ガスといえば都市ガスやLPガスといった燃料としてのガスを思い浮かべますよね。しかしガスにはあまり知られていない、さまざまなパワーがあるのです。

ガスは燃料以外の使い道もある

皆さんはガスに育てられている植物があることを知っていますか? ガスが植物を育てると聞くと、これまでに私たちのイメージが覆ってしまいそうですね。

実は農業の分野においては、すでにガスは必要不可欠な存在となっています。ガスには農作物の収穫量を増やし、実を大きくするといった効果があるのです。それでは実際にどのような種類のガスが農業で利用されているのでしょうか?

もはやガスは農業には欠かせない存在

まず、植物の生育をサポートするガスとして知られているのが「炭酸ガス(二酸化炭素)」です。植物は成長するためのエネルギーを得るために光合成を行っています。光合成を行うためには、太陽の光と水以外にも二酸化炭素が必要です。

しかしながら、ハウス栽培などのように締め切った空間の中では二酸化炭素はすぐになくなってしまいます。つまり光合成もストップ、植物の成長も鈍ってしまうのです。
そこでハウス内に炭酸ガスを入れることによって、植物を効率よく育てることを可能にしました。

この炭酸ガスによる栽培がおこなわれている農作物には、モヤシカイワレ大根・ナス・キュウリピーマン、果物ではイチゴメロンで利用されています。バラ・蘭といった花の栽培にも使われています。

またリンゴと他の果物を一緒に置いておくと、他の果物が熟れやすいという話を聞いたことがありませんか? リンゴは熟れていく間に、多くの「エチレンガス」を発生させています。エチレンガスにはリンゴそのもの、またリンゴの近くにある野菜や果物を熟れさせる・腐らせる作用があります。

このような性質を持つエチレンガスが最も利用されているのは、バナナの追熟です。バナナは痛みの激しい果物なので、まだ実が青い段階で収穫して日本に輸入されます。日本に届いた青いバナナを、エチレンガスの充満している倉庫に入れることで熟すのを待ちます。ミカンなどでも同じように追熟するためにエチレンガスが使われています。果物以外ではアスパラガスの生産でも利用されています。

炭酸ガス、エチレンガスといったこれらのガスは、もはや日本の農業においては欠かせない重要な存在となっているのです。

海外ではこんな使われ方も

チューリップの栽培で知られるオランダでも、室内で農作物を栽培しています。しかし日本と異なり、非常に広大なスペースの室内で作物の栽培が行われています。そのためハウス内の温度を一定に保つために、大きな発電施設を設置していることも珍しくありません。もちろんハウス内の農作物を育てるのに必要な電気を作り出すためですが、電気が余れば他に売ることもあります。

またこの大型の発電機が電気を生み出す過程で排ガス(二酸化炭素)を発生させます。そこでこの二酸化炭素を大気中に放出させずにハウス内に取り込み、農作物の品質向上につなげているのです。

地球の温暖化の原因ともなっている排ガスですが、二酸化炭素も使い方次第では、農作物の品質や収穫量に大きく貢献できるということですね。

ガスは燃料として利用する以外でも、必要な存在になって行くと考えられます。地球上に存在するさまざまなガス、そしてそれぞれのガスの利用方法を研究してみたいと思うのなら、エネルギー・資源工学の分野で詳しく学んでみてはいかがでしょうか?

【出典】
Iwatani岩谷産業株式会社)
http://www.iwatani.co.jp/gas-ene/energy/use_env_green.html
全国農業協同組合連合会
https://www.zennoh.or.jp/gas/farming-gas/index.htm
オルディ株式会社
http://sendo-tamotsu.com/whatis.html
マイ大阪ガス
https://services.osakagas.co.jp/portalc/contents-2/pc/w-energy/report/201804/index.html