外国人労働者の本格的な受け入れに舵を切った我が国だが、外国人の身分証である「在留カード」の偽造品が蔓延しているという。ユーザーには中国人東南アジア出身者が多いというが実態はどうなっているのか。接触を試みた!

SNSの在日中国人グループで堂々と宣伝・販売されていた

 外国人労働者の受け入れ拡大を目指す改正入管法が施行された。新たに創設された「特定技能」という在留資格で、政府は5年間で最大34万人を受け入れる計画だ。

 こうしたなか、在日外国人の不法就労が急増している。法務省によると、昨年上半期に確認された不法就労者は4889人。’14年以降で過去最悪ペースを記録しているのだ。これに伴い、不法就労者が利用する偽造在留カードに関する摘発も増えている。

 警察庁によると、カードを所持・販売した外国人の摘発件数は過去最多となった’17年の390件を上回るペースで推移しているという。

 1月に東京入国管理局が摘発した事例では、国内の偽造拠点で数千枚にも及ぶ台紙を押収している。現場に居合わせた中国籍の男が逮捕されたが、背後にいる組織の実態解明は進んでいない。

 今回、取材班はこうした組織にアプローチを試みた。調べていくと、中国版LINEの「微信」にある、在日中国人らが集うチャットグループのなかで「アルバイト斡旋グループ」が目に留まった。

「在留カード。低価格、最高品質」

「どうすれば購入できるの?」とメッセージを送ったら、間もなく「顔写真と名前をこちらに送って。価格は1枚8000円。決済はWeChatペイの送金か銀行振り込みで。決済後、1週間以内に納品できる」との回答が来た。

 続いて、「学生証もいけるのか?」と聞くと、「たいていのIDはいける」と返信があった。さらにそれ以外にも、高所作業車の運転技能講習修了証や運転免許証も偽造可能で人気だという。偽造免許証でハンドルを握ったり、偽資格証で工事をする外国人が一定数いるということになる。

=======
<業者が偽造可能なID>

運転免許
・高所作業車資格証
・各種の組合員証
・卒業証書
・在留カード
・学生証
・国民健康保険証
マイナンバーカード
=======

 しかし、その後もいくつか質問してみたが、しばらくして怪しまれたのか返信は途絶えてしまった。

◆偽装カード密売業者との接触に成功

 今度は「在留カード 販売代理募集」と書かれた別の投稿を発見。応募を装い、投稿者としばらくやり取りを繰り返した後、接触することに成功した。

 指定された池袋駅北口のとある喫茶店に現れたのは、ソバージュヘアをムースバリバリに固めた中国人の中年女性だった。席に着くと、彼女は業務内容をさっそく話し始めた。

「微信や微博(中国版ツイッター)、LINEなどで販売代理を担当してもらう。ターゲットは在留資格が切れたり、観光ビザで入国している人間、そして失踪した研修生。ヤツらが日本で就労する際、雇用側から在留カードの提示を必ず求められるからね。警察官に対しても、路上での職質ならまずバレないよ。

 不法就労と知ってて外国人を雇っている違法エステやスナックの経営者が、スタッフのために用意することもある。在留カードは1枚1万2000円。うち40%を販売手数料として支払う。成績が良ければボーナス制度もあるよ」

 ちなみにこのとき、取材班は日本語学校に通う中国人留学生を装っていた。すると彼女は、知人を紹介するよう迫ってきた。

中国語以外の言語ができるクラスメイトを紹介してくれないか。今は100人近くの販売代理人がいるけど、まだまだ増やしたい。特にベトナム人、フィリピン人の顧客が増えている」

 偽造が露見すれば、購入者はもちろん、販売に携わった者も逮捕される。強制送還だってあり得るだろう。しかし、彼女は「番号は実在する番号なので、入管のサイトで照合されてもバレない」と言い、「ホログラムを含め、印刷精度やカードの触感は本物と同じ。警察官も見分けがつかない」と、揚々と繰り返すばかりだった。

◆入管のサイトカードの有効性を確認できるか

 対照的に、自身が属する組織について、彼女は口をつぐんだ。ただ、「以前は日本国内でも偽造拠点があったけど、今は警察が厳しくなったから拠点を中国に移す組織が増えている」と言うのみだった。

 偽造在留カードについて、中国マフィアの取材を長年続けてきたジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聡氏はこう話す。

「当時の外国人登録証(現・在留カード)の偽造は’00年初頭がピークで、福建マフィアマレーシア華僑の偽造グループが一大勢力だった。’12年にIC化された在留カードになって、真贋の判別が容易になり下火になった。それが最近また復活してきている背景には、SNSの普及があります。

 かつては在日中国人コミュニティ内で口コミによって密かに広がっていましたが、今はSNS上で宣伝から決済までワンストップでできる。結果、買い手もアジア系を中心に多国籍になっていて、中国人の割合は減っている。偽造グループとしてはベトナム系なども台頭してきているが、依然として福建系が勢力を保っています」

法務省入国管理局の対応は?

 こうした事態に、政府は手をこまねくしかないのだろうか。法務省入国管理局に尋ねた。

「偽造在留カード対策としては、雇用者の皆さまに確認の徹底をお願いしている。弊局サイトには、カード番号を入力すると、それが失効していないかどうかを確認できるページもあります」(広報室)

 しかし、販売代理募集の中国人女性が話すように、実在する番号がカードに記載されていた場合は、「番号が実在し、失効していなければ、残念ながら偽造かどうか見抜くことはできない」とのことだが、その上で「ICチップの仕様は公開しており、情報を確認できるシステムも市販されているので活用してほしい」(同)と述べた。

 従業員約40人を抱え、外国人を雇用する都内の建築会社の経営者はこう話す。

「もし従業員から提出された在留カードが偽造だったとしても、知ったこっちゃない。ただでさえ人手不足でヒイヒイ言ってるんだから、粗探しなんてしないよ。ICチップを読み取るシステムも数万円するっていうし、ウチらみたいな零細は導入できないよ」

 ちなみに、不法就労者を雇用した場合、雇用側は入管法により「不法就労助長罪」に問われるとされているが、入国管理局によれば、ICチップ内の情報確認は義務ではないという。

 外国人労働者の受け入れ拡大前に、在留カードの信頼性を担保する必要があるのではないだろうか。

<取材・文・撮影/週刊SPA!編集部>

― [偽造在留カード]密売業者を追え! ―

’19年1月、法務省東京入国管理局が密造拠点である埼玉県川口市の部屋から押収した偽造在留カードと台紙の白いカード(写真/時事通信社)