先日、「第1 回ユナイテッドテイスト・オブ・アメリカ」なる大会が開催された。

国の名前を冠した大会ってなんだ? と思った人もいるかもしれないが、よく見てほしい。「ユナイテッド・“ステイツ”・オブ・アメリカ」ではなく、「ユナイテッドテイスト”オブ・アメリカ」。実はこれ、プロの料理人のための料理コンテストなのだ。

ネーミングダジャレっぽいが、アメリカ大使館農産物貿易事務所が主催する、いたって真面目な大会だ。日本を代表するアメリカ料理のシェフを決めると同時に、国際的な感覚を持つ世界に誇る料理人を育成することを目的としている。

もともと移民の多いアメリカでは他国の食文化を柔軟に取り入れながら、料理のスタイルを積極的に進化させてきた。最近はヘルシー志向も高まっており、一昔前のアメリカ料理のイメージとはだいぶ違う。こうした背景から、初回となる本年度のコンテストのテーマには「進化するアメリカ料理」が掲げられた。

一次審査には100を超えるチームから応募があり、3月1日には書類審査と準決勝を勝ち進んだ5軒のレストランによる決勝戦がおこなわれた。

ちなみにこのコンテスト、ルールもちょっとおもしろい。決勝戦ではアメリカンビーフポーク、アメリカ産のチーズやドライフルーツなど、アメリカから日本に輸入されている18品目の指定食材を活用しながら、「進化するアメリカ料理」を表現するのが決まり。

しかも、指定食材が参加者に伝えられるのは前日。それから各チーム、オリジナリティあるレシピを考案し、前菜・スープ・メイン・デザートからなるコース料理を作らなければならないのだから、かなりのスキルが必要とされる。

審査は指定食材の利用数に加え、メニューの創造性・オリジナリティ、料理スキル、衛生管理、プレートプレゼンテーション、味などを総合的に評価し、100点満点で採点。審査員によれば、
「どのチームの料理もクリエイティブでユニーク。審査結果は数点差だった」
とのこと。

そんな接戦を制し、見事優勝を勝ちとったのは東京・広尾のレストラン「ケンゾー エステイト ワイナリー(KENZO ESTATE WINERY)」(米澤文雄さん、倉本磨里子さん)。あえて勝因をあげるなら? という問いに対して
「アメリカを意識したことかなと思う」
と答えてくれた米澤さん。実は米澤さんはアメリカ・ニューヨークの三ツ星レストラン「ジャンジョルジュ」で日本人初のスーシェフとして働いていた経験があり、アメリカ料理への造詣がことさら深い。

たとえば今回、決勝戦メニューとして作った前菜も、ベースになっているのはアメリカの定番メニューであるコブサラダ。だが、盛りつけに工夫したり、紫蘇とわさびで味のアクセントを加えることで、新たなスタイルの料理へと昇華させている。このように元々あるものを進化させるのは、まさに今回のテーマである「進化するアメリカ料理」といえるだろう。

また、料理にバターやクリームを一切使っていないことも審査員から評価された。
アメリカ料理は自由だけれど、だからこそ、どこかに自分なりのルールを設けたかった」
と米澤さん。もちろん、それでいて味が淡泊になることもなく、見た目も華やか。デザートの「アメリカ産ドライフルーツどら焼き 胡桃のペーストと自家製リコッタチーズとレモンのコンディメント」などは和の要素の取り入れ方が絶妙だ。

優勝したケンゾー エステイト ワイナリーのシェフ2名は、6月に台北でおこなわれる北アジア大会に参戦予定。同大会では、台北、香港、上海、東京の代表シェフが腕を競い、優勝者はアメリカ・カリフォルニアの料理大学(CIA)での研修の権利を獲得する。

アメリカ食材の多様性や可能性も大いに見せてくれたユナイテッドテイスト・オブ・アメリカ。北アジア大会での日本人チームの活躍にも期待したい。
(古屋江美子)

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アメリカ大使館農産物貿易事務所

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