就職や転職の面接では、面接官は「面接評価シート」を見ながら評価を行っている。この面接評価シートには、どのような評価項目があり、点数配分はどうなっているのか迫る。

結論から言うと、企業によって評価項目と点数配分は異なるが、それでもどの企業もゼロから面接評価シートを作成することはないだろう。

多くの企業が参考にしているのは、2006年に経済産業省が提唱した「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」としての「社会人基礎力」である。

経済産業省は、どの業界・職種でも必要とされる社会人として必要な基礎力を、3つの能力と12の能力要素に分けて整理している。

面接評価シートは、この「社会人基礎力」の項目を参考に作成している企業が多い。そのため、就活生や転職志願者は「社会人基礎力」の項目を分析し、それに基づいた戦い方を構築していくのが賢明である。

経済産業省が提唱する「社会人基礎力」とは?

「1.前に踏み出す力」、「2.考え抜く力」、「3.チームで働く力」の3つの能力から構成されており、

更に12の能力要素に分解され、整理されている。

「1.前に踏み出す力」(アクション)

一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力のことである。

具体的には、

①「主体性」:物事に進んで取り組む力

②「働きかけ力」:他人に働きかけ巻き込む力

③「実行力」:目的を設定し、確実に行動する力

の3つの能力要素に分解されている。

「2.考え抜く力」(シンキング)

課題を発見し、それを改善するための計画を立て、新しい視点の価値を出す力のことである。

具体的には、

④「課題発見力」:現状を分析し目的や課題を明らかにする力

⑤「計画力」:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力

⑥「創造力」:新しい価値を生み出す力

の3つの能力要素に分解されている。

「3.チームで働く力」(チームワーク)

自分の意見をハッキリと述べ、また相手の意見も聞き、現状を把握しながら柔軟に働く力のことである。

具体的には、

⑦「発信力」:自分の意見をわかりやすく伝える力

⑧「傾聴力」:相手の意見を丁寧に聴く力

⑨「柔軟性」:意見の違いや立場の違いを理解する力

⑩「情況把握力」:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力

⑪「規律性」:社会のルールや人との約束を守る力

⑫「ストレスコントロール」:ストレスの発生源に対応する力

の6つの能力要素に分解されている。

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「社会人基礎力」の織り込み方

まず3つの能力から構成されている「社会人基礎力」を要素分解した項目数を見てほしい。

「1.前に踏み出す力」と「2.考え抜く力」は3つずつ、「3.チームで働く力」は6つに要素分解されている。比率で言うと、1:1:2になる。

これは何を意味しているのだろうか。経済産業省としては、この3つの能力のうち、とくに「3.チームで働く力」を重要視しているということが読み取れるのではないだろうか。

これを日本の企業も無視するわけにいかず、基本的にはこの配分で面接評価シートを作成する。その上で、業界により点数配分を修正したり、事業内容によって新たな評価項目を付け加えるなど、微調整をしていく企業が多い。

どのように微調整するのか

微調整の仕方は企業によって異なるが、それでも業界や職種によって、大まかな微調整の方向性を推測することはできるだろう。

例えば、コンサルティング企業であれば、「2.考え抜く力」に大きなウエイトを置くだろうし、営業に注力している販売企業であれば、「1.前に踏み出す力」に重点を置くことになるだろう。

また、新規事業を立ち上げる際の面接であれば、新規事業立ち上げに必要な力としての「情報収集力」や「論点思考力」、「ドキュメンテーション力」、「プレゼンテーション力」などを加える企業もある。

就活生や転職志願者は、このような推測を自分なりにしてみる必要があるだろう。その上で、OBOG訪問時や人事部の人と直接会う機会を探し、どの能力を重要視しているか、直接サウンディングしてみるのが賢明である。

無名大学、無名企業出身者が次々と難関企業の内定を勝ち取っている理由

無名大学に通っていても、無名企業に勤めていても、難関企業の内定を勝ち取っているケースが最近よく見受けられる。

彼らはどのような対策を行い、競争を勝ち抜いているのだろうか。

まずOBOG訪問や人事部主催のイベント参加時に、この「社会人基礎力」の項目を印刷していき、「貴社はこの社会人基礎力の中でどの項目を重視している会社ですか、またここには無い重視している能力はありますか?」

と直接確認して、それに対する対策を練っている就活生・転職志願者が増えてきている。

彼らは企業側が求めている人物像に合わせたアピールを面接で行うので、面接官は評価項目を見ながら、高得点をマークするのである。

その結果、無名大学でも無名企業でも、高得点のため内定を出さざるを得ないのである。

孫氏の名言である、「彼を知り、己を知れば百戦殆からず」の「彼を知る」にフォーカスした動きが、就活生や転職志願者の間で出始めている。これは企業側からしても、ウェルカムなことではないだろうか。

【参考資料】

人生100年時代の社会人基礎力について経済産業省