仕事をしていると「私のせいじゃないです」と思わず言いそうになる瞬間があります。

「課長がやれって言ったのに!」
「そのやり方でいいって言ったのはあなたでは?」
「やらなくていいって言いましたよね?」

など、上位者や先輩、同僚からの指示や伝聞で実行したことにケチがついたときは、「自分がきちんと確認しなかったとはいえ、私だけのせいなの?」と頭を抱えたくなります。

しかし、世の中には常に「それ私のせいじゃないです」「私は○○さんに××しろって言われただけです」「このマニュアルがわかりにくいせいです」と決して自分の非を認めず、他人や環境など自分以外のせいにして逃げまわる人がいます。

そんな「責任転嫁する人」には誰もが困りますが、具体的にどう困るのかという事例を交えながら、責任転嫁する人の特徴、心理、対応方法を考えてみましょう。

■職場で責任転嫁する人がいると困ること

責任転嫁とは、そもそも自分の責任だったものを他人に押しつけるということです。

「嫁」には(罪や責任を)人になすりつけるという意味があります。

責任転嫁をする人は、自分のミスを人だけでなく環境や道具や天気など、ありとあらゆるもののせいにして逃げようとします。

職場において、ミスは起こり得るもの。

仕事において誰でもミスや失敗をする可能性はあり、誰かひとりがコケても仕事がストップしないように設計されています(緊急案件など例外はあります)。

とはいえ、ミスが起これば、リカバリーのために誰かが迷惑を被ったり、実際に損失が発生したりする場合もあります。

「謝ればいい」というわけではありませんが、やらかしたことに関しての謝罪は重要です。

しかし、責任転嫁する人は、実際にミスをしたのは自分なのに「教え方が悪かった、まちがっていた」などと人のせいにしたり、「環境のせい」「PCのせい」「天気のせい」などとありとあらゆるものに責任を押しつけたりして逃げます。

傍目から見て「無理がある」言い訳をするのも堂々たるものです。

責任を自分で認めない人がいるせいで起こる困りごとは大きく2つ。

1.責任を押しつけられることにより、不快な思いをする人が出る
2.ミスの原因を正しく把握できず、再発防止策を立てられない

そして、これらが続くと「第三者のミスの責任を被ることでの職場への信頼感の低下」と「ミスに対する適切な対処がされないことでの職場全体の仕事の質の低下」が起こり、生産性が下がってしまいます。

最悪の場合、「責任転嫁する人」のせいで人材が流出したり、大きな損害がもたらされたりすることになりかねません。

■なぜ責任転嫁するの? 責任転嫁する人の心理

責任転嫁する人は、なぜあらゆる理由を駆使して責任逃れするのでしょうか?

それには大きく2つのパターンがあります。

1.自分がミスをしたと思っておらず、本気で他責にしている人
2.自分のミスは自覚があるが、隠蔽するために他人になすりつける人

1に関しては病気の域ですが、存在します。

このタイプの人は、たとえ自分が投げたボールが誰かに当たって怪我をした場合でも自分が悪いとは思わず、「そんなところを歩いている奴が悪い」などと俺理論を展開して責任逃れをします。

本気な分性質が悪く、論理的にも感情的にもハチャメチャなため、仕事の現場にいると非常につらいです。

2に関しては、1とはちがい「自分が原因だ」という認知はできます。

しかし、そのミスを認めることの心理的ハードルが鬼のように高いタイプです。

なぜかというと「失敗を認めたら自分の価値が下がる」と考えているからです。

どんな心理なのか、もう少し細かく特徴を見てみましょう。

◇(1)謝ったら負けだと思っている

「自分がミスしたら謝りましょう」なんて、幼稚園生でもできることができないのは、謝ったら負けだと思っているからです。

責任転嫁する人は「謝る、すなわち死」くらいに謝罪に対しての心理的ハードルが高いのです。

そのため、誰かを身代わりにして、責任を取ることによる謝罪を回避しようとするのです。

◇(2)自分が損をするのが許せない

責任転嫁する人は「自分が失敗の責任を取る」ということは「損だ」と考えます。

失敗やミスを認めてしまうと、自分の評価が下がると考えるためです。

評価や実績に×がつくことが耐えられないために、責任転嫁して事実を歪曲しようとするのです。

◇(3)目先の利益ばかりを気にしている

誰かに責任を押しつければ、短期的に自分のミスや失敗を指摘されることから逃げられます。

責任転嫁する人にとっては、その目先の「怒られない」「矢面に立たされない」ということが何より大切なのです。

上記のようなことを繰り返せば、長期的には「責任を取らない人間だ」という悪評が立ち、マイナスになるのですが、短絡的視点で物事を判断してしまうのです。

◇(4)完璧主義で自分の能力を過信している

責任転換する人は、実際の自分よりも優れた自己像を持っており、「優秀な自分が失敗した」という現実を受け入れられません。

もちろん自己像は虚像のため、少しの失敗や挫折でヒビが入る脆いものです。

押しつけられた側からしたら迷惑以外の何ものでもありませんが、この脆弱な「自信」を失わないために他人に責任を押しつけるのです。

◇(5)自己愛が強く利己的である

自分が得をするために他人を利用し、傷つけてもよいという考え方は自己愛が強い人間の特徴です。

自己愛が強い人は、他人に「認められたい」という承認欲求が強く、優れた人間であることを他者に知らしめたいと常日ごろから考えています。

ミスを認めることは「他人につけ入る隙を与える」「自分が優れていないと証明する」と捉えるため、全力で回避しようとします。

責任転嫁する人への対処法

ぶっちゃけた話、「責任転嫁する人」は近くにいてほしくないものですが、職場にいる場合は賢く対応していく必要が出てきます。

責任転嫁するやっかいな人への対処のポイントを3つお伝えします。

◇(1)距離を取る

責任転嫁する人というのは、もはや細胞レベルで他人にミスや責任を押しつけてくるので、仮に指摘したからといってすぐに止めてくれるはずもありません。

また、下手に指摘すると逆上する可能性すらあります。

そのため、一番いいのは「近づかない」「距離を取る」という物理遮断です。

上司が問題ない人なのであれば、「苦手なのであまり業務を一緒にしたくない」などとやんわり打診するのも手です。

◇(2)エビデンスを集める

離れられるのが一番ですが、同じ職場のメンバーであると、関わらざるを得ない場合はあります。

責任転嫁する人は、小さいことから大きなことまですべて人のせいにしていくスタイルです。

そのため、口頭確認の内容は必ずメールでも送付し、やりとりのメールはすべて保存しましょう。

「言われていません」「知りませんでした」などという言い逃れができないよう、きちんと武装することが重要です。

◇(3)被害者を集める

(2)と共に実施したいのが「同じように責任転嫁された経験がある人」を集めることです。

ひとりで訴えるよりも、大人数で訴えたほうが力を発揮できるからです。

同じようにミスや失敗を押しつけられた人のケースを聞くことで、パターンも見えてくるため、対策も立てやすくなります。

■ 正直避けたい「責任転嫁する人」

責任転嫁する人は、さまざまな理由から「誰かに押しつけたほうが自分にとってプラスだ」と考えて行動しています。

これらの思考や行動の癖は一朝一夕で直るものではありません。

直属の後輩など、面倒を見なくてはならない人であれば、「ちょっとしたミスや失敗をしたからといって、会社はクビにならないし、断罪されもしない」「何かあったら早く報告してリカバリー方法を考えることのほうが大事」と根気強く教える必要があります。

しかし、正直そうでないなら、付き合うより逃げる方法を考えたほうが建設的です。

物理遮断して近づかないか、倍返しができるようにエビデンスを集めるなどして心の平穏を保ちましょう。

ぱぴこ

※画像はイメージです

「人のせいにする同僚」への対処法