韓国軍部の元高官らが、文在寅政権の「嘘」を指摘している。韓国の青瓦台(韓国大統領府)と国防省は17日、軍・警察の警戒網に捕捉されることなく南下した北朝鮮の小型木造船が発見された場所について、東海岸の「三陟(サムチョク)港付近」と発表した。これを受け、誰もが当初は海上で発見されたものと理解した。ところが実際には、小型船は自力で港に入った状態だった。

この嘘が露呈してもなお、政府側は「(付近とは)通常の軍事用語であって、事態を矮小化したのではない」と言い逃れを続けている。

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だが、朝鮮日報(日本語版)の26日付の報道によると、元国防相や軍の元高官らはこれを揃って否定。たとえば制服組トップの合同参謀本部議長や首都防衛司令官を歴任したシン・ウォンシク氏は「漁船が三陟港付近で発見されたと言うときは、三陟港に近い海域にいた、ということを意味する。本当に三陟の埠頭にいたという意味だったなら、『三陟港一帯』という表現を使っただろう」と指摘している。

元高官だけではない。現役の軍人の中にも、文在寅政権への反発が見られる。中央日報(日本語版)は24日、「複数の軍消息筋」からの情報として、小型船が三陟港に入った当日の午前、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相らが出席した対策会議が合同参謀本部地下バンカーで開かれたと暴露した。この会議では、小型船が三陟港に接岸し、現地住民が通報したという海洋警察の状況報告が共有されていたという。

通常、軍首脳らが地下バンカーで開いた会議の内容が、外部に漏れるなどあり得ない。内容を知り得るのは一部の関係者にとどまり、軍当局がその気になれば「犯人」を突き止めるのも容易だ。ということは、中央日報の「複数の軍消息筋」は、相当なリスクを覚悟して告発を行っているということになる。

軍とは本来、設定された目標を達成するため、合理的に行動する組織だ。

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しかし韓国では、政治の理念対立や利権争いの影響を受け、軍事行政がねじ曲げられてきた。例えば昨年12月に発生した日韓「レーダー照射」問題で混乱が生じているのも、軍の情報機関である機務司令部を解体してしまったことが原因のひとつとして指摘されている。

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また、韓国の職業軍人の大多数は、保守的な政治傾向にある。過去には軍事政権下で国民に対して犯罪的行為を働いたこともあったし、近年においても保守政権下で逸脱や越権行為も見られた。

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また、文在寅政権が進める北朝鮮との対話にも、懐疑的な見方をする将校は少なくない。

つまりは一言で言って、左派の文在寅政権とそりが合わないのだ。そのような軍の性質について善し悪しを語ったところで、そういったものは一朝一夕で変わるものではない。

軍の統帥権者である文在寅大統領は、そのような現実を知った上で、政治をマネジメントする必要がある。小型船問題を巡る現状は、それが大失敗に終わる可能性を如実に示唆している。

2018年6月14日、NSC全体会議で発言する文在寅氏(韓国大統領府提供)