光のお父さん計画……それは、60歳を超えるゲーム好きの父にFFXIVをプレイしてもらい、自分は正体を隠してフレンド登録。共に冒険を続け、いつの日か自分が実の息子であることを打ち明けるという壮大な親孝行計画である。

 息子の名前はマイディー。根っからのオンラインゲーマーで、2009年にブログ一撃確殺SS日記を開設し、2014年8月に『光のお父さん』という連載をスタートさせた。

 『光のお父さん』は瞬く間に『FFXIV』プレイヤーの間で話題となり、2015年3月にゲームメディア・4Gamer.netに掲載された、『FFXIV』のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏とフリーライターのマフィア梶田氏との対談記事では、

「いまであれば、一撃確殺ブログの『光のお父さん計画』が面白いですよね。」

(吉田氏)

 

「『光のお父さん計画』のセンス溢れる構成は,正直ライターとして嫉妬しちゃうレベルですよね……」

(梶田氏)

というやり取りも掲載されている。

 そして2015年7月、ゲームメディア・インサイドにて、マイディー氏と光のお父さん(本人)のインタビューが掲載された。ある男がその記事を発見したことにより、『光のお父さん』は前代未聞の偉業を成し遂げることになる。

 男の名は渋谷恒一。VRゲーム『Last Labyrinth』などを手掛けるゲーム会社たゆたう(現あまた)のプロデューサーだ。

「一撃確殺SS日記」光のぴぃさん第5話「それは当然の試練であると思った。」より、光のぴぃさんこと渋谷氏

 渋谷氏はもともと映画業界の人間で、たまたま社内掲示板にて2人のインタビュー記事を発見した彼は、「私の夢は……『光のお父さん』の……ドラマ化です。どれだけ実現できるかわかりませんが、挑戦してみたいのです!!お願いしますっ!!」とマイディー氏のもとを訪れる。そしてファイナルファンタジーシリーズ初の実写ドラマ化──プレイヤーブログである『光のお父さん』のドラマ化計画が始動したのであった。

 その後『光のお父さん』は、2017年3月にドラマ版の原作という位置づけで書籍化され、その実話をもとにしたドラマが、2017年4月に放送開始。ドラマはテレビだけではなくNetflixでも配信された。

 さらに、2018年9月にゲームメディア・ファミ通.comが掲載したインタビューにて、吉田氏が運営の状況を説明する際に「日本は『光のお父さん』の影響がかなり大きかったですね」と発言しているように、ドラマ版放送以降は目に見えてプレイヤー数が増加しており、「『光のお父さん』を見て『FFXIV』を始めました」というエピソードを頻繁に聞くようになっていった。

 マイディー氏は10年もの間、オンラインゲームの素晴らしさを伝えるべく、毎日ブログを更新していたが、その活動がこの大きな功績に繋がったのだ。

 そして2019年6月21日『光のお父さん』の劇場版が全国の映画館で公開された。親孝行として始まったプレイヤーブログが、映画になったのだ。

 本稿は、そんな『劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』の公開を記念した、マイディー氏光のお父さん(本人)へのインタビュー企画である。

 自身の物語でもある光のお父さんは、これまでの『光のお父さん』と今回の劇場版をどのように受け取り、息子に何を思うのか。そして息子であるマイディー氏は、どのような想いを父に抱いているのか。

左からマイディー氏、光のお父さん

 今回のインタビューで、マイディー氏が行ってきた親孝行──「光のお父さん計画」の結末が明らかになった。

 なお、本稿には『劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』のネタバレが多少含まれている。ネタバレを気にされる方は、ネタバレをカットしたバージョンをこちらに掲載しているため、このまま読み進めず、リンク先に飛んで頂きたい。