ヤクザ業界を震撼させた、山口組の分裂劇。8月で丸4年の月日が経つが、秋には六代目山口組No.2である高山清司若頭が服役を終え“現場復帰”するとあって、いよいよ終結ムードが漂ってきている。

 優勢なのは、司忍組長率いる六代目山口組だ。

「神戸山口組を取り巻く状況は、悪化する一方です。分裂当初は多勢を占めていた徹底抗戦派も、いまやすっかり鳴りを潜めました。六代目山口組へどう出戻るか。あるいは、潔く引退するか……神戸派の有力組長たちは、2つの選択肢に頭を悩ませている」

 そう語るのは、六代目山口組系組織のある幹部。神戸山口組の内部はすでに崩壊しているとバッサリ切って捨てる。

 そして今回、本誌は神戸山口組の混迷ぶりを裏付ける重大証言を捜査当局から得た。

◆在阪の指定暴力団トップの住民票が移動

 山口組の分裂騒動は、本拠地を監督する兵庫県警だけでなく、警視庁も情報収集に人員を割いている。捜査関係者の1人が明かす。

「抗争の鍵を握りそうな人物に関しては、身辺調査を随時アップデートしています。そんな中で、井上邦雄(神戸山口組組長)が妙な動きをしていることがわかった。神戸市・北区にある自宅に、山口組とは別の指定暴力団トップの人物の住民票を移していたことが判明したんです。

 住民票を移したのは、在阪の老舗博徒組織の長。とはいえ、神戸山口組組長の自宅に住むわけがありません。これは特定抗争指定を睨んだ井上組長なりの布石だった」

 不可解な住民票の移動を説明するには、若干の補足が必要だろう。抗争が激化し、両団体が「特定抗争指定暴力団」となった場合、当該組織の構成員が5人以上で集まっただけで逮捕が可能となり、事務所や自宅の使用制限もかかる。井上組長はそれを嫌ったというのだ。

「特定指定されると、井上組長の自宅は神戸山口組系組員の出入りが制限されてしまう。これではガードが甘くなる。その点、別組織のトップの住民票を置いておけば、そこの傘下組員については法律の適用外となるわけです。ただしその場合、住民票を移した在阪組織も山口組と争うことになる可能性が高まる。抗争がより泥沼化していくことを、警戒しているのです」(同前)

◆「井上組長には早く引導を渡してほしい」

 この“住民票移動”は、たちまち神戸山口組幹部の知るところとなった。噂を聞きつけ激昂したのは、神戸山口組で副組長を務める入江禎・二代目宅見組組長だ。

 神戸山口組に近しい暴力団関係者はこう語る。

「入江組長からすれば、『他所の組織に守ってもらうほど身内を信用していないのか』となる。しかも、住民票の話は大阪の組織だけでなく岡山の独立組織にも打診していたようで、呆れ返っていました。入江組長は即座に抗議し、住民票は結局、元に戻ったようです。

 神戸山口組は先日も総本部長という要職にあった正木年男組長の辞任劇がありましたが、正木組長に続いて入江組長も組織運営から外れることになるかもしれません」

 現場レベルの受け止め方は、より辛辣だ。神戸山口組三次団体幹部はこう語った。

「分裂当初から身辺警護に駆り出されたり、一時金を用意しろと言われたり。上の要求はエスカレートする一方でした。当初、井上組長が涙ながらに語っていた『若い者のために神戸山口組を立ち上げた』という建前を信じてる組員はもういません。上層部が自己保身しか考えていないことは明白で、井上組長は山健組の資産を息子名義に書き換えたりしてるとさえ聞いてます。

 早く引導を渡してほしい。一日も早く終わってほしい。下の人間は、誰もがそう思っています。山健組を継いだ中田広志組長は、暴走する井上組長と不満に爆発寸前の現場の板挟みに合ってるはず。難しい立場だと思いますが、下の人間は我慢の限界をとうに超えています」

 潤沢な資金を持ったまま逃げ切れる井上組長と、そうでない若い世代の埋めがたい断絶――神戸山口組で起きる内部崩壊は、まるで日本の縮図のようだ。果たしてどのような結末を迎えるのか。

取材・文/日刊SPA!編集部