神戸・三宮駅前の10車線道路を、あえて6車線に規制する社会実験が始まります。将来的には車線をさらに減らし、「人と公共交通優先」の空間にしていくそうです。

1日3万5000台が通行する幹線道路を規制

神戸市が2019年7月1日(月)から1か月間、三宮駅前の幹線道路で車線規制を実施します。工事などにともなう規制ではなく、意図的に車線数を減らす社会実験です。

対象となるのは神戸市街を東西に貫く通称「中央幹線」の一部、三宮交差点から中央区役所前交差点までの約400mで、10車線が6車線に規制されます。歩道側の車線や右折車線が一部閉鎖され、既存の直進車線の一部が左折専用や右折専用になるほか、信号はすべて矢印信号となり、右左折のタイミングも変わるそうです。

中央幹線は1日あたり3万5000台もの交通量があるとのことですが、なぜこのような実験を行うのか、神戸市の都心三宮再整備課に聞きました。

――なぜ車線を減らす実験を行うのでしょうか?

神戸市では三宮交差点を中心に、南北に交わる税関線(フラワーロード)と、東西に交わる中央幹線の一部を、人と公共交通優先の空間「三宮クロススクエア」にすることを目指しており、その一環として行います。今回は、車線減少にともなう自動車交通への影響を検証するための実験です。2025年ごろには中央幹線を10車線から6車線へ、2030年ごろには3車線へと段階的に車線を減らし、歩道空間を拡大する予定です。

――将来的に、公共交通以外のクルマを排除するということでしょうか?

もちろん、周辺商店などへの荷物配送など、三宮駅前に用事のある車両は最低限通行できるようにしますが、現状では駅前に用がないクルマも多く通過しています。この通過交通を違う路線に迂回させ、駅前の交通量を減らしていくことが目的です。今後は、そのように別路線へ交通を流す工夫もしていかなくてはなりません。

点在する6駅を「ひとつの駅に」 三宮の将来像とは

――先ほどの「三宮クロススクエア」とは、何なのでしょうか?

三宮周辺に乗り入れている鉄道6路線(JR、阪急、阪神、ポートライナー神戸市営地下鉄西神・山手線、同海岸線)それぞれの駅を、ひとつの大きな駅と捉えた空間です。乗り換えの動線が複雑な6つの駅を、相互に地上レベルで乗り換えられるようにするほか、中央区役所付近に新たなバスターミナルを整備し、点在しているバス停もそこへ集約する予定です。

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2019年6月現在の三宮交差点付近では、鉄道やバスを乗り継ぐ人の動線が複雑に絡み合い、かつバス停も路上にあるため、バスが交通を阻害しているとのこと。歩道空間の拡大とバスターミナルの整備によって、これを整理する狙いがあるそうです。

「駅前の交通を集約し、公共交通の利便性を高めつつ混雑の解消につなげるのは、高齢化社会を見据えたこれからの流れです」(神戸市 都心三宮再整備課)

国土交通省道路局によると、このような動きは全国にあるといい、その代表として2016年に同省主導で整備した新宿駅南口の交通ターミナル「バスタ新宿」を挙げます。新宿駅周辺に点在していた19ものバス停を1か所に集約したものですが、三宮の新たなバスターミナル整備も、国土交通省が関与しています。

「神戸では、海側で延伸事業が進められている阪神高速湾岸線などが、中央幹線の迂回路となるでしょう。神戸に限らず、大きな駅付近に用のない交通に、なるべく街の外側を通ってもらい、都心部の交通量を減らすことが、交通事故など社会課題の解決にもつながります」(国土交通省道路局)

神戸市では今回の実験を通じ、中央幹線を6車線にしても影響が小さいと確認され次第、速やかに歩道空間の拡大事業に着手したいとしています。ただ、最終的に車線数をどこまで減らすかは、改めて検証するとのこと。また今後、三宮交差点を南北に交わる税関線の車線減少についても検討するそうです。

三宮交差点。左右に交わる中央幹線のうち、ここから約400m東(写真左側)までの区間で車線規制が実施される(画像:loco3/123RF)。