Credit: pixabay

Point

■Puccinia triticinaという病原菌に感染した小麦では、葉に付着した水滴が合体する際に弾かれて、それによって病原菌の胞子が運ばれる

■Puccinia triticinaは、赤さび病という深刻な病気を小麦にもたらす

■撥水性が高い物体表面で水滴同士が合体する際に、解き放たれた表面張力が運動エネルギーに変換されることで、水滴が弾け飛ぶ

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最近の研究で、小麦が「くしゃみ」をすることが明らかになった。といっても、もちろん文字どおりのくしゃみではない。

Puccinia triticinaという病原菌に感染した小麦では、葉に付着した水滴が合体する際に弾かれて、それによって病原菌の胞子を運ぶことが分かったのだ。

論文は、「Journal of the Royal Society Interface」に掲載されている。

‘Sneezing’ plants: pathogen transport via jumping-droplet condensation
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsif.2019.0243

撥水性が高い物体表面で生じる「表面張力のパチンコ」現象

Puccinia triticinaは、赤さび病という深刻な病気を小麦にもたらす厄介者だ。この菌が付着した小麦の葉には、さび色をした盛り上がった斑点ができ、その中から胞子が飛散する。赤さび病の被害は、穂の数や粒の重量の著しい低下を招く。

赤さび病に感染した小麦の葉 / Credit: 茨城県

葉に付いた水滴が弾け飛ぶ現象は、健康な植物にも見られる。水滴同士が合体する際に解き放たれた表面張力が、運動エネルギーに変換されることで、水滴が弾け飛ぶのだ。

この「表面張力のパチンコ」とも呼ぶべきこの現象は、麦のような特定の植物の葉など、撥水性が極めて高い時に生まれる。

その瞬間を捉えた動画がこちら。

まるで意思を持っているかのようにポロンポロンと弾け飛ぶ水の粒の美しさに、思わず見とれてしまう。

まさに自然の為せる芸術だが、この水滴が病原菌を含んでいるとしたら…? 確かにれっきとした「くしゃみ」である。

わずか数ミリのジャンプが飛散を助ける

水滴が飛ぶ高さは数ミリメートルに及ぶ。「たったそれだけ?」と思うかもしれないが、これは、病原菌を含む水滴が、葉の一枚一枚を覆っている静止空気の層から出て、わずかなそよ風によって他の植物へ運んでもらうには十分な高さだ。

撥水性の高い物体表面でこうした現象が起こることは以前から知られていたが、それによって病原菌の運搬が助けられていることが分かったのは今回が初めて。

赤さび病を防ぐ上で、その病原菌がどのようにして飛散するかを知ることは重要だ。たとえば小麦の葉の撥水性を抑える薬剤を散布することで、伝染を防げる可能性があるのだ。

 

これから朝露にきらめく小麦畑をみたら、思わず「お大事に!」と呟きたくなるかも。

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reference: sciencenews / written by まりえってぃ

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【研究】植物が「くしゃみ」をすると厄介なものが広がる