年代で振り返る企画というのは面白いものです。あの時何があったのかといった縦のラインの思考とともに、横に広げることで同時代的な何かを導き出すことができるからです。


興味がバラバラ

なぜそうした思考が面白いのかと言えば、そもそも人の興味にはばらつきがある点ですね。芸能界のアイドルに興味がある人もいれば、プロ野球に興味がある人もいます。そうした幅広い分野の世界をひとつに横の視点でつなぐことで見えてくるものがあります。さらに現在の見地から縦糸を通すことで、縦横の思考があざやかに見えてくるのです。

何があるのか?

南信長による『1979年の奇跡 ガンダムYMO村上春樹』(文春新書) は、アニメーションであるガンダム、音楽のYMO、そして文学の村上春樹に着目したものです。これら3つのトピックに共通するものはいずれもサブカルチャー的な存在であり、さらに若者文化、いわゆるユースカルチャーに属する話であると言えるでしょう。さらにこれらの話題は、のちの文化、トピックに多大な影響もおよぼしました。ロボットアニメのはじまりとしてのガンダムテクノポップのはじまりとしてのYMO、身辺雑記のような文学のはじまりとしての村上春樹といったことが言えるわけですね。

なぜこの年なのか?

なぜこの年であったのか。著者が1964年生まれであるため、多感な時期を過ごしていたということがあげられるでしょう。やはり若い世代の記憶というのはいつまでも残り続けるものです。それをあとになって、あのときはこういう時代であったといった振り返りをするのは重要でもあるでしょう。もちろん、直接この世代をリアルタイムで知らない世代であっても、それを追体験できるような楽しみがこうした本にはあります。ただ事実を並べるだけではなく、ひとつの過去の思い出を反芻する視点も鮮やかです。