snail-1447233_640_e_e


 ぬらっと湿ったボディに貝殻を乗せたその姿が魅惑だったりもするカタツムリだが、そのネバネバした粘液から着想を得て、新たなる超強力接着剤が開発されたという。

 その強度は、成人男性の平均体重にすら耐えられるそうで、切手2枚分の面積に塗ってペタッと貼れば、体重87キロの人間が乗ってもはがれずに持ちこたえるほどだ。

 しかもこの接着剤、ただ強力なだけではない。簡単にはがすこともできるのだ。

―あわせて読みたい―

偶然発見された驚くべき25の科学的物質・食品・日用品など。
動物実験を経て開発された日頃よく目にする14の日用品
接着剤でくっつけるだけ。泳いでもとれないしズレないしバレないワンタッチかつら
ナメクジの粘液から内臓の止血を行う強力な接着剤が開発される(米研究)
60秒で傷を完全にふさぐ。外科手術用接着剤が開発される(国際研究)

貼ってはがせて強力な接着剤を捜しもとめて...

 もちろん、これまでにも貼ってはがせる接着剤はあった。しかし、そうしたものは基本的な接着力が弱かった。反対に強力な接着力を求めるならば、そう簡単にははがせない。これが接着剤の常識だったのだ。

 アメリカ・ペンシルバニア大学の材料科学者ヤン・シュウ氏が、強力な接着力がありながらも簡単にはがせるという、ある意味矛盾した接着剤を作れないものだろうかと頭をひねっていた。

 そしてはたと気がついたのがカタツムリだったのだ。

snail-2983235_640_e_e


カタツムリの粘液に着目


 カタツムリは乾燥から身を守るために、「エピフラム」という粘液を利用する。

 エピフラムは動き回るときにネバっとしているが、乾燥すればがっちりと固形化する性質がある。これによって殻の開口部にセロファンのような蓋をすることで、カタツムリは水分の喪失を防ぐのだ。

 しかもおあつらえなことに、そこには微細な穴が空いているために、殻の中に閉じこもっても窒息せずに済む。

iStock-491813294_e


ヒドロゲルを利用した超強力接着剤


 これをヒントに開発された接着剤は、大量の水分を含むポリマーのネットワークのような構造をしたヒドロゲルから作られた。

 ヒドロゲルは水分を含んだ状態では、接着面にあるごく小さな隙間や凹凸にも染み込むことができる。ところが乾燥して固形化しまえば、がっちりとその状態を維持し、強力な接着力を発揮する。

 だが、今度はそこに再度水分を補給して柔らかくしてあげると、ゆっくりとはがれるのだ。

iStock-970013498_e


チョウのハネを使って実験。すごい!無傷のまま


 それを証明するための実験もすごい。チョウの翅(ハネ)を接着したのだ。予想される大惨事にやめてーっ!と叫びたくなるが、水分を加えてはがしても翅の組織にはまったく傷がつかなかったという。

 ちなみに接着剤の表面は液体というよりは、薄いウエハーのようなものに覆われているそうだ。ここにはエピフラムと同じく微細な穴が並んでおり、そこから水分が出入りできる。

 空気にさらしたり、熱を加えたりすると乾いて固形化し、水をかけると再び軟化するのは、こうした構造のおかげだ。

アップグレードも検討中

 カタツムリ接着剤は、エピフラムと同じく、デコボコと荒れた表面で一番効果を発揮するが、ガラスのようなツルッとした面にも使えるという。ミクロな視点から見れば、どんな面でもデコボコしているからだ。

 なお、いくら強力とはいえ、水を使うとはがれてしまうので、当然ながら乾燥した環境でなければ使用することができない。

 この弱点を克服するために、ヤン氏は、水の代わりに熱や電気で軟化させられるような別の素材を探しているところだそうだ。

 この研究は『PNAS』に掲載された。

References:Reversible superglue proves strong enough to hold average man/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52275847.html
 

こちらもオススメ!

―昆虫・爬虫類寄生虫についての記事―

ザ・フライ。アポカリプス的終末の光景。ハエの大群が襲来したロシアの村(※ハエ大量出演中)
自宅の庭をハチが好む環境に整えてくれた住人に補助金が給付される(アメリカ・ミネソタ州) ※ハチ出演中
後続車は見た!やばそうなクモが車の中に侵入していく瞬間を。
ハワイで人間の脳に侵入する寄生虫の感染者を確認。保健局が注意喚起
窓を割って民家の台所に押し入ったのは体長3.4メートル巨大ワニ!赤ワインを割り現場は恐ろしい光景に(アメリカ)

―知るの紹介記事―

魔女術「ウイッカ」における24のシンボルの秘密の意味
O型は血を吸われやすいは本当だった。なぜ蚊に刺されやすい人と刺されにくい人がいるのか?8つの科学的理由
真っ先に何が見えた?3通りに見えるモノクロの絵。何が見えたかであなたの真の性格がわかる性格診断テスト(占い)
世界最強の料理人はホワイトハウスにいた!ムキムキの筋肉で腕を振るう(アメリカ)
情報は脳にとってお金や食べ物、麻薬のようなもの。脳の報酬系を刺激するのでやめられない(米研究)
カタツムリの粘液がヒントに。成人男性の体重にも耐えられる貼ってはがせる超強力な接着剤が開発される(米研究)