裁判員経験者や弁護士などでつくる「裁判員経験者ネットワーク」で共同代表世話人を務める牧野茂弁護士らが6月26日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、裁判員の守秘義務を緩和する必要性を訴えた。

牧野弁護士は「裁判員もその情報を受ける側の社会も『話したい』『聞きたい』という関係にあると思います。しかし、それを阻んでいるのが『守秘義務』というバケモノなのです」と語った。

裁判員制度が開始してから今年で10年。裁判員には守秘義務が課されており、評議の内容をいっさい話すことはできない。違反者には重い罰則が規定されている。

●「守秘義務」があるために「お墓に持っていかなければならない」

会見には、裁判員経験者も参加。ある男性は「守秘義務という規定があるために(裁判員の評議の内容などを)お墓に持っていかなければなりません」と語った。

裁判員は社会経験をもとに、真剣に意見を出し合って評議をしています。しかし、その感想しか話すことができません。ただ、感想はいいと言われても、感想と具体的な部分とのはっきりとした差がわかりません。また、なぜその感想になったのかという部分が重要ではないかと思います」(男性)

同じく裁判員の経験がある別の女性は、「家族、友人、知人などは裁判員の話を聞きたがっていますが、守秘義務があるため話すことができません。その結論に至った経過の話ができればと思っています。また、被告人も社会の一員です。裁判員の話によって、被告人や加害者についてみんなで考えるきっかけになれば」とした。

裁判員こころの負担の軽減に

牧野弁護士によると、5月19日青山学院大学でおこなった公開シンポジウム「裁判員制度の10年ー市民参加の意義と展望ー」で「裁判員経験者ネットワーク」をはじめとする6つの市民団体が、守秘義務の緩和を求める共同提言をおこなったという。

提言では、事件関係者のプライバシーに関する事項や裁判員の名前など職務上知り得た秘密を守秘義務の対象とし、それ以外を原則自由に話すことができるように法改正すべきだとしている。牧野弁護士は「裁判員にとって、こころの負担の軽減にもなる」と強調した。

裁判員の経験共有「守秘義務というバケモノが阻んでいる」、経験者らが緩和訴え