パソコンメーカーのHPとデル・テクノロジーズ、ソフトウエアのほかタブレットPCも手がけるマイクロソフト、半導体のインテル。これらパソコン業界を代表する米国のテクノロージー大手4社が共同で、トランプ米政権の関税政策に反対する声明を出した

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サプライヤーの変更は困難、価格は上昇へ

 トランプ大統領が計画している対中追加関税の対象に、ノートパソコンタブレットPCを含まないよう訴えるもので、もしこれらが対象となった場合、米国経済全体に影響が及ぶとしている。

 共同声明で4社は、米国のノートパソコンタブレットPCのメーカーは中国のサプライヤーに大きく依存しており、短期間に他国のサプライヤーに切り替えることは現実的に不可能と説明。追加関税が発動された場合、米国における価格は最低でも19%上昇し、ノートパソコンの場合、店頭価格が平均で約120ドル(約1万3000円)上がるとしている。

「米国経済全体の生産性が減退する」

  米国で販売されているノートパソコンタブレットPCは、その9割が中国で生産されている。そして、HP、デル、マイクロソフトの米国におけるこれら製品のシェアは、合計で52%になるという。

 製品価格の上昇は、中小企業や家庭、学生、そして政府機関といったさまざまな購買層に影響を及ぼし、結果として需要が低下する。これにより、米国経済全体の生産性が減退すると、4社は主張している。

 また、技術革新という点で米国メーカーは不利な立場に置かれ、それに対し中華圏メーカーには「棚ぼた」の恩恵を与えてしまうとも説明している。その内容は次のようなものだ。

「米企業の技術革新を妨げる」

 例えば、HP、デル、アップルのノートパソコンの売上高は、それぞれ30%、32%、43%が米国市場によってもたらされている。この比率は、中国レノボ・グループ(聯想集団)、台湾エイサー(宏碁)、台湾エイスース(華碩電脳)では、それぞれ15%、20%、9%。

 中華圏のメーカーは、米国市場への依存が少なく、その分トランプ大統領が計画している新たな関税による影響も少ない。米メーカーは新たに発生する負担分を、研究開発費を削って補わなければならないが、中華圏メーカーは、これまでどおり技術開発に投資できる、としている。

 4社は昨年(2018年)合計で350億ドル(約3兆8000億円)を研究開発に投じた。これらの研究開発の多くは、米国の社員が米国内で行った。中国で生産される製品に制裁関税を課すことは、長期的に米企業の技術革新を妨げ、世界のテクノロジーリーダーとしての地位を脅かすと、彼らは主張している。

 なお、この声明は、米通商代表部(USTR)が6月17日に始めた「第4弾」制裁関税の公聴会に合わせて出されたものだ。公聴会は、同月25日までの土日を除く7日間開き、企業や業界団体から約300人が出席する。

 第4弾の原案は、米国への年間輸入金額が3000億ドル(約32兆円)相当の中国製品を対象にしている。消費者への影響の大きさから、これまで除外してきた3800品目だ。USTRは7月2日に、7日間の最終意見公募を締め切り、その後、トランプ大統領が最終判断するとされている。

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