乗りものの省エネルギー化技術のひとつに「回生ブレーキ」があります。ハイブリッド車の普及で耳にすることが増えた言葉ですが、鉄道では古くからある技術。かつては「あるもの」がきつい路線の車両で採用されていました。

原理は「理科の実験」と「自転車のライト」

ハイブリッド自動車の普及とともに、「回生ブレーキ」という言葉をよく聞くようになりました。

回生ブレーキは、電気モーターを発電機として動かすことで、止まろうとする力を大きくするブレーキです。自動車ではハイブリッド車の登場で近年普及したブレーキですが、鉄道では電車や電気機関車を中心に、古くから普及しています。

小さなモーターと豆電球をつなぎ、手を使ってモーターの回転軸を回転させると豆電球が点灯するという実験を、小学校の理科の授業で体験した人は多いでしょう。モーターは電力を供給することで回転しますが、逆に別の力でモーターを回転させると発電機になり、電力を生み出すことができるのです。

また、自転車の発電機(リムダイナモ)は、発電機の回転部分をタイヤに添わせることで回転し、ライトを点灯させるための電力を発生させますが、このときペダルがちょっと重くなったような感じがします。これはタイヤの回転エネルギーの一部が発電機によって電気エネルギーに変わったことでタイヤの回転する力が弱まり、結果的にブレーキをかけた状態になるわけです。

回生ブレーキは、これらの原理を応用したものです。モーターを使って走る乗りものの場合、モーターへの電力の供給を止めても、しばらくは惰性で車輪が回転し続けますが、この回転によってモーターを発電機として動かすことが可能に。回転エネルギーを電気エネルギーに変換して車輪の外に出すことで、ブレーキがかかります。

ただし、発電するだけなら「発電ブレーキ」といいます。回生ブレーキは、発電した電力を「再利用」するもの。たとえば、線路の上にある電線(架線)に発電した電力を戻し、周辺を走るほかの電車や電気機関車モーターで消費したり、バッテリーに充電して使ったりします。

これにより、電力会社から購入する電力の量を減らすことができ、電気代の節約にもなるわけです。

当初の目的は「省エネ化」ではなかった

回生ブレーキの歴史は古く、日本の鉄道では1928(昭和3)年にデビューした高野山電気鉄道(現在の南海電鉄高野線)の100形電車で、初めて採用されました。国鉄は1935(昭和10)年製のEF11形電気機関車回生ブレーキを初めて導入。戦後の1951(昭和26)年にも、回生ブレーキを本格採用したEF16形電気機関車デビューしています。

これらの車両は省エネ化が目的ではなく、山岳地帯に敷かれた急勾配の線路を走るため、回生ブレーキを採用しました。

摩擦材などを押しつけて車輪の回転を抑えるブレーキは、使っているうちにすり減り、メンテナンスの手間がかかります。一方で回生ブレーキは摩擦材を使わないため、特に強いブレーキをかけることが多い急勾配では、大きなメリットがあるのです。

1960年代以降は、消費電力の削減を目的に回生ブレーキを導入した電車が登場。1968(昭和43)年から製造された営団地下鉄(現在の東京メトロ千代田線の6000系電車は、回生ブレーキなど電力を効率的に使える技術を採用したことで、従来の車両に比べて消費電力を2割ほど節約できたといいます。

さらに、1970年代には石油ショックを機に電車の省エネルギー化が進み、国鉄でも回生ブレーキを採用した通勤形電車の201系が1979(昭和54)年にデビューしました。いまでは多くの電車に回生ブレーキが導入されています。

また、近年はJR東日本のGV-E400系など、ハイブリッド方式や電気式のディーゼルカーなどでも回生ブレーキを採用する例が増えました。自動車ハイブリッド車と同様、回生ブレーキにより発生した電力をバッテリーに充電し、あとで加速するときの電力として使います。

【写真】回生ブレーキ付きの国鉄EF16形電気機関車

回生ブレーキなど「省エネ化」の技術が多数採用された東京メトロ6000系電車(2018年12月、草町義和撮影)。