「こんなにいろいろなことがあったのに、30年以上の芸能人生で、まだ勝負してないです」

 6月28日から全国公開される「凪待ち」(白石和彌監督)の舞台あいさつにおける、香取慎吾さんの驚きの一言です。この言葉は、劇中で人生につまずき、落ちぶれた男、郁男が人生を変えようと大勝負に出ることにちなんだ、「人生で大勝負に出たことはありますか」という質問に対する答えでした。これまでの出来事は、まだ勝負ではなかったのか。大勝負はこれからと思わせる発言に、会場も沸きました。

 今回、映画のキャンペーンで飛び回っていた香取さんを大阪でキャッチ! 香取さんの“悩み”について聞いてきました。

今まで経験したことのない“ダメ男”

 これまで、香取さんを取材してきて感じるのは、高いプロ意識と天性の才能。自らを「パーフェクトビジネスアイドル」と呼びます。その真意を聞くと、「アイドルは、応援してくれる人の笑顔を作り出し、その笑顔で自分も笑顔になれる人。そして、自分の生活は、買い物一つもファンのおかげとしっかり自覚し、お互い納得した関係が成り立っているのがパーフェクトビジネスアイドルです」と答えてくれました。

 そんな“パーフェクトビジネスアイドル”が今回見せてくれたのは、アイドルとは程遠いすさんだ姿。働きもせず、女性のお金でギャンブルし放題、けんかに裏切り、どうしようもないろくでなしです。見ていて出るのはため息ばかり、はっきり言って最悪のダメ男なのです。

 香取さんに聞いても、演じていてつらかったといいます。気持ちを作って本番に臨み、カットがかかっても余韻は続き、白石監督作品ではその先に明るいシーンは待っていない…つらい時間が続いたそうです。

 今までに経験したことがない、強烈なダメ男の役作りはどうしたのかとぶつけてみると、驚きの答えが返ってきました。台本を読むのは1回、あとは、しまってしまうそうです。セリフ覚えは、例えてみれば試験勉強前の一夜漬け。大切にしているのは現場の空気感だといいます。

「あまりにも自分で完璧にしていくと、現場で状況が変わったときに対処できない。向かい合わせで話すシチュエーションを考えて作り上げていったら、現場では横並びだった。イメージをリセットするのに苦労するよりは、その場の空気感で決めていく方が役に入れる」というのです。独特の取り組み方かもしれませんが、別に楽をしているわけではなく、高い感性と集中力を要する“香取流”役作りなのです。

 さて、実際の香取さんが本当にダメなところはどこか、ホンネの悩みを聞いてみました。答えは「ダイエット」。これまでも、ダイエットについては度々、冗談のように話していましたが、本当に“ずっと”ダイエットなのだそうです。元々太りやすく、炭水化物が大好き。ご飯に麺、ソースにマヨネーズがやめられない。運動もしておらず、食べ過ぎては戻しての繰り返し。大阪でも2秒で8個のたこ焼きを平らげたとか…。

 このダイエット人生に疲れ果て、40歳を過ぎたこともあり、これからずっとおいしいものを好きに食べていけばいいのではないか、と考え始めているそうです。ちなみに、現在はベスト体重から20キロオーバー。果たして、パーフェクトビジネスアイドルはどう出るのか。

芸能リポーター 島田薫

香取慎吾さん(島田薫撮影)