2019年6月13日バンダイナムコエンターテインメントから発売されたNintendo Switchソフトドラえもん のび太の牧場物語」。4Gamerの読者は大人な方がほとんどなので,「アニメも毎週欠かさず観てる!」という現役のドラえもんファンはそう多くないかもしれない(実は,筆者もそうだ)。

 しかし,幼少期に漫画やアニメを見ていたという人は多いだろうし,「ドラえもん」は日本人に遺伝子レベルで刷り込まれているといっても過言ではない国民的な作品だ。彼が「牧場物語」に登場すると知ったときは,居ても立ってもいられないような,ワクワクした気持ちになった人も多いのではないだろうか。

 そんなわけで本稿では,親子で楽しみにしているというご家庭だけでなく,大人なゲーマー諸氏も気になっているであろう本作が,どんなゲームになっているのかをお伝えしていこう。



プレイヤーをグイグイ引き込んでいく,映画「ドラえもん」を思わせる導入部

 ゲームを始めると,のび太はどこか見知らぬ場所で,大樹の根を枕にしてまどろんでいる。のび太は,傍らにいたドラえもんに告げる。

――「ぼく,ここでずっとひるねできるなら,ここに住みたいよ」と。

 ドラえもんは少し困ったような顔をしてのび太をたしなめるが,のび太は気にした様子もなく,深い眠りに落ちていく――。


 ハッと気がつくとのび太は自分の部屋にいた。「夏休みの自由研究」のテーマを考えているうちに居眠りしてしまい,不思議な夢を見たようだ。もちろん昼間からウトウトしているのび太に,ドラえもんやママはいい顔をしない。


 そんな2人を見返すべく,のび太は自由研究の題材を探すために外に出かける。とはいっても,アテがあるわけでもないので,その足はいつもの空き地へと向かう。そこで彼は,なにやら不思議な植物の「タネ」を見つけるのだった。

 このようにゲームの冒頭は,まるで映画「ドラえもん」のような始まり方だ。映像を見ているうちに,子どものころ劇場やテレビの前で味わった,あの懐かしい気持ちが蘇るし,同時にいつものドラえもん」とはひと味違うであろう,新たな物語への期待も高まってくる。




 本作の冒頭部分は,発売前に配信された体験版や,第2弾PV(外部リンク)でも紹介されているが,それらはあくまで編集されたもの。できればゲーム本編をプレイして,実際のものを観てほしい……と素直に思ってしまうデキだ。


■あっさり職を見つけるみんなに対して,仕事が決まらないのび太

 冒頭だけでも「ドラえもん」らしさを十二分に味わった筆者だが,ゲーム中に登場するのび太ドラえもんの言動がいかにもといった感じで,プレイしていて思わず笑みがこぼれてしまう。

 本作の舞台となるシーゼンタウンでは,子どもたちが大人の仕事を手伝うことは当たり前。そこで,のび太たちも仕事を探すことになるのだが,しずかジャイアンスネ夫は,それぞれの取り柄を活かして収まるべきところに収まっていく。ドラえもんも町長の助手のような役回りになるのだが,のび太だけはどうしても仕事が見つからないのだ。


 こうしたいかにもな「災難」に見舞われ,初めはなんとかしようともがくものの,最後には開き直ってしまう彼の様子が,まあそれらしいのである。


 もちろん,このゲームは「ドラえもん のび太の牧場物語」。のび太が雑貨屋やレストランのお手伝いを始めてしまったら話が始まらない。結局,のび太はこの町で知り合った少年・ランチから土地や小屋を借りて,牧場を始めることになる。


 ここから「牧場物語」としての基本的な遊び方を説明するチュートリアルが始まるのだが,その案内役を務めるドラえもんがこれまた彼らしい。のび太プレイヤー)にただただ親切に接するのではなく,少しだけ突き放し,成長を促してくるあの感じだ。


 ゲームチュートリアルとしても,こうしたやり方はあまり類を見ない。些細な事かもしれないが,制作陣の「ドラえもん」に対する愛,そしてゲームの作り手としての「勇気」を感じたポイントである。

 ちなみに,本作のデベロッパはブラウニーズ。「聖剣伝説シリーズや「ファンタジーライフ」などに携わってきた亀岡慎一氏,津田幸治氏らが在籍する制作会社である。本作の「大樹」にまつわるストーリーや,水彩画風のビジュアルは,彼らがこれまで取り組んできた作品をどことなく思い起こさせる。





ゆっくりした生活サイクルを繰り返すこと。それが牧場ライフの真髄

 荒れ地を開墾し,土地を耕してタネをまき,水や肥料をまいて作物を成長させ,出荷してお金を稼ぐ──。こうした「牧場物語」の基本的な遊びのサイクルは,本作でも変わらない。



 仕事の手順を覚えたあとのゲームの進め方はプレイヤーに委ねられる。作物を売った利益で育てる作物の量を増やしてもいいし,さらに高く売れそうな作物を育てていくのも自由だ。
 また,牧場の仕事はそこそこに,魚釣りや虫取り,果物や山菜の採集,資材の採掘などに力を入れてみてもいい。


 そんなあれやこれやで稼いだお金や素材で,新たな道具や施設を作り,作物作りの効率をアップさせ,さらなる利益を上げながら牧場の規模を拡大していく。そこが本作の最も楽しい部分なのだが,そのペースはじつに「まったり」としている。



 牧場の施設を充実させるためには,かなりのお金と資材が必要になるが,作物の売上げ金を考えなしに使ってしまうと,次に植えるタネを買うお金がなくなってしまう。焦らず気長に,少しずつ取り組む必要があるのだ。

 この「まったりしたペース」こそが本作の,ひいては「牧場物語シリーズの真髄でもある。窓辺に置いた鉢植えの成長を,毎日見守りながら,大切に育てるような感覚。そんな「牧場物語シリーズプレイ感は,本作にもしっかりと息づいている。
 そしてそれは,まだ自分がのび太ぐらいの歳だったころの,ゆっくりと時間が流れていく日々をプレイヤーに思い出させてくれるはずだ。

 もちろんゲームを進めていけばドラえもんの“ひみつ道具”が登場し,仕事を効率化してくれる。移動がとても楽になる「どこでもドア」,毎朝作物に水やりをしてくれる「ミニ雨雲」,疲れを知らずに働けるようになる「ケロンパス」などなど,どれものび太の牧場ライフを助けてくれるはずだ。


 また,今回のプレイで筆者にとって一番印象深かったのは,シーゼンタウンお祭りの日のある出来事だ。
 その日はじゃがいもの収穫と,新たにタネまきをするタイミングだったため,筆者は朝から作業に追われていた。その後,作物のタネを買うために店の前で開店時間を待っていたものの,いっこうにお店が開く気配がない。
 それもそのはず。住人たちはお店の人も含めて全員,祭りの会場に集まっていたのだ。


 基本的に自宅で仕事をしている筆者は,仕事が立て込んでくると,世間が祝日であることに気付かず一日を過ごしてしまうことがある。まさかゲームの世界でも,同じ轍を踏んでしまうとは……。
 本作は,プレイヤーが気の赴くままに行動できるがゆえに,間接的にプレイヤーの「本当の姿」を映し出す,鏡のような作品なのかもしれない。


 「ドラえもん のび太の牧場物語」は幅広い年齢の人が楽しめる作品だが,筆者はあえて,かつて「ドラえもん」が大好きだった大人にこそ本作をオススメしたい。ドラえもんのび太たちと一緒に過ごすことで蘇る懐かしい記憶と感覚,そしてゆるやかに流れていく遊びのサイクル。それらは,今の自分をあらためて見つめ直す,静かな思索の時間を与えてくれるだろう。

リンク「ドラえもん のび太の牧場物語」公式サイト


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関連タイトル
Nintendo Switch ドラえもん のび太の牧場物語

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