下部組織から育った母国クラブでの印象深いシーンを現地紙が回顧

 J1サガン鳥栖の元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスが、21日に現役引退の意向を発表した。“エル・ニーニョ”(神の子)の愛称で愛されたストライカーの決断に、日本だけでなくイングランドなど各国で報じられている。そのなかでも特に大々的に扱われているのは、もちろん母国スペインだ。「マルカ」紙は「トーレスアトレチコ・マドリードにおいて10の忘れ得ぬ瞬間」と題して、その功績を紹介している。

 1つ目に挙げたのは、「デビューと1週間以内のゴール」。2000-01シーズンのアトレチコはリーガ・エスパニョーラ2部に所属していた。現在の隆盛ぶりを考えれば信じられない話だが、5月27日のレガネス戦でトーレスはかつての聖地ビセンテ・カルデロンでデビュー。そして翌週のアルバセテ戦で途中出場し、プロ初ゴールで1-0の勝利に貢献した。

 続いて印象的なゴラッソとして、03年11月2日の敵地ベティス戦での一撃を挙げている。前半の終盤に左サイドからのクロスに対してファーサイドに走り込むと、身体を目いっぱい伸ばしたジャンピングボレーをゴール左隅に叩き込んだのだ。

 そして名門レアル・マドリードとの、ダービーマッチでの一撃も選出されている。同都市のライバルであるレアルとは、21世紀に入ってから格差を見せつけられる間柄だった。しかし06-07シーズンは、リーグ戦2試合とも1-1のドローに持ち込んだ。特にビセンテ・カルデロンでの一戦ではトーレスがGKイケル・カシージャスの牙城を打ち破り、ファンの留飲を下げさせている。

 4つ目に挙げたのは、カンプ・ノウでバルサを破った一撃。04-05シーズン、必殺の裏への抜け出しからPKを獲得し、自らPKを沈めて2-0の勝利に大きく貢献した。

 5つ目は2010年南アフリカワールドカップ(W杯)で、スペイン史上初の優勝を成し遂げた時のこと。当時所属していたのはリバプールだったが、アトレチコのタオルマフラーを掲げ、前所属のチームに敬意を表したエピソードがある。

記録以上に“記憶に残るゴール”を決めたストライカー

 6つ目はリバプールを経てチェルシー、そしてACミランと渡り歩いたトーレスが、2015年1月に古巣へと復帰。その際の会見では、マドリードの地に戻ったことで安堵感が露わになっていたという。

 そして7つ目はアトレチコ復帰後の1月15日スペイン国王杯ラウンド16第2戦、対戦相手は宿敵レアル。そこでトーレスは敵地サンチャゴ・ベルナベウながら移籍後初ゴールを含む2ゴールを決め、合計スコア4-2でチームの準々決勝進出に貢献した。

 8つ目はアトレチコ復帰後の「最高のゴール」として、17年2月12日に行われたセルタ戦に注目。トーレスは右サイドからの縦パスをペナルティーエリア内やや右で、ゴールを背にした状況で受ける……と思いきや、ゴールの方向を見ないままダイレクトシュート! 鮮やかな弧を描いた一撃は相手GKも見送るほかなく、ゴール右隅へと収まった。キャリア屈指のファインゴールと言えるだろう。

 そして9つ目は、2016-17シーズン限りで以前の本拠地ビセンテ・カルデロンはその役目を終えたが、アトレチコにとってのラストゲームとなったアスレティック・ビルバオ戦で主役になったのはやはりトーレスだった。前半8分に先制ゴールを決めると、その3分後にはMFコケのアシストを受けて2点目をゲット。3-1の勝利というフィナーレに導いた。

 最後は翌17-18シーズンから新本拠地ワンダメトロポリターノがお披露目となったなか、トーレスディエゴ・シメオネ監督の下でサブの役回りに。それでもスペイン国王杯ベスト32のエルチェ戦で2ゴールを挙げた。

 EURO得点王など輝かしい実績を残してきたトーレス。その記録以上に記憶に残るゴールを決めた印象が強い。まさに“持っている”ストライカーだったと表現しても過言ではないだろう。(Football ZONE web編集部)

アトレチコでトップデビューを果たしたトーレス【写真:Getty Images】