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Point
天王星は土星同様に惑星の周囲にリングを持っているが、それは土星とは比べ物にならないくらい微妙な存在

■非常に暗く、細い天王星の環は地球からではほとんど見えず、あまり研究が進んでいない

■そんな天王星の環に対して初めて温度測定を行った結果、なんと-196℃という非常に低温であることが判明した

銀河から投げ飛ばされ「ホームレス」となった連星を発見

惑星を囲む環といえば土星が有名だが、天王星にも縦方向(太陽の公転面に対して)に傾いた惑星を囲む環が存在している。

この縦型のリングが付いたかっこいい天王星のイメージは、誰でも一度は見たことがあるだろう。しかし実際天王星の環は非常に微妙な存在で、あまりに暗く細いため、地球からはほとんど見ることが出来ない

天王星はもともと遠いこともあり、あまり研究は進んでいない星だ。惑星の輪についても、外宇宙へと旅立ったボイジャー2号が、近くを通り過ぎた際に撮影した映像があるくらいで、詳しいことはわかっていない。

しかし現在は、地球に設置された望遠鏡の精度もどんどん上がっているため、この天王星の環についても少しずつ新しい情報が追加されている。

今回報告された研究では、天王星の環について初めて温度測定が行われたという。それによると、天王星の輪は77ケルビン(-196℃)という非常に低温で、液体窒素の沸点程度の温度しか無いということが明らかになった。

この研究はにより米国カルフォルニア大学と英国レスター大学の研究者より発表され、天文学術誌『アストロフィジカルジャーナル』に掲載されている。

Thermal Emission from the Uranian Ring System
https://arxiv.org/abs/1905.12566

あまり注目されていない惑星 天王星

天王星太陽系の中では、あまり調査が進んでいない惑星だ。

ミステリアスな魅力を持っている。と、言えば聞こえはいいが、非常に低温で距離も遠いこの惑星は、テラフォーミングの可能性を持つ近所の火星に比べると研究対象として魅力が薄いというのが謎の多い原因だろう。

天王星を調査した探査機は、1977年に打ち上げられたボイジャー2号のみであり、他はハッブル宇宙望遠鏡による観測情報しかない。

そのため某アニメのように、海王星と共に色々と謎の多い辺境惑星ペアなのだ。

天王星の地軸は、公転面に対してほぼ水平に傾いていて、取り囲む環が縦になっているのもそれが原因だ。また磁気の動きにも偏りがあるという。

また天王星のリングについても謎が多い。天王星のリングは非常に幅が狭く、そのせいで光学的な撮影ではとても暗くほとんど見ることができない。

土星のリングは幅が広く100キロメートルから、大きいものでは数万キロメートルに及ぶ。しかし、天王星ではもっとも幅の広いイプシロン環で、幅が20〜100キロメートル程度しか無いという。

今回は日本もプロジェクト参加している非常に高性能な南米チリのアルマ望遠鏡とVLT望遠鏡の2つを使って、リングの熱的な放射を捉え、温度測定することに成功した。

下の写真はアルマ望遠鏡の捉えた天王星の電波画像だ。ここではリングの熱放射を初めて観測している。

リングの熱放射を確認した望遠鏡アルマの画像 / Credit: UC Berkeley image by Edward Molter and Imke de Pater

硫化水素ガスは密度が上がると強い電波を発する。惑星に暗い帯が多いのは、硫化水素ガスを吸収する分子が存在しているためだ。黄色く輝いて見える部分は北極点にあたり、ここにはそうした分子がほとんど無いと推測される。

謎の多い天王星のリング

天王星の環については1977年まで存在が確認されていなかった。

18世紀に天王星の発見者でもあるウィリアム・ハーシェルが輪の存在についても言及していたというが、当時の望遠鏡の精度で天王星の環を観測することは不可能であり、その後200年近い間、天王星の環を観測した者はいなかった。

Uranus rings and moons

そんな天王星の環には不思議なことにまったく塵を含んでいない。環を持つ惑星は土星の他、海王星などがあるが、いずれもミクロ(1000分の1ミリメートル)レベルの細かい粉塵を含んでいる。

天王星もリングの間には粉塵が存在しているのだが、主だった環が含む粒子は小さくともゴルフボール大のサイズがあり、細かい塵が見当たらない。

これはボイジャー2号の撮影により初めて発見された事実で、未だにその理由はわかっていないという。

今回の温度測定では、そんな天王星のリングが77K(-196℃という非常に低温であることが確認された。

研究発表者であるモルター氏は天王星のリングに塵がない理由について、「何かが細かい塵を一掃しているか、全てがまとまって一緒になっているようだが、原因はわからない」と話している。

こうした特徴から、天王星のリングは土星などとはまったく別の理由で生まれたものだと考えられている。

これは惑星の重力に補足された小惑星が衛星に衝突した残骸か、天王星に近づきすぎて砕けてしまった衛星の破片、または45億年前に惑星が形成されたときの残骸などが考えられる。

ボイジャーによる観測撮影では、リングの温度測定は行われていない。そのため今回の研究は、リングが全て同じ原料からできているのか、それとも別々の由来なのかなど、天王星リングの歴史や構成を理解するために重要なステップだという。

太陽系の惑星は、色々とわかっているようで、実はまだまだ謎が多いのだ。

冥王星が惑星から除外されたなんてこともあったが、この不思議な魅力を持つ天王星のリングからも、我々を驚かせるような事実が今後登場するかもしれない。

 

果たしてウラヌスは男なのか、女なのか…? いや、そういう謎ではなくね。

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reference:phys,sciencedaily,alma-telescope,NASA/written by KAIN

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ウラヌスの環は「超絶クール」だった! 天王星リングの熱放射を初観測