昨夏、ベルギーリーグへと移籍した遠藤航。主力として1シーズンを戦い、シントトロイデンの躍進を支えた。最終節のケガで5-6月の日本代表召集は見送られたが、アジアカップで見せた安定したプレーは、欧州に渡った大きな成果と言える。

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「守備力」にストロンポイントを持つ遠藤は、海外で「守備」をどうアップデートさせていたったのか。「守備の原則」にはどんな差があるのか。岩政大樹の『PITCH LEVELラボ』で語り合った。その一部を編集して紹介する。

■つねに得点チャンスになりそうなシーンを作るベルギー

岩政:ベルギーに行って、遠藤選手の場合、全体を動かすとか周りに声をかける、意思統一をさせる・・・、そういうゲームマネジメントみたいなところでも感じるところがあったと思うんですけど、やっぱりより「行ったり来たり(※)」になります?
(※)攻守が目まぐるしく変わる展開

遠藤:なりますね。

岩政:そこはこれまで話してきたような(日本代表Jリーグでの細かいゲームマネジメント、その意図について意見を交わしていた)ゲームマネジメントみたいなものはあまり感じないですか。

遠藤:(日本のときのような)ブロックを引いて(※)、相手をあえて動かす、みたいな時間というのはほとんどないですね。前半からカウンターの打ち合いみたいなゲーム展開になることも多々あります。
(※)自陣に引いて守備を固める、あるいは立て直す戦術

岩政:それって周りの受け止め方としてはどうなんですか。監督や選手たちもそういうものだと思ってる?

遠藤:そういうものだと思っていますね。サポーターもそれを楽しんでるところがあります。ポジティブに言うと、常に戦いがゴールに向かっていて、常に得点チャンスになりそうなシーンが現象として起こる。その部分で見ている側に面白さはあるんですけど、中盤でプレーしている立場としてはすごくきついです(笑)

岩政:確かに(笑)

遠藤:やっぱり(試合展開に応じて)一回、ブロックを引きたいと思っていても、ほかの中盤の選手が(前に)行くと、どうしてもそれについていかないといけないという判断に――どちらかといえばですけど、なってしまっていたので。

岩政:ああー、なるほど。遠藤選手自身はどうなんですか。所属していた湘南ベルマーレは、比較的、(ベルギーのように)前に前に行くじゃないですか。日本の中ではその傾向が強いクラブです。ベルギーはそれ以上?

遠藤:より(前への意識が強い)、ですね。かなり「高め高め」に「人に人に」いくという傾向がベルギーリーグはありました。

■日本サッカーにある具体的なアドバンテージ

岩政:そういう意味で―ーブンデスなんかは特にそうですけど(「高く、人に」というのが)潮流といえば潮流じゃないですか。日本も少し、その水準に合わせていくべきではありますが、一方で例えばゲームのなかで、落ち着かせるところは落ち着かせるというような意思統一も必要だ、と我々日本人は思っていて、実際にやっている。このあたりをより突きつめていけば、日本サッカーにとってアドバンテージになる感覚はありますか。

遠藤:ありますね。特に、1点リードしたシチュエーションとかは、しっかりブロックを引いて守る判断をする必要もあると思います。ベルギーは、そういうときでもイケイケで、結果的に自分たちから崩れていくプレスのかけ方をしてしまう、みたいなこともあったので・・・。

岩政:なるほど

遠藤:特に、自分たちがきつくなってくる後半でも、より(前に)行ってしまう。でも後半になるにつれてアプローチスピードも遅くなっていくので、前には行けているけど、簡単にパス出されてしまうシーンが出てきます。シントトロイデンの場合は、(前に行ってもはがされてしまって、戦術意図ではない)ディフェンスラインで勝負されて失点――ということがけっこうありました。僕も、場合によってはブロックを引こうという判断をチームに伝えて、シーズン終盤あたりにはある程度、できるようにもなってきたんですけど。

岩政:ほう!

遠藤:そのあたりは中盤をやっている面白さではありましたね。

岩政:そういうところは、監督の指示ではなく、選手たちでピッチのなかでやってもいいという感じなんですね。

遠藤:そうですね。はい。

岩政:ゲームマネジメントが)できないというだけで、「なしではない」という感じか。

遠藤:そうですね。監督も、「まず前から行く。だけど行けなかったら下がれ」とは言うんです。一応、「ブロックを引け」とも言うんですけど(笑)、実際にそうしてボールを動かされると、「チームとしてうまくいってないな」というイメージになるようで、結局は後半でも「前から行け、もっと行け!」という指示が飛んでくる、みたいな感じでしたね(笑)

岩政:そうすると現象的には「行く形」になってしまう。

遠藤:そうですね。そのあたりは難しいですね。

岩政:難しいですね。でも、そう考えると「日本人だからできること」や「今でもできていること」があるとも言えますね。日本からヨーロッパを見ると、どうしてもヨーロッパのほうがあらゆる部分で先に進んでる、というような言い方をされてしまう。もちろん進んでいるところもあるけど、日本人だからできることもある。

遠藤:そうですね。それは思います。

岩政:今たくさんの選手がヨーロッパに行ってますから、そのあたりのことを、これからもうまく伝えていっていただきたいですね。僕はその経験を持ちえなかったので、なんとなく想像するしかなかった。今回はいろんなことが勉強なりました。こうしたことをみんなが、日本のなかでわかってくれるといいなと思うんですけど・・・。

遠藤:そうですね。やっぱり海外に出ることのメリットは、「その国のサッカー」や「スタイル」を学べるというところにもあると思います。サッカーが全然違うというか。日本のサッカーJリーグサッカーだけを知っているより、引き出しが増えます。これは、どっちのレベルが高い、低いとかじゃなくて、チームとしての戦い方だったり、個人戦術の違いだったりはすごくあるんで、いろんなサッカーを経験できる。

岩政:まさにそうですね。

【後編:―――――に続く。本対談のフル動画は岩政大樹の『PITCH LEVELラボ』でご覧になれます! 次回は川崎フロンターレ・大島僚太さんと「ボランチの原則」について配信します】

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  ベンチから見たW杯、遠藤航が感じた「分岐点」とは

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遠藤航。1993年2月9日生まれ、湘南ベルマーレ、浦和レッズで中心選手として活躍し、2018年よりシントトロイデンでプレー。日本代表としてもロシアW杯、先のアジアカップなどに選出。(写真:杉田裕一)