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ブラックホールの周囲にある「活動銀河核(AGN)」から放出される放射線に生命を生み出す能力があるかも

AGN放射線は物質がブラックホール に落ち込むときに生じる摩擦で発生する

ハーバード大学の研究によると、AGN放射線は大気中の分子を分解して生命に必要な化合物を作り出す機能がある

ブラックホール破壊者でなく創造者なのかもしれない。

あまりの重力の強さに、物質だけでなく光までも吸い込んでしまうブラックホール。ところがハーバード大学の研究によると、ブラックホールから放出される放射線には生命を生み出す能力があるかもしれないというのだ。

この放射線ブラックホールの周りにある「活動銀河核」との連動で生じる仕組みとなっている。これが惑星の大気に照射されることで分子を分解し、生命に必要な化合物を作り出すというのだ。

研究の詳細は、5月24日付けで「The Astrophysical Journal」に掲載されている。

活動銀河核とは

上記のような放射線は正確に言うと、ブラックホール からではなくその周囲にある「活動銀河核(AGN=active galactic nuclei)」から放出される。

AGNの中心部には大質量ブラックホールが存在しており、そこに向かってガスやチリなどが落ち込んでいく。この動きの影響でブラックホールの周囲に平らな降着円盤が形成される。

そして円盤内の摩擦熱によって落下するガスが電離し強烈なプラズマジェットを生み出すのである。これが今回の研究で生命を生み出すと言われている放射線だ。

活動銀河核のイメージ/Credit:vsop

しかしAGN放射線1980年代以来、研究者たちによって惑星の大気を破壊する原因だと考えられている。そのせいでブラックホールの周囲には生命が住むことのできないデッドゾーンが形成されると主張されてきた。

ところが主任研究員のManasvi Lingam氏は「ブラックホールについてはほとんど有害な側面しか語られない」と指摘する。そこでチームは有害だとされている放射がいかなるものか、悪影響が及ぶ範囲はどの程度なのかをコンピューターモデルで調査した。

生命の光か?

チームはモデルを用いて、天の川銀河の中心部に位置する「いて座A*(いてざエー・スター)」を調べてみた。いて座A*には超大質量のブラックホールが存在しており、AGNと同じように強力な放射線を放出している。

これまでその光は周囲半径3200光年以内をデッドゾーンにすると考えられてきたが、モデル調査によると実際は半径100光年以内に止まると結論づけられた。ちなみに天の川銀河の半径はおよそ53000光年である。

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さらにAGN放射線を調べてみたところ、危険区域になければ惑星の大気は無傷のままとなると指摘。というよりもむしろ、AGN放射線が大気中の分子を分解することで、タンパク質、脂質、DNAといった生命のベースとなる化合物を生成するきっかけともなるというのである。

それだけでなく植物の光合成も助長する機能も考えられ、これは近くに太陽のような光源となる星がない惑星にとっては大いに重要な光となる。

いて座A*は地球からおよそ2万6千光年と遠く隔たっているため詳細な周辺状況は分からない。もしかしたらハビタブルな惑星がすでにいくつも存在しているかもしれない。

reference: futurismlivesciencevsop / written by くらのすけ

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ブラックホールから放出される光が生命を生んでいるかもしれない