1987年アメリカ・88分
監督・脚本/カーク・アレックス
出演/キム・マッカミー、チャックエリス、ミッチ・ロジャースほか
原題『LUNCHMEAT
ビデオ発売 徳間コミュニケーションズ(廃盤)


 この夏、梅雨明け気分を憂鬱に引き戻すような映画が日本に上陸する。1981年に世界を震撼させた「パリ人肉事件」のドキュメンタリー映画『カニバ/パリ人肉事件38年目の真実』(米仏合作)だ。

パリ人肉事件」とは、1981年にパリの大学院に留学していた佐川一政(当時32歳)が、オランダ人の女性留学生(当時25歳)を銃殺、屍姦後に死体を解体してその一部を食べ逮捕された事件。当時の加害者は身長152センチ、体重35キロ。「こんな小柄な男が!?」と、その容貌も世間に大きな衝撃を与えた。

 そんな佐川が顔を出して心境を語る『カニバ』なのだが、日本では全配給会社に買付けを拒否され、人気ウェブサイトTOCANAが配給するまで公開に2年を要した。ということで『カニバ』日本解禁を祝し、誰にも見向きもされなかった未DVD化の人食い映画をサルベージしたい。

 唯一鑑賞できたVHSビデオには「一度食べたら忘れられない肉がある...。人の肉はマズイって誰が言ったの...?」というセンスのないキャッチコピー。監督も俳優も知らない人ばかりだ。


 カリフォルニアの山中を、オーバーオールを着た巨漢ベニーが生きたニワトリを小脇に抱えて走っている。それを追いかけて捕まえ、家に戻すベニーの兄2人と親父。親父はベニーを鞭でビシバシ叩いて首に縄を掛ける。庭に犬のように繋がれたベニーは、持っていたニワトリを生で食い始める(汗)。食肉業者の彼らは、『悪魔のいけにえ』など70年~80年代ホラー映画でよく見る、人里離れた郊外で暮らす頭のイカレタ一家だ。

 その頃、ロサンゼルスから男女6名の若者がオシャレな赤いワゴン車に乗り、山の別荘へと向かっていた。彼らは山の麓にあるガソリンスタンドへ寄り、並びに建つ「美味しいハンバーガー屋」という店で一休み。そこへ食肉業者の長男と次男、エルウッドとハーリーがトラックで乗り付ける。店に肉を卸した兄弟は「美味しいハンバーガーをムシャムシャ頬張る若者たちの口元を、物陰から意味深にジイ~ッと見つめている......。

 兄弟は山に先回りしてニセの標識を置き、自分たちのテリトリーに若者たちを迷い込ませる。まんまと誘導された赤いワゴン車の前方に男が倒れている。運転していたエディが車を降りて近寄ると、いきなり起き上がって襲いかかる男は巨漢ベニー! ベニーは刃物でエディをメッタ刺しにして、その喉を素手で切り裂き食道を引っ張り出して食う

 阿鼻叫喚のなか兄2人も現れ、ハーリーは斧でパンク女子の首をすっ飛ばす。エルウッドはツルハシをブン回してフランク主人公)の左足に重傷を負わすが、若者たちは必死に抵抗して何とか逃げ出す。そこへ親父がトラックで現れ、2体の死体を解体して黒いビニール袋に詰め込む。一家は森に入った人間をバラして、食肉として町に卸していたのだ。

 生き残った4人は主人公フランク、別荘を持つドラ息子のケアリー、殺されたエディの彼女スー、ヒロインロキシー。3人目の犠牲者はスーで、親父に鉈でメッタ斬りにされる(腕の動きだけ映し、刃物が刺さるシーンは見せない)。ケアリーはエルウッドのツルハシを奪って返り討ちにするが(そのシーンも省かれる)、怒り狂った親父に殺され4人目の犠牲者に。喉にツルハシが刺さって死んでいるエルウッドを見た親父は、ケアリーの死体に鉈を何度も振り下ろす(同上、シーンなし)。

 2人だけになった生き残りのフランクロキシーを、「奴らが幹線道路に出る前に片付けるんだ!」と親父。これにフランクはエルウッドの死体からツルハシを抜き、ハーリーをメッタ刺し(シーンなし)にして逆襲する。とにかくメッタ刺しが多い映画だ。

 一方、親父は一家のトラックの下に逃げ込んだロキシーを襲撃。そこへフランクが「あんたプレゼントだ」とハーリーの生首を親父に投げつけ、倒れたところをナイフでメッタ刺し(シーンなし)。トラックの下を覗くと、ロキシーは恐怖で笑いながら半狂乱になっている。助け出そうとするフランクの背後で、瀕死の親父がガッツで立ち上がる。フランクは後頭部を石で殴られダウン。そこへニワトリの入った鳥籠を下げたベニーが現れて万事休す!

 親父に「ドドメを刺せ!」と命令されたベニーは、長いスコップを手にバッコンバッコン、メッタ打ち(シーンなし)。散々叩いたベニーはスコップの先でグリグリ! フランクの首に当てて切断しようとしているらしい。「そこも見せないのか!」とストレス爆発していると、カメラがスーっとベニーの足元へ移動。「わっ!」......そこにはフランクではなく親父! いつも鞭で打たれ家畜並みの扱いを受けていたベニーは、弱っている親父を見て日頃の恨みを晴らしたのだ。

 この隙にフランクロキシーは命からがら逃走し、ついに幹線道路へ出る。その後を追いかける鳥籠を持ったベニー。この状況に数台の車が通りかかるが、避けて誰も助けてくれない。そりゃそうだ。鳥籠持ったアブナイ巨漢を見たら、誰だって関わり合いたくない。2人は陽の傾いた街道をひたすら走って逃げる......完。


 筆者は世間の人が「つまらない」「時間のムダ」と評する作品の「つまらなさ」を楽しむ口なのだが、この作品は心底つまらなかった(笑)。人生のワースト映画といっても過言ではない。『カニバ/パリ人肉事件38年目の真実』を観て口直しをしようっと。

(文/天野ミチヒロ)

『カニバルズ』※ビデオ廃番