マガジンハウスのカルチャー誌「ブルータス」2019年7月1日号6月15日発売)は、「名古屋の正解」と題して、食や遊びのスポットなどさまざまな切り口から名古屋を案内している。

これは、「福岡の正解」(2018年7月15日号)、「札幌の正解」(2018年11月15日号)に続く地方都市特集の第3弾(いずれも電子版あり。ただし「福岡の正解」の販売は7月1日までなので急ぐべし)。愛知在住の筆者としては、いずれ名古屋もきっととりあげられるのだろうが、どうせ大阪か京都か神戸か、あるいは仙台か広島か金沢か、まあとにかくほかの街を何ヵ所かやったあとだろうと思い込んでいたので(どの街の特集も読みたい!)、こんなに早く正解が来るとは意表を突かれた。

既刊の福岡、札幌特集とくらべてみたら……
既刊の福岡、札幌の「正解」とくらべるのも面白い。たとえば各特集にはそれぞれの街の美女を紹介するページがあるが、福岡のそれが「カフェの正解──白昼、カフェに美女あらわる。」、札幌が「デートの正解──札幌美女と一緒に。」だったのに対し、名古屋は「名古屋“けった”美女図鑑。」と題して、街角で見かけた“けった”(自転車)に乗った女性たちをスナップで紹介している。《坂道が少なく道が広い名古屋自転車(けった)の街》ということでの企画らしいが、えっらい変化球だがね。

ついでにいえば、福岡、札幌いずれの特集にも、「福岡人」や「札幌人」について解説したページはなかったが、今回は「名古屋人の正解──名古屋という名の小宇宙」と題して、地元在住の作家で、名古屋を舞台にした作品も多い吉川トリコが寄稿している。せっかくの特集なのに、最後の最後で《まだ発見されていない町、だけどそろそろ発見されつつある町。今特集でどうか名古屋が見つかりませんようにと願うばかりである》とまとめられているあたり、名古屋人の自虐性、めんどくささがうかがえよう。ほかの地域にお住いの方々にも、ぜひ心してご一読いただきたい。

アートの街でもあった名古屋
筆者にとって今回の特集でとくに発見が多かったのは、「答えは壁に描かれているよ。」と題して、名古屋各所に存在するパブリックアートを紹介したページだ。言われてみれば、名古屋地下鉄の駅にはタイルを使ったモザイク壁画(たとえば鶴舞駅の鶴の壁画、名古屋市科学館の最寄駅である伏見駅の星座の壁画など)があちこちで見られるが、あまりにも当たり前の風景すぎて、いままでそのよさに気づかなかった。まるで日本の美をフェノロサから教えられた岡倉天心のような気分だ。パブリックアートといえば、名古屋駅にほど近い円頓寺商店街の西側出入口にある交差点の四つ角に、信長・秀吉・家康の三英傑とともになぜか水戸黄門の像が建っているのがかねてより謎だったのだが、今特集の街のトピック集にその理由が書かれていて、やっと氷解した。

アート関連では、今年の8月1日からは、3年に1度の現代アートの祭典「あいちトリエンナーレ」が名古屋をはじめ愛知県内の各所を会場に、開催される。参加アーティストのジェンダーバランスが初めて均等になったことでも話題の今回のトリエンナーレでは、サカナクションが通常公演とは趣向の異なる“空間インスタレーション”ともいうべきライブパフォーマンスを計画するなど、さまざまなプログラムが予定されている。トリエンナーレにお越しの全国のみなさんも、ぜひこの特集を片手に、アート以外にも名古屋を楽しんでいただけたら幸いである(って何様!?)。(近藤正高)

『ブルータス』2019年7月1日号名古屋の正解」目次
モーニングの正解 名古屋の風景は朝。
パブリックアートの正解 答えは壁に描かれているよ。
料理人の正解 注文の多い料理店
エリアの正解 ただいま、絶賛進化中! 新しい風を感じる街へ。
串カツの正解 どてで食らう!
いきものの正解 かわいい、だけではない。
キーパーソンの正解 クリエイティブに妥協なし。名古屋の無頼派。
時間つぶしの正解 実は名所の宝庫だった。“でら"楽しい昼間の過ごし方。
和菓子の正解 キーワードは“ギャップ"です。
アイドルの正解 名古屋のご当地アイドルはなぜ強いのか。
名古屋“けった”美女図鑑。
BOOK IN BOOK 名古屋(食)お助けアドレス100
名古屋めしの正解 名物より、好物。
ラジオの正解 ZIP-FMのコバタクって、誰?
カルチャーの正解 名物オーナーが街を面白くする!
夜の正解 喫茶から始まった、音のある風景。
噂の正解 街のトピック集、こってりめ。
お土産の正解 名古屋人も知らない、未開の味。
名古屋人の正解 名古屋という名の小宇宙。

昨年の「福岡の正解」「札幌の正解」に続く「ブルータス」の街特集の第3弾