今年1月12日、Zepp Osaka Baysideでの初めてのソロライブ「Kaede Higuchi 1st Live “KANA-DERO”」を大成功させた、「にじさんじ」所属の女子高生バーチャルライバーバーチャルYouTuber樋口楓
その後も、歌ってみた動画の新作コンスタントに公開。数々のライブイベントにもゲスト出演するなど、さらに積極的な音楽活動を続けてきた。

6月29日(土)には、2度目の主催ライブとなる「Kaede Higuchi VR Live "ReStart Line"」を開催。今回は、生バンドを従えてのリアルライブだった1stライブとは趣向を変え、VR空間の中で行われる。
Oculus Go/Quest用のVRチケット、ニコニコ生放送のチケットともに、ライブ公式サイトで販売中

1月にも1stライブを間近に控えた思いを語ってもらったエキレビ!では、再び樋口楓へのインタビューを実施。
この前編では、ライブBlu-rayも絶賛発売中の1stライブ「KANA-DERO」の思い出からまずは語ってもらった。

えるちゃんと凛先輩がちょっと緊張していて、「ああ、良かった」って
──1stライブ「KANA-DERO」から約5か月過ぎましたが、今、ライブ当日を振り返ると、どのような気持ちになりますか?

樋口 ライブの後、いろいろな取材や自分の配信でも感想を話させていただいたんですけれど、5か月経った今だと「よくあのステージに立てたなあ」みたいな感覚です(笑)。



──初めてのライブに向けて、テンションや集中力も普段以上に高まっていた?

樋口 ライブ前は、配信の回数もかなり減らしていて。曲を覚えたり、演出を考えたりすることで頭がいっぱいいっぱいになってました。生バンドさんと初めて一緒にライブを行うということでもプレッシャーがあったし、ライブの半年くらい前からけっこう焦っていたと思います。今も「ReStart Line」に向けての準備をしているし、ライブ前ではあるんですけれど、リアルライブとVRライブでは感覚が少し違うところもあって……。

──「KANA-DERO」の前よりは落ち着いている?

樋口 そうですね。それに(VRライブプラットフォームの)VARKさんでは、他のVTuberさんのライブを何度もやっていて。どれも評判の良いライブばかりだったので、安心して臨めるだろうなという感覚があります。

──「KANA-DERO」で、最初にお客さんの姿を見たときの感想を教えてください。

樋口 ライブが始まってからは、本当に後ろの方までお客さんが見えました。でも、最初にお客さんを見たのは開場した時で。スタンバイしながら(ゲストの月ノ美兎、静凛、えるを加えた)演者の4人で、客席の様子を舞台裏から生で見ていたんです。誰もいなかった会場がお客さんでどんどん埋まっていく様子を見ながら、「あ、入ってきた入ってきた!」「グッズ、買ってくれてるね」とか話していました。

──本番直前は、そういった雑談ができるくらいリラックスしていたのですね。

樋口 リハで演出面の不安だったことなどを全部解消していただけていたので、「もう後は本番に臨むだけだ」という感覚でした。あとは、えるちゃんと凛先輩がちょっと緊張していて、「ああ、良かった」って。

──なぜ「良かった」のですか?

樋口 2人が私より緊張してたから、なんだか、ちょっと安心できました(笑)。



──自分より緊張してる人を見て、落ち着く感覚は分かります。では、ライブが始まった瞬間は、どのような感覚でしたか?

樋口 直前にゲストのみんなや(バックバンドの)Deroon5の皆さんと円陣を組んで、「みんなに思いが届きますように。Deroon5、いくぞ!」みたいなこと言ったのですが、その時にお客さんが初めてリアルタイムで「声が聴こえた!」「がんばれー」「ウォー」みたいな歓声を上げてくださって。それを聴いたら「ちゃんとみんなに声が届いてる!」「良かった!」と安心できて、最初はあまり緊張せずに入れたかな、と思います。まあ、いきなり音は外しちゃいましたけど(笑)。

同期のみんなと顔を合わせたら「良かったよ」と言ってくれた
──私も「KANA-DERO」は現地で観ていたのですが、歌のパフォーマンスの高さはもちろん、ステージでの立ち回り、MCでのお客さんやゲストとのやりとりがものすごく自然で慣れている感があって。「本当に初めてのライブなのかな?」と思うほどでした。

樋口 部活で、吹奏楽部の発表会やコンクールに出ていたりするので。あんなに大きなステージに立ったのは初めてでしたが、本番前の臨み方みたいなことは、けっこう慣れていたのかもしれません。いつもリハの前が一番緊張するので、「ああ、やっぱり、お腹痛くなってきた〜」みたいな(笑)。でも、「今、緊張していたら、本番は大丈夫」という感覚も分かっていたので、落ち着いて本番に臨めました。

──MCを含めた進行もすごくスムーズでしたが、リハーサルや、脳内シミュレーションを何度も行っていたのですか?

樋口 お客さんの反応に合わせてMCをしようと思っていたので、一応、「盛り上がった場合のMC」と「盛り上がらなかった場合のMC」を考えてはいたんです(笑)。でも、思った以上にお客さんが盛り上げてくださって嬉しかったですね。あと、現地で観てくださっている方だけではなく、ニコニコの生配信で観て下さっている方もたくさんいらっしゃったので。そういったお客さんともやり取りをしたりとか、現地の方も生配信を観ている方も、みんなで一緒に盛り上がれるようなMCは心がけたつもりです。

──ゲストの3人もライブをすごく楽しんでいる様子が伝わってきました。樋口さんはホストとして、一緒にステージに立つ仲間のことをどういった気持ちで見ていましたか?

樋口 お客さんの中には、えるちゃんや凛先輩や美兎ちゃんのファンの方もいらっしゃったと思うので、そういう方からは「今、私のことはどう見えてるんだろう?」とか、「私がホストでよかったのかな?」という気持ちが一番大きかったですね。どうやったら、ゲストのみんなのファンの方にも、より楽しんでもらえるのか考えていて。MCでも、限られた時間で内容のある話ができるように、どういうことを話そうかという相談はしていました。

──アンコールも終わってステージを降りた時には、ゲストの皆さんも出迎えてくれたのかなと思うのですが。3人や影ナレを担当した勇気ちひろさんたちと顔を合わせた時には、どんな気持ちになりましたか?

樋口 ちょっと恥ずかしかったです(笑)。アンコールでは思ったことをぶちまけちゃったというか。本当に「1stライブ、やりきったぞ!」みたいな感じの雰囲気になっていたので、「ちょっとやりすぎたかな。恥ずかしいな」と思いながら戻りました。でも、みんなと顔を合わせたら「良かったよ」と言ってくれて、安心しました。

二次元や配信のことに疎い妹と弟が「良かったよ」と言ってくれた
──「KANA-DERO」に関して、樋口さんの中で手応えや達成感が得られたことを教えてください。

樋口 お客さんとリアルの場所で対面できて、みんなの熱量も感じられたことが一番嬉しくて。普段から、Twitterでリプライをしてくださったり、配信でコメントをしてくださってはいるんですけれど、みなさんの表情までは分からないじゃないですか。でも、リアルライブを通してだと、お客さんの顔もしっかり見えたので。そういう意味でも、ここまで活動して良かったと改めて思えました。

──逆に、今後に向けての課題として見えたことはありますか?

樋口 次のライブでどんな演出をするのかについては、1stライブが終わった瞬間、課題になって。「次はどうしよう?」という焦りも感じました。思った以上に反響も良かったので。でも、次のライブ「ReStart Line」はVRライブという形になったので、VARKさんと相談して、VRならではの演出を考えています。1stライブでは、バーチャルライバー樋口楓の在り方みたいなものを皆さんに感じ取っていただけたかなと思うのですが、今回はVR空間ならではのバーチャルライバー樋口楓を間近で観て感じていただきたいです。勉強にもなるので、他のVTuberさんのライブ配信もチケットを購入してけっこう観ているのですが。やっぱり、VRのライブとリアルのライブではけっこう違うんですよね。

──どちらが上か下かではなく、できること、できないことが違う印象です。

樋口 そうなんですよね。VRライブは「間近で見れる」ことが一番の特徴かなと思うのですが、リアルライブは「生声で伝わる」。ライブの熱量は同じくらいだけど、ベクトルが違う感じなので、それをどう吸収して皆さんに返しながら一緒に盛り上がっていけるのかが自分の中での課題です。

──初めてのライブがあれだけ盛り上がったことは、自信にもなったのでは?

樋口 どうだろう……。いや、やっぱり、自信よりも焦りにつながったかなって思います。ライブが成功したのは、私ひとりの力では全然なくて。Deroon5の皆さん、演出家さん、ライブスタッフさんとか、たくさんの方がチームとして私を引っ張ってくださったからなので。私ひとりの力では全然できてない感じがしていて。今回のVRライブの先、次にリアルのライブができる時、一人でどれだけのことを提案していけるのかな、と思ってしまいますね。

──ちなみに、樋口さんのご家族から、ライブの感想を聞いたりはしましたか?

樋口 終わった後、控え室に来てくれて。普段はあまり感情を出さない妹が「泣いたわー」と言ってくれました(笑)。弟も『命に嫌われている』について、「あんなにビシビシと伝わってくる曲、初めて聴いた」と言ってくれたりして。2人とも全然オタクじゃないし、ボカロも全然知らないような子なんですけれど、曲のメッセージ性は伝わっていて、嬉しかったです。

──家族とそういう話をする機会なんて、なかなかないですよね。

樋口 全然、話さないですね〜。普段は「昨日の夜中、配信がうるさかった」とか、愚痴を言われるような関係なので(笑)。バーチャルライバーって、普段どんな活動をしているのか、なかなか説明しづらいところもあると思っている中、二次元や配信のことに疎い妹と弟が「良かったよ」と言ってくれたのは嬉しかったです。

ライブ後、歌の技術面に関して足りないものがあると感じた
──そんな思い出深いライブがBlu-rayとして発売されたことについて(BOOTHで販売中)、率直な感想を教えてください。発売決定が発表されるまでは、「にじさんじプロジェクト」の運営会社「いちから」を応援するファンの声も多かったですが(笑)。

樋口 ほんま、ようやったなあ、って(笑)。Blu-rayを出すためには、予算や長いスパンでの計画とかも必要だったと思うので、大変だったと思うんですよ。

いちからスタッフ 大変でした!

樋口 あはは(笑)。しかも、「いちから」から初めて出るBlu-rayが私のライブだったので、本当にありがたいなと思いました。

──「KANA-DERO」のBlu-rayには、音声特典として、樋口さん、月ノさん、静さん、えるさんによるオーディオコメンタリーも収録されています。収録現場でのエピソードを聴かせてください。

樋口 最初に、どんな感じのコメンタリーにするか、4人で相談したんです。会話を盛り上げていくのか、ライブについての解説をじっくりしていくのか、「どっちにする?」って。

──アニメのオーディオコメンタリーでも、映像に合わせてしっかり解説されているものと、映像はほぼ関係なくフリートークで盛り上がるものがありますね。

樋口 そういう感じです。そうしたら、誰がどっちだったかは想像にお任せしますが、ちょうど半々に別れたんですよ。だから、実際のオーディオコメンタリーも「ここの振り付けはこんな感じだった」といった細かい話から、「ああ、歌っとるわー」みたいなガヤまで、幅広く良い感じに半々で入ってると思います(笑)。

──「KANA-DERO」の後、歌うことや音楽活動に関して、意識の変化などはありますか?

樋口 ライブが終わった時、歌の技術面に関して足りないものがあると感じたので、今はそこを向上させようと取り組んでいます。あと、先ほどもお話ししましたが、他のVTuberさんやアーティストさんの曲を聴いたり、ライブを観たりもしています。

──以前、配信で「ボイトレに行きたい」と話していましたが、実際にトレーニングは始めているのですか?

樋口 配信では、ちょっと恥ずかしくて言ってなかったんですけれど、ボイトレも始めています。始めて半年も経ってないから、効果が出ているのか、まだ自分では分からないんですけれど……。良い先生で、声を出すことの基礎から、知らないことをたくさん教えていただいています。

──6月8日には「気付いたら7時間歌ってた!!!!」というツイートが投稿されて驚きました。あの日もレッスンだったのですか?

樋口 あれは個人練習ですね。ライブに向けて、曲の練習を先生に見ていただいた後、1人でずっと歌ってました(笑)。
(丸本大輔)

(後編に続く)

≪開催概要≫

【ライブタイトル】
「Kaede Higuchi VR Live "ReStart Line"」

【スケジュール】
6月29日(土)19:00会場/19:30開演

【対応プラットフォーム】
Oculus GoOculus Quest:チケット価格5480円
ニコニコ生放送:チケット価格4500円

【公式サイト】
https://vark.co.jp/event/kaede_utako_201906/

バーチャル関西在住の女子高生バーチャルライバー樋口楓。学校では吹奏楽部に所属。歌うことが大好きで、ファンが作ったオリジナル曲を中心に、数多くの歌動画も公開している。愛称は「でろーん」