近年の日本映画界を最も盛り上げている、コミック原作の実写化。原作ファンを中心にさまざまな意見はあるが、ある意味、若手俳優たちのステップであると同時に、彼らの魅力や実力を最大限に発揮できる場といえるだろう。ここでは、そんな彼らによって、原作漫画を超えた、もしくは原作とはひと味違った魅力が加わった作品を紹介する。

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そのトップ・ランナーとして挙げられるのが、古くは『あずみ』('03)や『花より男子ファイナル』(’08)、『クローズZERO』(’07)、『ルパン三世』(’14)に至るまで、さまざまなキャラを演じてきた小栗旬。自身が常に新作をチェックするほどの漫画好きということもあり、脚本協力で参加した『HK/変態仮面』(’13)、TBSのドラマ・プロデューサーにドラマ化を提案した『ROOKIES』(’08)など、プロデュース能力も発揮。そんな彼の原作愛が最も爆発したのが、『銀魂』シリーズ(’17、’18)である。

小栗の弟分的存在だった菅田将暉をはじめ、豪華キャストを集めた本作では、ヒロイン神楽に抜擢された橋本環奈が白目や鼻ホジ、マーライオンばりの嘔吐などの原作同様のブッ飛んだ演技を披露。それまでの“1000年にひとりの美少女キャラ”イメージを打ち破り、ブレイクを果たした。そして、三浦春馬窪田正孝らが新たに参戦した『銀魂2 掟は破るためにこそある』も、前作同様、小栗演じる主人公・坂田銀時カリスマ性のほか、クレームギリギリのパロディなど、福田雄一監督が最も得意とする“マジメにおバカ”テイストはそのまま。そのため、前作同様に多くのファンに支持されたのもうなずけるだろう。

その『銀魂』で沖田総悟役に抜擢され、橋本同様にブレイクしたのが吉沢亮。『BLEACH』(’18)では福士蒼汰演じる主人公のライバルといえる石田雨竜を好演するなど、その甘いマスクがどこか哀愁を漂わせるキャラにハマる。それが今年ひとり二役の難役をこなした『キングダム』(’19)へとつながっていくが、その主演といえば、今や“ポスト小栗”といえるほど実写化作品への出演が相次ぐ山崎賢人である。

『L・DK』(’14)など、“壁ドン王子”のイメージが強かった彼だが、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(’17)では、リーゼント姿の主人公、東方仗助を熱演。これまで見られなかった彼の熱血キャラは、新田真剣佑らと共に、実写化不可能と言われたほどの原作の独特な世界観にマッチした。インタビューなどから分かる彼の“素直さ”は、どんなキャラにもハマっていく強みといえるかもしれない。

そんな山崎とNHKの連続テレビ小説『まれ』(’15)で夫婦役を演じた土屋太鳳が、ヒロイン雫を演じたのが『となりの怪物くん』(’18)。天真爛漫なイメージが強い彼女が、冷静で淡白な性格の高校生を演じる上、菅田将暉演じる超問題児の主人公に振り回される。

また、『となりの~』と同じ月川翔監督の『君の膵臓をたべたい』(’17)で余命1年のヒロインを演じ、一躍注目を浴びた浜辺美波(『となりの怪物くん』にもメガネっ子委員長役で出演)は、『センセイ君主』(’18)で竹内涼真演じる臨時教諭に恋する“バカで単純な性格”のヒロイン、さまるん(佐丸あゆは)を演じており、捨て身の変顔や奇妙な動きを披露するなど、どちらの作品も女優としてのギャップがスパイスとなっている。

また、『孤狼の血』(’18)で多数の映画賞を受賞するなど、あまりコミック原作の出演のイメージがない松坂桃李も『不能犯』(’18)で、主人公のダークヒーロー、宇相吹を好演。「愚かだね…人間は」を決めゼリフに、心理テクニックによって人々を殺害。赤く光るセクシーで妖しい瞳に、不敵な笑みといった浮世離れしたキャラながらも、若手演技派である彼の怪演によって、より説得力を持たせることに成功したといえる。

■ 文=くれい響

1971年生まれ。TV番組制作、『映画秘宝』編集部を経て、映画評論家に。雑誌、ウェブ、劇場パンフレットなどに映画評やインタビュー記事を寄稿。(ザテレビジョン

『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』