番と2番で、視点が違っているところもポイントです。桑原さんは、『あんさんぶるスターズ!』の楽曲をたくさん手がけている方で、最初に桑原さんからデモをあげてもらって、その仮タイトルが「Liar Circus」だったんです。そのタイトルにインスパイアを受けて歌詞のイメージが浮かんだので、仮タイトルをそのまま使わせていただきました。桑原さんは「まさか使われるとは思っていなかった」とおっしゃっていましたけど(笑)。8月25日に豊洲PITでワンマンライブ『Friend Tree Wonder LIVE』を行うので、そのときは曲中のコーラスをみんなで歌いたいです!
■5年後の40歳の誕生日にみんなと見る景色が楽しみ
ーー疾走感があってキラキラとした印象の「お菓子の森と可笑しな君」には、作詞にまふまふさんが参加しています。
まふまふさんとは、数年前に知り合ったときは何をやっている人か知らなくて、その後に音楽活動のことを知って。まふまふさんが作る曲は、どれも胸に刺さるんですよね! それで1度、彼のライブで一緒に歌わせていただいたことがあって、それがすごく楽しくて「今度一緒に音楽を作りたいね」って話をしていて。今回は、最初にまふまふさんから歌詞をもらって、そこからイメージをして僕が作曲を担当しました。でもその歌詞は、AメロBメロサビみたいな構成ではなくて、歌詞というよりも“詩”という感じだったんです。調理前の素材と言うか。それを元に僕が、言葉を組み替えたり足したり再構成したので、作詞のクレジットを共作という形にしています。
ーーキラキラとした世界感は小野さんから?
彼が作るそういう曲が好きで、全体のバランスとしてそういう曲も入れたいと思っていたので。「あのまふまふさんの歌詞に僕が曲をつけるなんて、いいのかな?」と、最初はプレッシャーがありましたけど、できた曲をすごく気に入ってくれて。「熟練した人じゃないと思い浮かばないメロディです」とか「鳥肌が立った」と言ってくれて。お世辞であっても、尊敬する仲間からそんな言葉をもらって、すごくうれしかったです。みんなに聴いてもらうまでドキドキですけど、早く聴かせたいですね。
ーーそして「キズナメグル」は、ピアノをメインにしたバラード。
この曲のイメージは5年くらいからあったもので、今回バラードを1曲入れたいと思っていて、合うんじゃないかと思ってフルコーラスに仕上げました。歌詞は輪廻転生がベースになっていて、出会えたことに意味があると歌っています。それはこのアルバムの根底にあるものと通じていますね。
ーーそして「Ever Tree」は、まさしく出会いや仲間などについて歌っていて、ファンタジックな世界感が印象的です。
それこそ木の下で、みんなで歌えるような曲を作りたいとZANIOさんにお願いして曲を作ってもらいました。最後の「wow wow wow」は、みんなで一緒に歌いたいです。
ーー今回は、作詞作曲、ボーカルをはじめいろいろな立場で関わって制作していったわけですけど、ご自身から見て、アーティストとしての小野さんはどんなアーティストですか?
まだ、ぜんぜんわかりません(笑)。きっと、これからのアーティストなのかなと思いますね。再出発、再スタートしたばかりで、まだ1枚目がやっと形になったばかりです。これを元にして8月にライブをやらせていただくので、その上でひとつ何かが見えてくるのかなと思います。
ーーちなみに8月のライブは、どんな内容になりそうでしょうか?
昼の部と夜の部があって、夜の部は音楽ライブになりますが、昼の部はトークイベントになります。トークでは新曲のコール&レスポンスを練習するので、参加していただければライブが一層楽しくなること間違いなしです。もしお時間がある方は、ぜひ昼と夜の両方に参加していただけたらうれしいです。
ーーアーティスト小野友樹として、今後の目標などはありますか?
今、チームで決めているのは、まずは2年間がんばろうということです。だから今回1枚出して、うまくいかなかったら終わりではなく、少なくとも2年は、みんなとやりたいことをがんばろうと話しています。その間に機会があれば、もっとライブもやりたいし、リリースもしたいし。それで2年楽しくできたら、次は5年です。5年後はちょうど40歳になるので、誕生日には何かやりたいと考えています。ここからの2年と5年で、音楽や声優、芝居だけじゃなく、人としても成長していきたいです。そうして5年後にみんなと見る景色がどんなものになるのか、今はそれがすごく楽しみです。
ーー小野さんが提唱する“Friend Tree”は、どんな木でしょうか? 昔「この木なんの木」というCMソングがあって、そのCMに出てきた木もイメージしました。
あの木は、実際にハワイにあるんですよね。BUMP OF CHICKENさんが好きな僕としては、「ユグドラシル」というイメージもありますけど。でも想像している絵としては、木の下でみんなが手を繋いで歌って騒いでいる様子です。
ーーその木の下に集まっているのは、今作に参加されたミュージシャンや作家さんたち、スタッフ、応援してくれるファンのみなさんですね。
はい。僕の“Friend Tree”は、「いつもここにどっしりと構えているからね!」という感覚です。僕自身も声優など仕事があるので、ずっと“Friend Tree”の下にいるわけではないですし、今回のライブにはこられなかったとしても、次にきてくれればいいし。むしろ僕の手を離れて、みなさんに楽しんでもらえるような場所になってくれたらいいなって思います。
取材・文/榑林史章
PROFILE
【おの・ゆうき】6月22日生まれ。静岡県出身。フリー。2006年に声優デビューし、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ダイアモンドは砕けない』の東方仗助役などで活躍。数多くのキャラクターソングを担当し、2011年から江口拓也とTeamゆーたくを結成して活動。2015年に小野友樹としてソロデビューした。8月25日に東京・豊洲PITでライブを開催する。
『Friend Tree Wonderland』
発売中
BPS
CD+DVD盤:3,000円(税別)
遊園地をモチーフに、入場ゲートをくぐる雑踏の音から始まる作品。表題曲となる「Friend Tree Wonderland」をはじめ、織姫の視点で切ない思いを歌った和テイストの「天ノ川レコード」や、ダークさのあるラウドロック「Liar Circus」、どこかファンタジックでキラキラとしながら疾走感もある前向きソング「お菓子の森と可笑しな君」など全8曲を収録。
小野友樹公式サイト
https://web.onoyuki.com/
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