性犯罪を防止するために、大学、そして学生は何ができるのか。大学生が加害者にも被害者にもなる性暴力事件が起こる中、慶應義塾大学の学生が中心となり「キャンパスにおける性犯罪を防止するには」と題したシンポジウムが6月21日慶應義塾大学日吉キャンパスで開かれた。

相次いで報道された無罪判決、そして学生が被害にあった就活セクハラ。主催した文学部4年の谷虹陽さんはこれらに触れ、「大学は研究機関であり教育機関。性教育活動にも力を入れていくべきだと思う。とりわけ慶應のような大規模な大学は、それ相応の社会的責任も伴っている」と開催の意図を語った。

●「泣き寝入りしないで声をあげることが大事」

「性暴力の被害者は若い女性が多く、ターゲットになりやすい。性被害を受けても、それが被害だと気づかない人がたくさんいて、自分を責めている人もいる」。性犯罪被害者の支援に取り組む上谷さくら弁護士は、大学生の性被害の現状について述べた。

2019年3月、就職活動中の女子大生がOB訪問で性被害にあう「就活セクハラ」が報道された。上谷弁護士も同様の相談を受けたことがあるという。

「話が表に出るだけ、まだ良くなったのかと思う。実名や顔を出す必要はないが、泣き寝入りしないで声をあげることが大事」といい、被害にあったら弁護士や性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターへの連絡を呼びかけた。

●「啓発だけでなく実際にアクションを起こして」

学生に性的同意の大切さを広める活動をしている一般社団法人「ちゃぶ台返し女子アクション」の大澤祥子さんは、欧米の大学を中心に広がる「性的同意」の啓発活動に影響を受けていると話す。

ハーバード大学では「Our Harvard Can Do Better」と題し、ハーバード大学における性暴力被害への対応方針について、定義の主軸を変えるよう要請する運動があった。学生団体で連帯して、署名活動や法的申し立てなどを行った結果、対応方針は改正され、寮で暮らす学生に対して性的同意や性暴力について研修がおこなわれるようになったという。

大澤さんは「性的同意の大切さを訴えるだけでは変わらない。啓発だけでなく実際にアクションを起こして構造的な変化を求めていく必要がある」と話す。

また、キャンペーンが「もっといい大学になれるはず」とポジティブに訴えていることにも注目する。

「声をあげることで、皆にとってより学びやすい環境を皆で作るというもの。大学に対して『おかしい』『変えたほうがいい』ということが叩かれる風潮がある中、『声を上げることで私たちの大学をより良くしていく』というメッセージが込められていることは大事だと思います」

●「声をあげている人の安全性を守れるか」

「ツイッターでフェミニズムという言葉を言っただけで、ものすごい反応が来た。ノースリーブで話していることや日本語を間違えたことなど、1から10まで批判された」

「Voice Up Japan」の山本和奈さんは自身の経験も踏まえ、「声をあげている人の安全性を守れるか」が課題だと指摘する。

性教育や避妊について考える「#なんでないのプロジェクト」の福田和子さんも、「声をあげたときに、どんな反応を周りからもらえるのかが大事」と周囲のサポートの重要性を語る。

さらに、6月に開かれた「Women Deliver2019」において、「#MeToo」運動創設者のタラナ・バークさんが話した「声をあげてきた人が変えてきた現実もあるけど、被害を受けた時に生き残るだけでもエネルギーがいる。被害を抱えていることだけでも頑張っている」という発言を紹介。

福田さんは「声をあげることも尊いけど、あげようあげようとなると、声をあげられないという人が苦しくなっていく気もしている。そういう人も一緒に支え合える、心は繋がっているような雰囲気が作り出されてほしい」と話した。

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