日本代表3連覇へ──。本日10時、WBC準決勝・日本×プエルトリコ戦がプレイボール
といっても、今日は月曜日。仕事・学校でテレビ中継を見られない方もたくさんいることでしょう。そこで、ラジオですよ。PCやスマートフォンでradiko.jp(ラジコ)を立ち上げてイヤホンで聴けばOK。ブラウザを隠しておけば仕事中でもバレませんって。
準決勝・決勝戦をラジオで独占中継しているのがAM1242ニッポン放送。まさに今、アメリカから実況生中継しています。そこで、決勝ラウンドの実況を担当するニッポン放送・松本秀夫アナに渡米直前にインタビュー。試合の聴きどころ・見どころを聞きました。


《シャワーは後から……前田健太人格者
── 松本アナといえば、スポーツ中継やパーソナリティはもちろん、最近では、野球漫画『グラゼニ』の準レギュラーとしても活躍されていますね。
松本 いやもう、『グラゼニ』で僕のことを知った、と言っていただけることが最近すごく多いんですよ。ありがたいです。選手の間でも『グラゼニ』って結構読まれているので、「出てるねー」と言われることも多いですね。ただ、二言目には「ちょっとカッコよく描かれすぎなんじゃない?」「髪の毛、こんなに多くないでしょ」って言われるんですけど(笑)。

── 選手や解説者とも交流が深い松本アナならではの、代表選手の裏話などはありますか?
松本 いやぁ、ココだけ、というのはなかなか……そうだなぁ、準決勝の先発を務める前田健太投手、マエケンですね。彼は、非常に人格者ということで、裏方さんからの評判がいいですね。去年のオールスターゲームの際、広島からはマエケンの他に若手選手としては野村投手、堂林選手が選ばれたんですが、3人ともセ・リーグの中では最年少組なんですね。で、試合が終わった後、選手はみんなシャワーを浴びるんですが、その際、年功序列と言ったら変なんですけども「順番」が決まっているんですよ。

── 年齢的に、広島3人組は最後にシャワーを浴びないといけないんですね。
松本 でも、マエケンくらい実績があれば、若くたって堂々と「お先です」と早めにシャワーを浴びてもいいんです。誰も文句は言いませんよ。ところが彼は、野村・堂林と一緒に最後まで待ってからシャワーを浴びたと。裏方さんがみんな、彼のことを評価してましたね。ただグラウンドで成績を残すだけじゃなく、人間ができているというか。だからみんなから好かれるし、勝たせたい投手、としてチームのポジションができるんですよね。

── 一時は肩の不調で代表選出も危ぶまれていましたが、見事に復活しました。
松本 責任感も強いから、宮崎合宿のときは本当にツラかったと思いますよ。アメリカや他国のほとんどのチームは、代表28名を選ぶときに、ここが痛いとかあそこが痒いとか言って辞退する選手が続出して、その穴埋めをするのが大変なんです。その中において日本は、痛くてもなんでも辞退者は出ず、むしろ33名の候補選手の中からどうやって28名に絞り込むか、という部分で悩んだ。選手の方も、シーズンとWBCを天秤にかけて、もしシーズンで活躍できなかったら大バッシングを受けることも理解した上で、必死に調整して結果を出してくれているというのが、本当に尊敬しますね。その最たる例が、前田健太投手ですよ。


《何が起こるかわからない! ライトフェンスに要注意》
── 日本ラウンドで、一番印象的だったシーンはどこになりますか?
松本 やっぱり、台湾戦9回ツーアウトからの鳥谷選手の盗塁ですよね。いやホント、息が止まるというか、「エッッ!?」という瞬間でした。私も見ていて思わず声が出ちゃいましたね。

── あれはビックリしました。予想していた人もほぼいなかったんじゃないでしょうか。
松本 だからこそ、現場にいる実況アナウンサーが見逃さないようにしないといけませんよね。その意味では、準決勝・決勝戦が行われる、サンフランシスコAT&Tパークっていうのは、外野に飛ぶと何が起きるかわからないんですよ。ライトのフェンスは金屏風を曲げたみたいに手前に出っ張ったり引っ込んだりしていて、フェンスの材質も、トタンのところもあればラバーやコンクリートのところと、6種類あるんです。

── そうなんですか? 形状は知っていましたが、材質までは知りませんでした。確か、イチロー選手がオールスターランニングホームランを決めた球場ですよね。
松本 そうです。私はあの試合も現地で実況したんですが、イチロー選手のランニングホームランも、打球がとんでもない方向に跳ね返ったから生まれた記録でした。難しいのはクッションボールの処理だけじゃなく、海が近いから風もあるので、外野に打球が飛んだ時っていうのは、実況する立場としても目が離せないですよね。

── 日本ラウンドを振り返ってみて、もっと活躍して欲しい、奮起を期待したい選手はいますか?
松本 これは悪口じゃなく、あくまでも見た目の印象なんですけども、巨人の選手たちですね。ジャイアンツユニフォームを着ている時はすごく強そうに見えるんだけど、みんなと同じユニフォームを着ていると、なんかこう埋没してしまうというか……長野選手はまだ本調子じゃないし、坂本選手も満塁ホームランは打ったけど打率はもっと上がってきて欲しいし、阿部・内海・山口選手もまだピリッとしない。だからこそ「巨人のユニフォームを着ていなくとも、俺たちはやるんだぞ!」っていうね、巨人の意地が見たいですよね。


《井端、そして山本監督の采配に注目!》
── 松本アナが日本のキーパーソンとして、特に注目している選手は誰になりますか?
松本 そうだなぁ……普通に考えれば、井端、ということになるんでしょうね。宮崎合宿のときに話を聞いたんですが、「これから先も毎年、WBCがあると思って練習した方がいいんじゃないかと思うくらい絶好調なんです」と言っていました。本当にコンディショニングがいいみたいですね。

── 東京ラウンドMVP。ここまでの打率が.571ですからね。
松本 あとはやっぱり、山本浩二監督の采配。采配っていえる采配も、ここまでは鳥谷選手の盗塁くらいじゃないですか。オランダ戦なんかはほとんどホームランで決まっちゃったし。でも、決勝ラウンド2試合のうち1回くらいは、「本当の意味での采配」を振るう場面があるハズなんです。

── 本当の意味で、というのは?
松本 送りバントやヒット・エンド・ランももちろん采配には違いないんですが、失敗したら確実に袋だたきにされることを覚悟した上で出すのが、本当の采配だと思うんです。だからこそ、「失敗したら俺が責任を取る!」「球界からつまはじきになってもいいんだ!」という決意を持って采配ができるかどうか、という部分ですよね。それこそ侍なんだから、切腹を覚悟するくらいの。

── 国を代表する重み、ですよね。
松本 鳥谷選手の盗塁なんかが特にそうで、もし失敗していたら大バッシングを受けたわけじゃないですか。それを覚悟しての采配だった……まあ、「あのボールで行け!」というサインだったか、「行ける場合は行け!」だったのかはわからないんですが、でも絶対に鳥谷選手個人の判断じゃないわけだから。決勝・準決勝は、それほど点差が開く展開になるとは思えないので、だからこそセオリーにはなくとも、覚悟を持った采配ができるかどうかが重要になってきますよね。

── ペナントレースではあり得ない采配も生まれる、と。
松本 ひとつ憶えているのが、北京五輪アジア予選の台湾戦で、日本が1点ビハインドの終盤、ノーアウト満塁の場面。当時の星野代表監督がロッテサブロー選手にスクイズをさせたんですよ。これも、セオリーではあり得ない采配なわけです。ダブルプレーになったら星野さん、とんでもないバッシングを浴びることになる。でも、スクイズが成功して同点になり、その勢いに乗って勝つことができた。負けたら終わり、という試合では必ずそんな場面が出てくるので、見逃さないようにしたいですね。

── 今回のWBC、そしてこの後すぐにプロ野球も開幕するわけですが、ラジオ実況で特に聴いて欲しい部分はどこになるでしょうか?
松本 今って、ネットで1分の遅れもなく情報を得られるわけじゃないですか。もちろん、ラジオの野球中継でもそこは押さえているわけですが、それプラス「五感」。そこにいる人間しかわからない、肌で感じるもの、選手の表情、風が冷たいのか温かいのか、選手から直接聞いたコメント……ネットでは決してわからないような空気とか熱気とか、現場にいるからこそわかる情報を、解説の方と僕らアナウンサーとで表現して、リスナーに想像していただきたいなぁと思いますね。

WBC決勝ラウンド AM1242ニッポン放送でラジオ独占中継】
3月18日(月)準決勝 日本×プエルトリコ 午前10時~
解説:野村弘樹ニッポン放送「ショウアップナイター」解説者)・アキ猪瀬(ベースボールコメンテーター
実況:松本秀夫(ニッポン放送アナウンサー)
3月20日(水・祝)決勝 午前9時~※日本代表が出場する場合のみ中継 
解説:江本孟紀ニッポン放送「ショウアップナイター」解説者)・アキ猪瀬(ベースボールコメンテーター
実況:松本秀夫(ニッポン放送アナウンサー)

オグマナオト)

ニッポン放送:松本秀夫アナウンサー/1961年7月22日生まれ。東京都出身。財布、上着、携帯電話、眼鏡、中継資料と、あらゆる物を失くしながら、野球実況、番組パーソナリティ、本の出版、釣りのコラム執筆、東京マラソン出走、深夜のスタジオでの独りギター演奏と人生を突っ走る。腰は低いが、仲間のためなら権威にもかみつく、男気の持ち主。今年は前のめりに、より熱い実況に燃える!