はじめまして。精神科医のさくらです。

私は自身のネガティブな経験と精神科医としての知識を活かし、病気の有無に関わらず、誰もが今より少しでも生きやすいヒントを手にしてほしいと願って、Twitter・ブログでの情報発信をしています。

「どうせ私なんか……」
「どうせ何をしたって……」

このような自己を否定するような言葉を耳にすることはありませんか?

もしくは、あなた自身がよく口にしてしまっていませんか?

幸せに生きるためのベースとなるのは、勉強をすることでも、キレイに着飾ることでも、高収入を得ることでもなく「自分を肯定的にとらえ、自分に思いやりを持つこと」です。

かつて自分を否定しがちだった自分自身を思い出しながら「自己否定」について解説します。

■自己否定してしまう人の5つの特徴

まず、自己否定してしまう人にはどんな特徴があるのか見ていきましょう。

◇1.自信がない、先行きへの不安が強い

「どうせ私にはできない」
「この先にはきっと困難が待ち受けている」

などと考えがちで、自分に自信を持てず、未来への不安が大きいです。そのため、新しいことへの挑戦や、困難な状況に立ち向かうことが難しくなります。

◇2.人と比べる、他者基準の生き方

「Aさんは交友関係が広い。それに比べて私は……」
「同期のBさんはすでに上司に認められているのに私は……」

などと考え、他者と自分を比べて劣等感を抱きます。他人軸で生きているため、自己評価は他者に依存して不安定になりがちです。

◇3.人に合わせていないと不安

「みんながそう言うなら私もそうしよう」
「私はこう思うけれど、主張するのが怖い」

などと考え、自分より周囲の人の意向を優先します。自分の考えで行動して失敗が起こらないか、他者から悪い評価を受けないか不安で、周囲に合わせがちです。

◇4.否定的なモノの見方

「あんなことを言うなんて、Cさんは性格が悪い」
「電車の遅延で遅刻。今日は最悪な日」

などと考え、自分自身だけでなく、他者や、身の回りの出来事、かけられた言葉、何事も否定的に受け止める傾向があります。

◇5.人間関係の困難さ

「Dさんはほかの人と話すときと私と話すときで態度がちがう。バカにされている」
「Eさんの言葉にはトゲがある。嫌われている」

など、他者のささいな表情、言葉、態度を否定性の強いメッセージとして受け止める傾向があり、対人関係が不安定になりがちです。

■自己を否定してしまう4つの理由

誰しも望んで自己否定的な考えや振る舞いをしているわけではありません。

人はどうして、自分自身を否定してしまうのでしょうか?

いくつかの側面からその理由を考えてみます。

◇1.育ってきた家庭環境による影響

親などの養育者から、理解してもらえない、何をしても褒められない、過保護、過干渉、愛情は条件付き、などの環境で育つと自己否定感が強まります。

身体的・精神的虐待や、養育の放棄であるネグレクトは当然影響します。

◇2.学校教育による影響

学校の環境も家庭と同様です。

子どもの欠点をあげつらう、子どもの感情に沿わない、子ども同士を比べて優劣をつける、などの対応は悪影響です。

日本の横並びを理想とする教育も、集団から突出する子どもを否定しがちです。

◇3.失敗や挫折の経験による影響

大人になってからも、就活や仕事、恋愛などでの挫折体験から自己否定してしまう癖が強まります。

1や2により、元々自己否定をする傾向にある人は、いっそう自己否定が強まりやすいでしょう。

◇4.女性であることによる影響

生物学的な性差により、男性に比べて女性はキャリアやチャンスを諦めざるを得ないなど、不遇な経験をしがちです(もちろん、男性の方が大変である側面もあります)。

また、女性は男性より家族の心理に敏感であり、1の家庭環境の影響も女性のほうが受けやすい傾向があります。

自身を振り返ってみると、家庭環境や、試験の得点で評価された教育からの影響に、研修医時代の挫折体験が加わり、自己否定感はピークとなり、長く尾を引きました。

■自己否定を克服する5つのヒント

過去の私がそうでしたが、自己を否定してしまう癖を克服したい、もしくは少しでも和らげたいと思っている人は多いでしょう。

「どうせ私なんか変わることなんてできない」

と、今も自己否定的な言葉をつぶやいたあなたに向けて、いくつかのヒントをまとめました。

◇1.そのままの自分を受け入れ、長所に目を向ける

まずは逆説的ですが、自己否定的な自分をそのままで認めてあげましょう。「自己否定的な自分はダメだ」と考えることがまた自己を否定しています。

自己否定的な自分もそのままでOKとし、ネガティブな側面ばかりに注目していることを自覚し、自分の長所に目を向けましょう。

長所が1つもない人はいません。長所が見えなくなっているだけです。

どうしても1人では考えつかないなら、誰かの協力を得て、長所に注目していきましょう。私も家族や同僚など、他者の言葉を頼りに自分の長所を拾い上げていきました。

◇2.「今日のよかったこと3つ」を記録する

幼いころは、「好きな絵本を読んだ」「お花がキレイだった」など、大人になった今は「何でもない」と思うようなことを、特別な、素晴らしいことと感じていましたよね?

当時のように、日常の中にある「よかったこと」に注目し、一日の終わりに「今日のよかったこと3つ」を記録しましょう。

日記帳でもTwitterでも、やりやすい方法でトライしましょう。

まずは1つからでOKです。私も寝る前の「よかったことツイート」を習慣にしていますが、次第に5つでも6つでも挙げられるようになりますよ。

◇3.使う言葉を選ぶ

人は自分の発した言葉に影響されます。ネガティブな言葉を発したとき、それを一番近くで聞くのは自分自身ですね。自己否定的な言葉を頻繁に使っていると、何に対してもそのような言葉が浮かぶようになってしまいます。

はじめは本意でなくてもいいので、自分を否定しない言葉を選んで口にしてみましょう。

「また仕事でミスをした」と言いたくなるところを「仕事の改善点を探すきっかけになった」などと言い換えてみましょう。

私自身も自虐的なキャラを自ら作り、自己否定的な言葉を多用していました。今は普段の会話でも、Twitterやブログなどの文字上でも、自己否定的な言葉は使わず、過剰な謙遜も控えるよう意識しています。

◇4.付き合う人を選ぶ

「朱に交われば赤くなる」と言いますが、人は周囲にいる人たちの性質に影響されるものです。

今ある人間関係を少し変えてみましょう。

たとえば、自己肯定感の高い、理想とする人がいるなら、少し一緒に過ごせるように働きかけてみる、または、趣味などを通じた新しい人間関係に身をおく、などです。

自己否定的な人と会う回数を減らすだけでもOKです。

私自身も、今までなら参加しなかったような場に出向き、自分もそうありたいと思う人たちと過ごす時間を作っています。ネット上の対人交流も苦手でしたが、今はSNSでも志を持つ人たちとつながれています。

◇5.セルフコンパッションを身につける

「セルフコンパッション」は、心理学者のクリスティーン・ネフ氏が提唱した「自分への思いやり」などと訳される概念で、以下の3つの要素から成ります。

・自分が傷つき、苦しんでいることをありのままに認識する

・今ある苦難は誰しも経験することだと捉え、孤独感を和らげる

・大事な親友が同じ状況であったらこうする、というような温かな声がけや対処を自身に対して行う

今回は、具体的なテクニックのひとつ、「コンフォート・ジェスチャー」を紹介します。

「胸に手を当てて、深呼吸する」「自分自身を包むようにハグする」「片手で片手を優しくなでる」

など、ストレスや困難を感じた際に、自分の気持ちが落ち着くような、前もって決めておいたジェスチャーをするだけです。

自己否定をしてしまう人にとって、自分に思いやりの心を持って接することは、最初は違和感が強いかもしれませんが、一度試してみてください。

私自身はストレスを感じたときはもちろん、寝る前にも、胸とお腹に両手の平を当てながら呼吸法を使っています。自身の体に触れることで癒される感覚が心地よいですよ。

すべては自分自身で変えていける

否定的な養育環境や挫折体験が自己否定を強める原因にはなりますが、すべての人がそうならないことも事実です。

一般的にはマイナスに感じられることを糧にして、むやみに自己否定することなく、自分らしく生きている人もいます(もちろん、その過程には苦悩もあったと思いますが)。

私自身も過去にはいろいろなことがあり、数年前まで「現状維持の人生を送れればそれでいい」と多くのことを諦めていました。

「人はどんな体験も活かすことができるし、いつからでも変わっていける」

と、今は心から思っています。

すべては自身で「選べること」「変えていけること」です。

前述の自己否定を軽減させるヒント

これらは行動してみて初めて本当の理解が得られるものです。

いくら頭の中でこうなりたいとイメージしても、行動することでしか現実のあなたやその環境に変化はもたらされません。

まずはひとつのヒントから試してみてください。スモールステップならぬ、ベビーステップで、わずかでいいので変化を起こしてほしいです。

行動の先にはきっと、自己否定していたあなたを懐かしく思う、笑顔に満ちたあなたがいるはずです。

(精神科医さくら

※画像はイメージです

「自己否定」してしまう人に共通する5つの特徴