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Point

ペンシルベニア大学が乾くとくっつき、水に濡れると簡単に剥がせる接着剤を開発

■これはカタツムリが分泌する「エピフラム」という粘着液の性質からインスパイアされたとのこと

■実証テストでは切手2枚ほどの面積の接着剤で、重さ87kgまで耐えられることが証明された

カタツムリインスパイアされた強力な接着剤が開発された。

開発を行なった米ペンシルベニア大学の研究チームによると、カタツムリが分泌する粘着液のメカニズムをヒントにしており、乾くとくっつき溶けると簡単に剥がれる機能を持つという。

実証テストでは、なんと成人男性も軽く吊り下げることができ、郵便切手2枚ほどの面積の粘着剤でも87kgまで支えられることが証明されている。

研究の詳細は、6月17日付けで「PNAS」上に掲載されている。

Intrinsically reversible superglues via shape adaptation inspired by snail epiphragm
https://www.pnas.org/content/early/2019/06/11/1818534116

乾くと接着剤に!カタツムリの便利な粘液

強力な接着剤が持つ唯一の弱点は「簡単に剥がれない」ということだ。ボンドや糊などほぼ全ての接着剤は、一度乾くと元には戻らない。

そこで研究チームは、いつでも簡単に剥がせる強力接着剤を作るため、カタツムリが分泌する「エピフラム(epiphragm)」という粘着液に着目した。エピフラムとは、カタツムリが殻口を塞いで自分の軟体を乾燥から守るために分泌する液体のことだ。

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動いているときは粘性のある液体だが、乾くとセロファンや障子紙のような質感の膜に変わる。これが接着剤となっており、冬眠する際にくっついた壁などから落ちないようにする役割を持っているのだ。

一方で、雨などに濡れると膜はすぐに溶けて元の液体に戻る。研究主任のShu Yang氏は「エピフラムの便利な性質が人工接着剤にも応用できる」と考えたそうだ。

チョウの翅も傷なく剥がせる

研究チームはエピフラムの性質を再現するために「ヒドロゲル」という水分を多く含んだポリマーを使用した。ヒドロゲルのおよそ90%は水分であるため、湿潤な状態では粘着性がまったくない。

ところが一度乾燥すると、強力な接着効果を発揮する。

最初に液体状であることにより、接着面の微細なひび割れや凹凸にも浸透し、隙間なく接着することができるのだ。さらに乾燥した接着剤に少量の水を加えるだけで、簡単に剥がす工程もしっかり再現された。

実験で男性を吊り下げる様子/Credit:phys.org

実験ではヒドロゲルを使ってチョウの翅をくっつけた後、水を与えることで傷なく綺麗に剥がすことが出来ている。しかしヒドロゲルの固形化は、空気中で自然乾燥させるか熱を加えるかして行われる一方で、接着剤を剥がすには水を使う以外に方法はない。

やはり雨に濡れることで粘着性がなくなるのは大きな弱点でもあり、乾燥した地域でしか役立たない可能性もある。その点に関してYang氏は「熱や電気を加えることで軟化するような同様の物質を探しているところだ」と話している。

 

今後の進化を期待して、店頭にカタツムリセメダインが並ぶ日を心待ちにしておこう。

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reference: theguardianphys.org / written by くらのすけ

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