日本ブロックチェーン協会は6月24日、米Facebook2020年に提供予定の仮想通貨Libra」(リブラ)に関する勉強会を開催した。Libraは、Facebookを含む二十数社からなるコンソーシアムが大規模に運営することもあり、大きな注目を集めている。勉強会ではブロックチェーン事業者や弁護士などが登壇し、Libraの概要や仕組み、日本国内で展開する上での法的解釈などについて解説した。

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Libraは「プログラマブルなステーブルコイン

 Libraは、Facebookが開発したブロックチェーン技術を採用する仮想通貨。専用のスマートフォンアプリiOSAndroid)の他、Facebook Messenger、WhatsAppなどで利用可能になる見込み。

 ブロックチェーン関連事業を行うLayerXの福島良典社長(Gunosy創業者)は、「Libraは強力なコンソーシアムメンバーサービスを経済圏とするようなステーブルコインだ。ステーブルコインでありながら、従来、人の確認を必要としていた金銭のやりとりを自動化し、やりとりのコストを下げられるスマートコントラクトを実装できる」と説明する。

 ステーブルコインは名前の通り、仮想通貨の中でも価格が安定する仕組みがあるコインのこと。仮想通貨は価格が不安定になりがちだが、例えば1通貨1米ドルの価値を保証する「TrueUSD」などはステーブルコインに当たる。

 Libraは、複数の法定通貨や資産でその価値を裏付ける「通貨バスケット制」を採用する。Libraの場合、ユーザーが払い込んだ法定通貨を、100社以上のメンバーで構成される組織「Libra協会」が信託会社に委託し、銀行預金や短期国債など各種資産へ分散投資する。信託会社が運用する各種資産の価値と割合から、1Libraの価値が決定される。

 市場での売買でLibraの価値が変動することもあるが、Libra協会によるLibraの発行と償却額が上記の通貨バスケット連動で決まることから、ビットコインのような激しい価格変動はLibraでは起きづらい。

 発行体が不正操作をする恐れがあるため、通貨バスケットによる価格決定には透明性が求められる。「Libraホワイトペーパーによれば、通貨バスケットを運用する信託会社に監査を定期的に入れることで、人間的な監視にはなるが不正や暴走を防ぐようだ」と福島氏は指摘している。

 Libraはステーブルでありながら「仮想通貨の一般的なセキュリティや海外送金の低コスト化といった特徴を備えつつ、コンソーシアムメンバーサービスを将来的に利用できることに価値がある」福島氏は説明する。

○強力なコンソーシアムメンバーによるLibra経済圏の可能性

 Libraに参画する企業は、VisaMastercardPayPalSpotifyUber、Lyftなどそうそうたるメンバーだ。これら企業のサービスが今後Libra払いで提供されるようになれば、これまで金融サービスを受けられなかった人でも、スマートコントラクトを通して関係する各種サービスを利用できるようになる可能性がある。福島氏は、「(ポイントサービスが行っているような)Libraの経済圏ができるのではないか」と予測する。

 また、Libraは専用のプログラミング言語Move」によってスマートコントラクトを実装できる。しかし、「計算リソースの貸し借り」や「保存容量の貸し借り」など汎用的な目的でプログラムを実装できる仮想通貨「イーサリアム」とは違い、「LibraはあくまでLibra通貨の支払いやすさ、金銭のやりとりの自動化に特化している」(福島氏)という。

 例えば、請求書が手元に届いてからその額面を払う「請求書払い」も、スマートコントラクトなら人が確認する工程を自動化できる。

 これらをまとめると、福島氏が考えるLibraの価値は、(1)ステーブルコインであること、(2)これまで金融サービスを受けられなかった人もLibraで受けられるようになる可能性があること、(3)コンソーシアムメンバーサービスLibraで利用できるようになる可能性があること、(4)スマートコントラクトによって金銭を低コストで素早くやりとりできること──になる。

●法的に「仮想通貨」に当たるか

 次に、仮想通貨や金融商品取引法に詳しい斎藤創弁護士が、Libraの法的解釈について説明した。

 「ステーブルコインにも種類があり、ものによっては仮想通貨に当たらないこともある。しかし、Libra仮想通貨に当たるだろう」と斎藤弁護士は分析する。

 斎藤弁護士によると、日本の仮想通貨法(資金決済に関する法律第三章の二 仮想通貨)において、仮想通貨は(1)電磁的な財産価値であり、(2)電磁的に移転可能であり、(3)不特定多数に対して使用可能または不特定多数間で他の仮想通貨と交換可能であり、(4)「通貨建資産」でないもの─―と定義される。

 「Libraはこの1~3には該当するだろう。では4の通貨建資産はどうだろうか」(斎藤弁護士

 通貨建資産とは、「本邦通貨(日本円)もしくは外国通貨で表示され、または本邦通貨もしくは外国通貨で債務の履行や払い戻し、その他これらに準ずるものが行われる資産」を指すと、斎藤弁護士は解説する。

 例えば、先の例に上げたTrue USDは1通貨1米ドルへの償還を約束しているため、通貨建資産に当たり、仮想通貨法上の仮想通貨には当たらない。

 しかし、福島社長が解説したようにLibraの価格は特定の通貨とはひも付かず、通貨バスケットで決定される。つまり、通貨建資産の定義である「本邦通貨もしくは外国通貨で表示」や「本邦通貨もしくは外国通貨での債務履行や払い戻し」には当たらないため仮想通貨といえる、というのが斎藤弁護士の意見だ。

日本国内で取り扱えるか

 Libraが法律上の「仮想通貨」に該当する場合、日本国内で取り扱いたい業者は金融庁から認可を受ける必要がある。

 いま国内の仮想通貨取引所が扱う各種仮想通貨は、2017年末までに各取引所が取り扱いを始めたもの。しかし、18年1月にコインチェックが巨額の仮想通貨流出事件を起こして以来、金融庁チェック体制を厳格化。以来、国内取引所の新規コイン取り扱いは1件も認められていないという。

 斎藤弁護士は、「金融商品取引法の有価証券に当たるかも議論が必要」という。

 「Libraは通貨バスケットや公債に投資し、通貨や公債の変動で利益を得るファンドだという見方もできなくはない。この見方であれば有価証券となる」(同)

 Libraは、ユーザーから預かった資産を分散投資して運用するため、資産は黒字運用になると思われる。しかし、投資で得られた利益は事業での利用と投資家(コンソーシアムメンバーの一部)への還元に利用されるため、ユーザーに利子が配当されることはない。もしユーザーに利子配当があれば、日本でも米国でも有価証券として扱われる可能性が高い。

 これらのことから、「変動リスクのみであれば有価証券ではないと考えていいのではないか」と斎藤弁護士は考える。

 もしLibraが通貨建資産に当たるなら、仮想通貨法や金商法ではなく、銀行法や資金決済法での「為替取引」による扱いになる可能性もあるという。Libraの取り扱いの形態によっては「前払式支払い手段」に当たる可能性もあり、「日本でLibraを扱うのであれば、これら各種法律とよく照らし合わせて検討しなければならない」と斎藤弁護士は指摘。

 「新規コイン金融庁チェックは厳しいが、Libraのコンソーシアムメンバー大企業ばかりという事情も鑑みると承認される可能性はある。他の法律の規制と比べても、仮想通貨法上の“仮想通貨”とするのが扱いやすいのではないか」(斎藤弁護士

LayerXの福島良典社長