◆~柳谷智宣の「デジタル四方山話」第53回~

 俳優の松重豊さんが、本人認証マークをもらえないため、TwitterInstagramアカウントを6月末で閉鎖すると宣言し、話題になっている。当然、ファンとしては驚きで、その怒りの矛先は両サービスの運営に向いている。

 そもそもTwitterは、2017年11月から認証バッジの新規リクエストを受け付けていない。本来、認証バッジは本人であることを示すものとなっているが、その運用目的から、アカウントには一定以上の影響力が求められた。その結果、認証バッジが付いているアカウントTwitterに認められたようなイメージを一般に与えるようになってしまったのだ。

 なぜ、認証バッジの新規リクエストTwitterは受け付けていないのか?

 それはヘイトスピーチを行うアカウントに認証バッジを与えていたため、Twitterそのものが炎上。TwitterのCEOやサポートアカウントは、この仕組みが混乱を生み出したことを認め、新規の認証を中止したのだ。これだけなら「単に認証の機能がなくなった」ということで済むのだが、話はこれだけでは終わらなかった。

◆認証バッジの新規リクエストは受け付けていないはずなのに…

 2019年4月3日カルロス・ゴーンさんがTwitterアカウントを開設し、「I’m getting ready to tell the truth about what’s happening. Press conference on Thursday, April 11.」(私は何が起きたか真実を話す準備をしています。記者会見4月11日木曜日です)と投稿した。(拘留されていて)インターネット接続できない状況だったはずなのに、不思議に思った人も多かっただろう。このアカウントには認証バッジが付いていた。

 さらには、2019年4月10日初音ミクの公式アカウントも認証バッジゲットしている。まあ、こちらは9年間で12万人のフォロワーを得たので、当然と言えば当然とも言える。他にも、音楽配信サービスサポートアカウントなど、今年に入ってからも複数のアカウントが認証をもらっている。

 Twitterビジネスの公式アカウントは、「リクエストの受付、および新規の付与は行なっておりませんので、何卒ご了承ください」とツイートしている。リクエストの受付中断はいいのだが、「新規の付与を行っていない」という点には、上記のような例があるのだからクエスチョンマークがつく。どちらにせよ、機能そのものはまだ現在も活きていると考えていいだろう。

 リクエストの受付中止後も、認証バッジが付いている例があるのに、自分はもらえない……。有名人の場合、時文の申請が却下されたら不満が出ても仕方がない。松重さんは2019年3月26日からTwitterInstagramを始めたばかりで、ほぼ毎日投稿してはいるもののツイート数は74、フォロワー数は6万5000。芸能人の中でそこまで多いわけではない。とは言え、ゴーンさんはフォロワーは5万で、ツイート数はなんと3。そもそも5万どころか、アカウントの開設と同時に認証バッジが付いていたのだから、不公平感は拭えない。

Instagramは認証バッジリクエストを受け付けているが…

 一方Instagramは、今でも認証バッジリクエストを自分で行える。アプリの設定から「アカウント」→「認証リクエスト」から、ユーザーネームと氏名、別の名前、カテゴリーなどを申請する。さらに、生年月日が記載された公的機関発行の写真付本人確認書類の写真も送付する必要がある。

 松重さんがInstagramで「免許証のコピーまで提出しても、本人であると認められず」と投稿したのは、この手続きをしても認証されなかったためだろう。申請が却下された場合、30日後に新たに申請を送信できるようになるのだが、そこまでして、すがりつくほどのものでもないと判断したのだろう。

 運用期間3か月、投稿71件という内容が少なすぎると判断された可能性もある。しかし、そもそも日本国内でInstagramの認証バッジリクエストできるようになったのは2018年8月から。まだ1年もたっていないので、オペレーションがこなれていないのかもしれない。

 こなれていない証拠に、Instagramヘルプには「アカウントに認証バッジを表示しなくても、本物であることを知らせる方法は他にもあります。例えば、自分の公式ウェブサイトFacebookページYouTubeTwitterアカウントなどにInstagramアカウントへのリンクを貼るという方法が考えられます」と書かれている。これは、申請を却下されてイラついている人に、火に油を注ぐようなものだ。

 残念がったファンが「本人なのはわかっているのだから気にすることはない」と言っているのが、筆者もそれでいいと思う。しかし、SNSに慣れていない有名人が、偽物のリスクや非公認アカウント運用によるブランディングへの影響を考えるのは当然だし、単に怒りを覚えるのもまた、当然だろう。

◆認証バッジなしでも利用している有名人はいっぱいいる

 SNSは、プラットフォーマーにすべてを握られており、ユーザーはそのリスクや制限を受け入れなければならない。その一方で「使うのを止める」という権利も持っている。スムーズアカウント閉鎖という対応に出るのはさすがだ。

 もちろん認証バッジなしで、TwitterInstagramを利用している有名人はたくさんいる。俳優の遠藤憲一さんのTwitterアカウントには「公式」という文字が、よゐこ濱口優さんのアカウントに「(本物)」と文字で書かれている。 Instagramでは、俳優の山田孝之さんや光石研さんなども認証バッジなしで運用している。

 180万人ものフォロワーを持つ女優の石田ゆり子さんも認証バッジを待望しているのだが、まだ獲得できていない。彼女は、猫に関する投稿だけを行うサブアカウントを持っているのだが、なんとそちらが認証バッジゲットしてしまった。2019年2月に「なんか不思議。インスタグラムの運営のかた この謎、教えてください」と投稿しているが、まだなしのつぶてのようだ。



 現在の所、TwitterInstagramも認証バッジは簡単に入手できないと考えたほうがいいだろう。両社のパートナー企業から、がっつり要請をしないと無理そうだ。あくまでファンの希望も含んでしまうのだが、松重さんには認証バッジなど気にしない、という対応を望みたい。今回の件が、幅広くニュースになったことで、松重さんの両アカウントがこれ以上ないくらい、本人のモノだという証明になっているということで、いかがだろうか。

【柳谷智宣】
お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年原価BARオープン。2年前に海底熟成ウイスキーを扱う「トゥールビヨン」を立ち上げ、現在販売中

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