同じ場所にいても、蚊に刺される人と刺されない人がいる。
蚊は一体どういう原理で標的を選んでいるのだろうか?
「どうして自分ばっかり…」とならないためにも、蚊の好みに関する科学的研究をいくつか紹介していこう。
どうやって人に寄ってくるの?
彼らがターゲットを認識できるのは、生き物の吐き出す二酸化炭素に反応しているからだ。
2007年の研究によると、蚊には二酸化炭素を嗅ぎ分ける器官がある。
二酸化炭素は普通、肺から出た後もすぐに空気とは混ざり合わない。煙突の煙のように、しばらくの間は一本のつながったら帯のようにして漂っているのだ。
そして蚊は、通常の大気より高い濃度の二酸化炭素を感知すると、その方向を追って風上に向かって飛ぶ。
このセンサーにより、蚊は最大で50メートル近く離れた場所からターゲットを狙うことができるのだ。
血液型は関係あるの?
結論から言うと、血液型は蚊に刺されやすさに関係している。
2004年の研究では、O型の人はA型の倍、蚊に刺されやすかったとの実験結果を報告している。
では、そもそも血液型とは何なのだろうか?
これは赤血球表面の糖やタンパク質の違いによるものである。
蚊が血を吸う目的は血液そのものではなく、血中のタンパク質だ。このタンパク質の傾向が血液型により異なっていることが、刺されやすさの差異を生む原因のようだ。
また、血液型は皮膚からの分泌物の化学的組成に影響を与えている。蚊たちはそうした皮膚上の化学物質を感じ取る能力があり、血を吸う前から対象の血液型を判断することが可能と考えられている。
皮膚の細菌叢も関係している
他にも、皮膚上の細菌に蚊を惹き付ける要因があるとする研究報告もある。
2011年のオランダの研究者による報告では、皮膚微生物が蚊の刺されやすさに影響しているという。
人の汗などは本来無臭のものだが、細菌の作り出す化学物質と混ざることで臭いを引き起こす。蚊を誘引しているのは、この特定の化学物質だ。
つまり人の皮膚上に築き上げられた細菌コロニーが、蚊を惹き付ける人と、そうでない人の差を生んでいるというわけだ。
皮膚細菌に蚊の誘引効果があることを示した研究は、他にも日本の高校生がアマチュア研究者として報告を行っている。
彼は家族の中でもっとも蚊に刺されやすい妹の靴下に、蚊が強い反応を示したという例を上げている。
そして、妹の足は無臭だが、足の臭い父親よりも、蚊が引きつけられていたことから、その原因が皮膚上に潜む細菌の種類に依存しているのではないかという結論を出した。
実際、妹の足をアルコール消毒などして細菌を減らしたところ、蚊に刺される頻度が大きく減ったという。
これについては、先のオランダの研究でも指摘されており、同じ家族であっても皮膚の細菌コロニーには違いが生まれるため、例え父と娘の間であっても生成される化学物質が異なり、蚊に刺される頻度に影響してくるという。
蚊を惹き付ける要因は 二酸化炭素や汗、体温?
蚊は二酸化炭素を追う傾向があるため、運動したあとや、もともと呼吸が荒い人などは狙われやすい。
ただ、蚊が二酸化炭素を頼りにするのは遠距離の場合だ。ターゲットから1メートルほどの距離まで接近すると、犠牲者の選別は個人的な要因へと変化していくという。
それは上で述べた血液型や、皮膚から発散される化学物質が主な要因になる。汗をかきやすい人は、化学物質の発散量も増すため、蚊を引き寄せる要因になる。また体温が高いことも蚊を引き付ける原因になるだろう。
また、この他にも飲酒した人間が蚊に刺されやすくなるという研究報告もある。
ただ、この研究では飲酒によって有意に体温や汗中エタノール濃度などの変化を確認できなかったとしており、飲酒が蚊の誘引を引き起こした理由については謎だと結論している。
結局対策はあるのか?
はっきり言うと、血液型や皮膚の細菌叢を変更することは不可能だ。
皮膚細菌は消毒や洗浄で落とすことが可能だが、皮膚の常在菌へダメージを与えるような対策を安易に多用するのは危険が伴うだろう。
こうなってくると、もう蚊に刺されやすい人は諦めるしかなさそうにも思える。
しかし、こうした研究を報告する多くの研究者たちが推奨している対策方法が存在する。
それが服の色だ。これはかなり古くから知られている研究報告である。
蚊はかなり視力が良いことが知られており、黒い色を好む傾向がある。
そのため明るい色の服を選ぶことは良い対策になるはずだ。
「おいおい、ここまでの数々の研究報告はなんだったんだ」と思わなくはないが、やはり一番実行しやすい対策がもっとも効果的ということだろう。
結論としては、O型で息が荒く、体温が高くて汗かき、かつ蚊が好む皮膚細菌コロニーを持ち、黒い色の服を好む人は蚊に刺されやすい可能性があるということだ。
心当たりのある人たちは注意しておこう。
投稿 蚊に刺されやすい人の科学的な特徴って? は ナゾロジー に最初に表示されました。
コメント