UAEプレーする塩谷は後輩・中島のカタール移籍を「自分次第で成長できる」と分析

 日本代表MF中島翔哉は、今や森保ジャパンにおいて欠かせない存在だ。今年2月、ポルトガル1部ポルティモネンセからカタール1部アル・ドゥハイルへの移籍は日本国内で注目を集めたが、同じ中東のUAEプレーする日本代表DF塩谷司(アル・アイン)は「どこに行っても自分次第で成長できる」と中島の決断を称えた。

 中島は2017年8月、FC東京からポルティモネンセへ移籍。海外挑戦1年目からリーグ戦29試合に出場して10得点12アシストと大活躍を見せ、ロシアワールドカップ前の2018年3月には日本代表デビューも果たした。2年目の今季には、「18クラブから獲得の打診があった」と報じられ、そのなかにはドイツの強豪ドルトムントフランス王者パリ・サンジェルマンの名前もあったとされる。それだけに欧州ではなく、日本のサッカーファンにとって馴染みの少ない中東のカタール移籍は注目を集め、移籍後最初の代表活動となった3月シリーズでは“意外”とも言える決断に多くの質問が投げかけられた。

 では、同じ中東でプレーする選手にとって、中島の選択はどのように映っているのか。2017年6月からUAE1部の強豪アル・アインで主力として活躍する塩谷は、「良い決断をしたんじゃないかなと思います」と自身の見解を語る。

「『中東=お金』というイメージで括られがちですよね。待遇面がいいのは事実。でも、どうしてそれをそこまで言いたがるのかは正直すごく不思議です。自分が成長できる環境に身を置きたい、とサッカー選手みんなが思っている。それは至極当然なこと。中東でも、アフリカでも、南米やヨーロッパでも、アジアでも、自分がサッカーをしたいと思ったところでプレーすればいいと思います」

 実際、中島はカタールサッカーが楽しいと思ったこと、家族と幸せに暮らせる環境を決断の理由に挙げていた。日本のサッカー界では「ステップアップ=欧州移籍」というイメージが少なからず根付いているが、塩谷は中東に対する固定概念を否定する。

「もちろん、ヨーロッパのほうが中東よりもレベルが高いのは間違いないです。でも、だからと言ってヨーロッパに行かないと成長できないという考えには賛同できません。どこに行っても自分次第で成長できますから」

「ACLで試合した時、こんなに守備ができるようになったんだと。翔哉は成長している」

 中東のクラブに身を置き、昨年末のFIFAクラブワールドカップ決勝ではスペインの名門レアル・マドリード相手に鮮烈なゴールを決めて「Tsukasa Shiotani」の名前を世界に轟かせた塩谷。自らの足跡でもUAE行きの決断が正しかったことを証明しているが、リオデジャネイロ五輪代表のチームメート(塩谷はオーバーエイジで参加)である中島の成長を、今年4月に実現したAFCチャンピオンズリーグでの直接対決で感じたという。

「翔哉だったら、ポルトガルで活躍して、もっと良いヨーロッパのクラブにも行けたのではないかと思います。それでもカタールを選んだということは、翔哉がカタールに行ったら成長できる、サッカーが楽しいと感じたからかなと。リオ五輪で一緒にやって、点も取れるし、アシストもできて、オフェンス面がズバ抜けたすごくいい選手だと思いました。ポルトガル時代のプレーはあまり見れていませんが、ACLでアル・ドゥハイルと試合をした時、こんなに守備ができるようになったんだとビックリしました。翔哉はすごく成長していますよ」

 プロは勝負の世界。そこには勝ち負けがあり、結果を切り離すことはできない。それでも、塩谷は中島同様、「サッカーはやっていても、見ていても、楽しければいい」と話す。

「楽しくないところで自分を殺して、サッカーをするほどサッカー選手としてつまらないことはないですよ。僕は絶対にそうはなりたくない。自分を含めて、サッカーに関わる人の幸福度が高いのが理想なんじゃないですかね」

 “助っ人”として過酷なサバイバルを戦っている塩谷は、中東サッカーに対する目に対して一石を投じていた。(Football ZONE web編集部・小田智史 / Tomofumi Oda

UAEでプレーするDF塩谷司(アル・アイン)とMF中島翔哉(アル・ドゥハイル)【写真:Getty Images】