来年の本大会メンバーを巡るサバイバルが過熱 2つの国際大会を終えた現時点の序列は?

 森保一監督率いる日本代表は、現地時間17日にコパ・アメリカ南米選手権)グループリーグ第1戦のチリ戦に臨み、0-4と完敗を喫した。日本にとっては厳しい結果となったが、この試合では1997年生まれ以降の東京五輪世代の10人がA代表選手としてピッチに立ち、南米の強豪を相手に貴重な経験を積んだ。

 一方、6月上旬に行われたトゥーロン国際大会では、東京五輪世代の“第2グループ”という位置付けの編成となったU-22日本代表が、史上最高となる準優勝の快挙を成し遂げ、その下の世代にあたるU-20日本代表は5月下旬から挑んだU-20ワールドカップ(W杯)でベスト16に進出した。

 来年に迫る東京五輪に向け、各選手たちが積極的なアピールを続けているが、この2つの大会を終えた時点で東京五輪出場を狙う有力候補は、どのような顔ぶれとなっているのか。2大会での選手のアピール度を3段階で評価(◎→○→△)したうえで、ポジションごとの選手たちの勢力図を探っていきたい(「U-20W杯組」は活躍した選手、五輪世代に招集歴のある選手に限定)。

【GK】
コパ・アメリカ
− 小島亨介(大分)
− 大迫敬介(広島)
■トゥーロン組
○ オビ・パウエルオビンナ(流通経済大)
△ 山口瑠伊(エストレマドゥーラ)
△ 波多野豪(FC東京
U-20W杯組
○ 若原智哉(京都)

 コパ・アメリカに出場する2人が中心となっているGK陣だが、互いに絶対的な存在かと言われればそうではない。トゥーロン国際大会ではオビ・パウエルオビンナが最多の3試合に出場。多少不安定さを見せる場面はあったが、決勝戦ではキャプテンを務めるなどチームからの信頼も厚く、アピールに成功したと言っていい。

 またU-20W杯で出色の出来を見せたのが若原だ。エクアドル戦のPKストップだけでなく、メキシコ戦やイタリア戦でも好セーブを連発。彼がいなければグループリーグ突破はなかったはずだ。怪我で欠場した谷晃生(G大阪)を含めて、GK争いはまだまだ熾烈を極めるだろう。

CBは冨安&板倉に続く3番手が混戦 WBは杉岡が絶対的な存在だが…

【センターバック】
コパ・アメリカ
− 冨安健洋シント=トロイデン
− 板倉 滉(フローニンゲン
− 立田悠悟(清水)
— 原 輝綺(鳥栖)
■トゥーロン組
○ 岡崎 慎(FC東京
△ 大南拓磨(磐田)
△ 田中駿汰(大阪体育大)
△ 椎橋慧也(仙台)
— 古賀太陽(柏)※負傷離脱
U-20W杯組
○ 小林友希(神戸)
○ 瀬古歩夢(C大阪

 CB陣は冨安と板倉が中心になることが予想されるが、その後はまだまだ混戦模様。立田と複数ポジションをこなせる原、怪我の橋岡大樹(浦和)が序列的には上と見る。ただ、トゥーロン国際大会で5試合すべてに出場した岡崎がアピールに成功。特に決勝戦ではブラジルを相手に、最後まで粘り強い守備を続けたことはプラスに捉えていいはずだ。

 またU-20W杯組では、小林と瀬古が世界の強豪に対して素晴らしい守備を披露。今後Jリーグで出場機会を増やしていくことができれば、五輪世代に食い込んでいける可能性もあるだろう。

サイドバック/ウイングバック】
コパ・アメリカ
— 杉岡大暉(湘南)
— 岩田智輝(大分)
— 菅 大輝(札幌)
■トゥーロン組
○ 長沼洋一(愛媛)
○ 相馬勇紀(名古屋
△ 舩木 翔(C大阪
△ 川井 歩(山口)
U-20W杯組
◎ 菅原由勢名古屋→AZ)

 3バックが予想される東京五輪世代において攻守の肝となるウイングバックだが、杉岡以外に絶対的な存在がいない。コパ・アメリカ組の岩田、菅はJリーグでこそ結果を残しているが、この代表ではまだ自分たちの力を証明できておらず。今回のコパ・アメリカで、どれだけのパフォーマンスを見せることができるかが注目される。

 一方、トゥーロン国際大会では代表常連の長沼と、新戦力として呼ばれた相馬がアピールに成功。前者はイングランド戦でゴールを奪うなど結果を残し、後者は自身の特長であるドリブル突破から何度もチャンスを演出してみせた。特に相馬は名古屋と違うポジションに挑戦するという形だったが、及第点以上のパフォーマンスを見せたと言っていいだろう。

 そしてもう一人、忘れてはいけないのがU-20W杯に出場した菅原だ。韓国戦のミスが目立ってしまってはいるが、それ以外の場面ではほぼパーフェクトな守備を披露。強気なメンタリティーを含めて、五輪世代に入っていけるポテンシャルは十分にあると見る。

最激戦区のシャドーコパ・アメリカ組を脅かすには至らず

ボランチ】
コパ・アメリカ
— 中山雄太(ズヴォレ)
― 松本泰志(広島)
― 渡辺皓太(東京V)
■トゥーロン組
〇 田中 碧(川崎)
○ 高 宇洋(G大阪
△ 松岡大起(鳥栖)
U-20W杯組
◎ 齊藤未月(湘南)
○ 藤本寛也(東京V)
△ 伊藤洋輝名古屋

 代表常連の中山と松本が一歩抜け出しているボランチのポジション争い。今回のコパ・アメリカアジア大会以来の招集を受けた渡辺が、どれだけやれるかは注目だが、トゥーロン国際大会U-20W杯を見た限りでは、下からの突き上げが著しい。トゥーロンでは田中碧と高の2人がアピールに成功。田中碧は、川崎で培った技術力や攻撃的視野を存分に生かしてチームの攻撃を構築。また高は豊富な運動量で相手の攻撃を抑え、時には前への持ち出しで局面を打開するなど、互いに特長を存分に発揮した。

 またU-20W杯では齊藤未月が躍動。東京五輪世代屈指のリーダーシップと統率力でチームを牽引し、中盤ではデュエルの強さを見せてボールを奪取した。彼ら以外にも見どころのあった選手もおり、今後さらにポジション争いが過熱してくるはずだ。

シャドー/2列目】
コパ・アメリカ
— 久保建英FC東京レアル・マドリード
— 三好康児(横浜FM
— 伊藤達哉(ハンブルガーSV)※トゥーロンにも参加
— 安部裕葵(鹿島)
■トゥーロン組
△ 岩崎悠人(札幌)
△ 神谷優太(愛媛)
△ 三笘 薫(筑波大)
U-20W杯組
○ 山田康太(横浜FM
△ 斉藤光毅(横浜FC
△ 郷家友太(神戸)
△ 中村敬斗G大阪

 最激戦区のシャドー(2列目)は、今回のコパ・アメリカに招集されなかった堂安律フローニンゲン)が最上位か。そこに三好や久保、伊藤らが続く。トゥーロン国際大会では岩崎や神谷、三笘らがこの位置で出場したが、大会を通して大きな成果を上げることはできず。大会途中でコパ・アメリカに合流した伊藤を含めて、もう一つ目に見える結果が欲しかったところだ。

 一方、U-20W杯組ではサイドハーフとして攻守に躍動した山田がアピール。東京五輪の代表に入る場合には、シャドーのポジションを担うことになるだろう。とはいえ、彼ら以外で違いをもたらすことができた選手がいなかったことを考えると、コパ・アメリカ組を脅かすには至っていないというのが現状ではないだろうか。

小川の復活、U-20W杯での田川&宮代のアピールで混戦模様に

【FW】
コパ・アメリカ
— 前田大然(松本)
― 上田綺世(法政大)
■トゥーロン組
◎ 小川航基(磐田)
◎ 旗手怜央(順天堂大)
△ 小松 蓮(金沢)
U-20W杯組
○ 田川亨介(FC東京
○ 宮代大聖(川崎)

 最前線の一つのポジションを巡る戦いを考えると、トゥーロン組とU-20W杯組が大きな結果を残した。世代のエースと呼ばれながら怪我もあって近年伸び悩んでいた小川が、トゥーロンで復活をアピールする2ゴールを記録。コパ・アメリカ組の前田と上田にはない特長を持つ選手だけに、小川の復活はポジション争いを一層刺激するはずだ。

 またトゥーロンでは、旗手も違いを生んだ一人。前線とシャドーを巧みにこなすフレキシブルさを持ち、複数ポジションをこなせる適応力は東京五輪の登録枠「18」を考えると価値は大きいと言える。U-20W杯組では田川、宮代の2トップが結果を残して自身の力を証明しており、コパ・アメリカの結果次第では、前線の人選は再考を求められる可能性もあるだろう。(林 遼平 / Ryohei Hayashi

東京五輪出場を狙う有力候補はどのような顔ぶれとなっているのか【写真:Getty Images】