村上正邦氏(撮影/菊竹規)

国会議員はなぜかくも劣化したのか!
 ビザなし渡航で訪問した国後島で「女を買う!」と酔って暴れた丸山穂高議員のみならず、自身の発言に責任を持たず平然と嘘をつく安倍総理など国会議員の劣化が止まらない。

『月刊日本』7月号では、こうした政治家の劣化を憂い、第一特集として、国会議員の劣化の要因について識者に問う記事を掲載している。今回はその中から、元参議院自民党議員会長である村上正邦氏の論考を転載、紹介したい。

月刊日本7月号

◆小選挙区制が諸悪の根源
―― 近年、国会議員の劣化が目に余ります。ビザなし交流で国後島を訪れた日本維新の会丸山穂高議員が、泥酔の挙句「ロシアと戦争して」領土を取り戻すとの発言をした上、「オンナを買いたい」などの暴言を連発しました。

村上正邦氏(以下、村上):言語道断! 論評にも値しない暴言です。衆院では全会一致で丸山議員の糾弾決議が成立したが、本人はツイッターで「任期を全うする。行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張」と投稿したそうです。「行蔵は我に存す」とは勝海舟の言葉です。泥酔して、自分が何をやったか、どんな発言をしたのかさえ覚えていない人間が、「行蔵は我に存す」とは聞いて呆れる。勝海舟が泣いてますよ。

 この程度の男が議員になれるのは、今の小選挙区比例代表並立制という選挙制度に問題があるからです。今の若手は偏差値が高く、知識は豊富でも、常識や人間力に欠ける政治家ばかりになってしまった。選挙制度が中選挙区から小選挙区に変わったことで、政治家が「庶民に選ばれるもの」から、「党幹部に選ばれるもの」になってしまったからです。候補者が有権者である庶民に目を向けず、党幹部の顔ばかり見て、公認を貰おうとする。党幹部も東大や官僚出身、外国留学組などを重視して、候補者選定を行う。これは自民党だけでなく、他の政党も同じです。丸山議員も東大・経産省という絵に描いたようなエリートだが、国会議員としての基本的な資格、つまり国家国民のためという志が決定的に欠如していますね。日本維新の会は丸山議員を除名処分にしたが、維新がこんな男を公認したこと自体が間違いなのです。

 しっかりした国会議員を作るには、選挙制度を再検証して、いったん中選挙区に戻すなど、一刻も早く小選挙区比例代表並立制をやめて、選挙制度を改革すべきです。選挙で切磋琢磨し、揉まれ鍛えられて、初めて国会議員としての志が確固たるものになる、そう私は思います。とにかく今の小選挙区制には弊害が多すぎる

◆世襲議員が日本を滅ぼす
―― 戦後ほぼ一貫して政権を握ってきた自民党は、いつの間にか安倍晋三総理、麻生太郎副総理兼財務相はじめ世襲議員の比率が異常に高くなっています。

村上:安倍、麻生の2人はもちろん、総裁選を戦った石破茂や政調会長の岸田文雄、外相の河野太郎、若手の小泉進次郎、女性首相候補の1人である小渕優子など、みな世襲議員です。小泉純一郎以降の総理は、安倍、福田康夫、麻生と全て世襲政治家。大名の子は大名、百姓の子は百姓だった世襲制度の江戸時代に戻ってしまったようだ。

 2年前に総選挙があったが、小選挙区で当選した自民党議員218人のうち世襲議員は72人で全体の33%を占めた。つまり、3分の1の自民党議員が世襲政治家というわけだ。世界広しと言えども、これほど世襲議員が蔓延っているのは日本だけですよ。

 世襲議員は親から地盤・看板・カバンを引き継ぐ。徒手空拳で選挙に挑もうとする志ある青年にとって、世襲議員は巨大な壁です。
 明治維新が成功したのは、挑戦精神に富んだ、優秀な下級武士が改革の先頭に立ったからです。彼らは世襲制度を崩し、野にあった優れた人材を積極的に登用しました。これからの日本には解決すべき課題が山積しています。新しい時代を切り拓くために、自民党は世襲政治を打破する覚悟をしなければならない、私はそう確信しています。

 私は若いころ、炭鉱で働きながら夜間高校で学び、組合運動にも力を注ぎました。劣悪な職場で働く仲間の安全を確保するための環境整備、そして生活向上を目指し、書記長選挙に立候補したことがあります。

 政治の恩恵は、恵まれない者、陽の当たらない者にこそ注がれるべきだと考えていました。乳母日傘の世襲議員には、こうした人々への温かい眼差しが徹底して欠けています。そうした意味でも、世襲議員が大手を振っている現状を変える必要を痛感します。

◆参院改革に全力を注げ
―― 村上さんは現役時代、大胆な参議院改革を主張しておられました。

村上:政治家の劣化を防ぐためにも、参院改革は是非とも成し遂げなければなりません。衆参が同じような選挙制度、しかも実態は「風頼り」の人気投票であることは衆参とも同じです。「参院は衆院のカーボンコピー」などと言われる参院の現状は大胆に改革しなければなりません。衆院は権力闘争を行う修羅場ですが、参院は良識の府としての役割を果たすべきです。各界屈指の有識者で良識の府を構成し、衆院とは全く違う機能を持たせるべきです。

 現行憲法では予算と条約承認については衆院に優越権があります。しかし、権力闘争を専らにする衆院に外交の優越権を持たせるのは間違いだと思います。外交と決算については、参院に優越権を持たせるべきです。

村上正邦氏●元参議院議員、労働大臣を歴任。在職中は参議院自民党において多大な影響力を持ち、「タカ派」「参院のドン」との異名で呼ばれた

<提供元/月刊日本編集部>
げっかんにっぽん●「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

村上正邦氏(撮影/菊竹規)