旧日本軍慰安婦問題を取り上げたドキュメンタリー映画「主戦場」について、修士論文に使うためと言われ取材を受けた内容が、商業映画に使われたのは不当などとして、ケント・ギルバート氏(米国弁護士タレント)ら5人が映画の上映差し止めと計1300万円の損害賠償を求める訴えを6月19日、東京地裁に起こした。

原告はほかにトニー・マラーノ氏、藤岡信勝氏、藤木俊一氏、山本優美子氏。これ以前に、抗議する共同声明に名を連ねていた加瀬英明氏と櫻井よしこ氏は原告にならなかった。

一方の被告は、同作の監督をつとめた日系アメリカ人のミキ・デザキ氏と配給会社。

「極右」などレッテル貼られた

訴状によると、原告は、原告へのインタビューを学術研究と卒業制作のために使う旨の合意があったのに、デザキ氏はそれに違反し、商業映画として映画を一般公開したと指摘。承諾なしで配給されており、原告が有する著作権肖像権を侵害しているなどと主張している。

そのうえで、映画の冒頭で、原告らは「歴史修正主義者」「極右」「性差別主義者」などのレッテルを貼られ、いわれなき誹謗中傷を受けたとし、「修復不可能なほどに名誉を毀損された。原告らは執筆・言論・教育活動などをしており、今後の活動への悪影響は計り知れない」とした。

櫻井よしこ氏は原告に加わらず

提訴後に東京・霞が関の司法記者クラブで開いた会見で、藤岡氏は、デザキ氏からインタビューを受ける前に、学術研究として大学に提出するもので、偏ったジャーナリズム的なものにはならないという趣旨の話を聞いていたと説明。

そして、「映像をとることについては、何も問題にしていない。それを一般大衆に公開するというのは全く別次元のこと。私たちが言いたいことを主張することは一切せず、糾弾するような映像構成になっている。最初から意図的に仕組んでいたと考えている」と述べた。

また、原告と立場が異なる人たちとディベートする構成になっておらず、原告の主張を一方的に論破し反論する機会を与えないような編集になっているとし、「一方的プロパガンダの映画になっている」(藤木氏)とした。

会見では、櫻井氏と加瀬氏が原告に加わっていない理由についても質問が出た。代理人の高池勝彦弁護士は「2人は、訴訟をあまりやりたくないということではないか。私の方から(原告にならないよう)お願いしたわけではない」と述べた。

今回、上映差し止めの仮処分は申し立てなかった。理由について、高池弁護士は「仮処分は手間がかかる。人的な問題で仮処分はやらない」。続けて、「なるべく早く審理を終わらせたい」と話した。

デザキ氏「公開する可能性は伝えた」

抗議を受けていたデザキ氏は6月3日、都内で会見し、「商業映画として公開する可能性は伝えた」「(抗議は)彼らがこの映画を気に入っていないからだ」と反論していた。

映画は4月20日に東京・渋谷の映画館で公開が始まった。反響があり、上映する映画館が各地に増えている。

慰安婦テーマ「主戦場」上映中止求め、ケント・ギルバート氏ら提訴「名誉を毀損された」