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 実は私もアトピー性皮膚炎で、そこまでひどくはないのだが、手とお尻、脚の一部が頻繁に痒くなり、掻きすぎて角質化してしまったりしている。

 かゆみというのは強敵で、「絶対掻かない!」と決めても心折れて掻きむしって大後悔。同じ症状を抱えている人ならきっとわかってくれるだろう。

 だがついに、この病気の根本的な原因がついにはっきりと解明されたようだ。その治療法の開発にもつながると期待される快挙だ。 

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フィラグリンと皮膚炎との関係

 アトピー性皮膚炎は、子供の20パーセント、大人の3パーセントに見られるごく一般的な皮膚の症状だ。

 かゆみのある湿疹が、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患のことで、皮膚の“バリア機能”(外界のさまざまな刺激、乾燥などから体の内部を保護する機能)が低下していることがこれまでの研究からわかっている。

 それだけたくさんの人が不快な思いをしているのに、症状を緩和するクリームやローションなどがあるだけで、完全に治す方法は今のところない。

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 ここ10年で、アトピー性皮膚炎は皮膚に「フィラグリン」というタンパク質が足りていないことと関連しているということまでは明らかになっていた。

 このタンパク質は個々の皮膚細胞の形成を助けたり、皮膚がバリアとしての機能を発揮したりする上で重要な役割を果たしている。

 ところが、これを作り出す遺伝子に変異があり、きちんとフィラグリンが供給されなくなってしまうと、アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬(皮膚細胞が剥がれ落ちず、蓄積して、鱗のような見た目になる)のような皮膚症状が生じる。

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フィラグリン不足がアトピーの原因であることを突き止める


 ここまではわかっていたのだが、本当にフィラグリンの欠如がアトピー性皮膚炎の犯人であると断定するにはいたっていなかった。

 そこで英ニューカッスル大学の研究者は、この不快な症状につながるタンパク質と分子の経路を追跡してみることにした。

 研究では、三次元培養表皮(living skin equivalent/LSE)という全層皮膚の特殊な培地を利用し、その一番上の層でフィラグリンが不足するように調整してからの経過が観察された。

 すると、皮膚の重要な調整機構に関与するいくつもの分子に変化が生じた。これが細胞の構造や関門機能といったものに影響を与え、さらに細胞に炎症が起きたり、ストレスに反応したりするようになることが確認されたのだ。

 研究チームは、この結果を検証するために、人から本物の皮膚を採取して、そのタンパク質を解析。アトピー性皮膚炎の患者と健康な人とを比較した。

 その結果、皮膚炎の患者のタンパク質のいくつかは、実験で観察されたのとちょうど同じように変化していることが判明。

 確かにフィラグリンの不足だけでアトピー性皮膚炎が生じるとはっきり断定されたのだ。

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今後の治療法の開発に期待


 アトピー性皮膚炎などの症状をさらに詳しく理解するには、まだいくつかのパズルのピースが存在する。

 それでもフィラグリン遺伝子の欠陥という根本的な原因さえわかってしまえば、この不快な症状を完治させる治療薬の開発にも目処が立つことだろう。

 この研究は『Journal of Allergy and Clinical Immunology』(2017年11月付)に掲載された。

References:Scientists Think They Finally Know What Happens in The Skin When You Have Eczema/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52275768.html
 

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