実話をもとに書かれたというグリム童話の「ハーメルンの笛吹き男」をご存じだろうか。ある男がドイツハーメルンの街に大量発生したネズミを笛を吹いて川まで誘い出し、一匹残らず退治する。このたびその笛吹き男を思い起こさせるような“サクソフォンサックス)吹き男”が現れ、SNSに旋風を巻き起こしている。

米オレゴン州ヤムヒル郡在住のリック・ハーマンさん(Rick Herrmann、53)がサックスを演奏するようになったのは、今から7か月前のことだった。飼い犬であるラブラドール・レトリバーのパイパーは、リックさんが地下室に籠ってサックスを弾き始めると途端に機嫌が悪くなって呻き吠えたが、リックさんはある日、犬がダメなら牛にサックスを聞かせてみようと思い立った。SNSで多くの人が動物に音楽を聴かせる動画を投稿していることや、妻の応援もあってリックさんは早速行動を起こした。

先月25日、リックさんは茶色の乳牛が放牧されている牧場のフェンスの前に立ち、「初のライブ・オーディションだよ」とジョークを飛ばすとスティーヴィー・ワンダーの『Isn’t She Lovely』、そしてジョージ・マイケルの『Careless Whisper』などを弾き始めた。

すると遠くで草を食べていた牛たちが、リックさんが奏でる音に反応して身体を起こし、のっしのっしと近づいて来た。最近になってサックスのレッスンを受け始めたというリックさんの演奏は決してスムーズとは言い難いが、フェンス越しの牛の数はどんどん増えていった。そして大勢の観客を前にしたリックさんの演奏も、次第に軽やかになっていく。

その後、娘のエリンさんがその時の動画をTwitterに投稿すると、視聴回数は瞬く間に1100万ビューを超えた。そのうえサックス奏者として人気のケニー・Gも「これは素晴らしい! 何事もとりあえず始めることが肝心なんだ」とリツイートするなど、リックさんを仰天させる事態となった。

リックさんは、地元メディア『The Oregonian』のインタビューに「私は米のサックス奏者ブーツランドルフ氏にインスパイアされて育ちました。いつか時間ができたら、自分もサックス弾いてみたいとずっと思っていたのです。それでも『いつか、いつか』と長い間先延ばしにしていたのですが、7か月前に思い切ってサックスを手に入れました。今では毎日30分の練習を欠かせません」と明かした。

なお、オレゴン州立大学の酪農専門家であるジェニファー・クラックシャンクさんは「牛はとても好奇心が強く、目新しいものが大好きです。牧場の隅に立ってサックスを吹く男性なんてあまりいませんから、牛たちはリックさんの音楽に惹かれて集まったというより、物珍しさが先立ったということでしょうね」と専門家ならではの分析をしている。

さて、先に紹介したハーメルンの笛吹き男の話だが、男はネズミを退治した報酬が支払われなかったことから最後は笛で街の子供たちを集めて連れ去ってしまう。一方でリックさんによる“サックス吹き男”だが、動画の最後はガッツポーズで決めており、こちらはハッピーエンドとなっている。

幼い頃から心惹かれたサックスの演奏を楽しんでいる様子のリックさん。この調子で行けば数年後にはケニー・Gに「素晴らしい! 継続は力なり」と再度コメントしてもらえるのではないだろうか。

ちなみに好奇心が強い動物といえば犬で、2年前には、日本の民話「花咲かじいさん」のように、裏庭からとんでもない“お宝”を見つけた犬が話題になった。

画像は『FOX13 Memphis 2019年7月2日付「Oregon man serenades cows as he plays ‘Careless Whisper’ from his saxophone」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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