2019年度の最低賃金改定の審議会が始まるのを前に、全労連(全国労働組合総連合)は6月24日、全国で調査している「最低生計費」の中間報告を行なった。最賃は地域によって大きな幅があるのに対し、生計費は地域差が小さいとして、最賃の全国一律化や引き上げが必要だと訴えた。

調査は全労連の組合員を中心に実施。生活のパターンを調べる「生活実態調査」と所有物を調べる「持ち物財調査」を通して、「健康で文化的な生活」に必要な品物や量を積み上げて検討した。

賃貸ワンルーム(25平米)に住む25歳という条件で最低生計費を試算したところ、最低賃金が全国最低(761円)の鹿児島県では月19万4443円が必要という計算になったという(鹿児島市の男性で試算)。

一方、愛知県名古屋市(最賃898円)は月17万9383円(男性)、埼玉県さいたま市(最賃898円)は19万824円(男女)など、都市部と地方ではほぼ同じか、むしろ地方の方が多くかかる傾向があった。

調査を監修した静岡県立大の中澤秀一准教授は、地方では車が必要だとして「家賃と車の維持費はトレードオフの関係にある」と述べた。

すでに19都道府県の結果が出ており、今後は東京(最賃985円)などの分析も進めるという。

●最低生計費は「ギリギリ」の数字ではない

今回の数値は、最賃の参考にされることが多いという人事院の「標準生計費」(2018年:月11万6930円)に比べて高い値だ。

この点について、中澤准教授は最低生計費はあくまで理論値だとした上で、「標準生計費の食費では、野菜を我慢するなど、相当切り詰めないといけない。(最低生計費では)栄養バランスも考えて計算した」などと説明。奨学金や急な出費なども考慮し、支出の1割に相当する「予備費」も計上しているという。

中澤准教授は、「(現実では)お金が足りなくて、若者が親元から離れられなかったり、食事や通院、娯楽を我慢している」との見解を示した。

●最低生計費維持には年収270万円超が必要

全労連が試算する最低生計費を維持するためには、税金や社会保険料なども考慮すると、年額で270万円ほどが必要になるという。週40時間働く想定(月173.8時間)で時給1300円超が必要になる計算だ。

これらの結果から、全労連は最賃の全国一律化が必要だと主張。金額についても時給1000円以上とし、早期に1500円(月150時間労働で最低生計費を満たす程度)にすべきとしている。

上げ幅の差こそあれ、最賃の引き上げは与党を含め、ほとんどの政党が賛同している。自民党内には、最賃の全国一律化を検討する議連もできた。一方で、最賃を急激に引き上げた韓国では、失業率の高さなども問題視されている。

この点について、全労連の野村幸裕事務局長は、中小企業の負担に配慮し、(1)直接的な財政支援、(2)税や社会保障負担の軽減、(3)大企業との適正取引の実現ーーなどを同時並行で実現する必要があると話した。

全労連調査「生計費、地域差ほぼなし」 最低賃金「全国一律」を求める