とんかつ弁当

『味の手帖』取締役編集顧問で、タベアルキストのマッキー牧元氏。その食へのこだわりは、出張や旅行の楽しみ「駅弁」にも及ぶ。マッキー氏が行う「弁当勝負」とは何か。本当にうまい駅弁はどれなのか。連載第2回のテーマは「とんかつ弁当」だ。

 

■品川駅でのチョイス

頭の中で悪魔が囁いた。 「ナニを迷っている。お前の役目はお前自身がよくわかっているはずだ」。 品川駅で駅弁を買うなら選択肢は二つしかない。 『てとて』の魚をおかずにした弁当か、崎陽軒である。

しかし今日は、「こだわりのとんかつ弁当」を見つけてしまった。 私は食べ歩き人生で多くの教訓を得ている。

 

(1) 「こだわり」と自ら名乗るものは、大抵こだわっていない。

 

(2) 冷えたとんかつは、とんかつではない(カツサンドは別である)。

 

 

■まずメーカーを確認

それなのに、ああそれなのに、悪魔がそそのかすですよ。 皆さんご存知のように、私は新幹線で隣に座った見ず知らずの人と、「弁当勝負」を挑まなくてはいけない。 それなのに悪魔がそそのかすのですよ。

思わず聞いた 「これ、メーカーはどこですか?」。 「大増」です。 「ください」。迷わず購入した。 メーカーがNREパッセンジャーサービスなら購入しないぞと決めていたが、NRE大増であるなら買おう。こうして追い込まれた訳である。

千円。 千円もあれば『いちかつ』や『池上燕楽』のランチとんかつも食べられる。 しかあえて乏しい結果が予想される「こだわりのとんかつ弁当」選び、投資する私は、えらい。

悪魔が指摘するように、私の役目は世間の毒味役であり、味の水先案内人であるから、買わざるを得ない。 という屁理屈をつけて、自分を納得させた。

■とんかつは偉大

とんかつ弁当

とんかつは4切れ。百数十グラムか。いつものように何もつけずに、齧ってみた。 当然衣のカリッとした食感はない。 しかし香ばしいのである。

肉はもちろん冷えきり、堅くなり、肉汁は忘却の彼方へ置き去られ、かつて豚肉であったという気配は、微かに残すのみだが、この衣の香ばしさで食べさせるのである。

ううむ。改めてとんかつという料理の偉大さに、感心をした。 ソースをかけ、蓋に絞り出した芥子につけて食べる。 うん、これならご飯が進む。 また不思議なことに、固いことによって、より肉感が増すのである。

「柔らかい」言う常套句を封じられたグルメレポーターが食べたなら、なんと言うのだろうか。 さて隣人である。 おおっ、鶏サラダである。ドレッシングをかけムシャムシャ食べ始めた。

 

■マッキー氏「弁当勝負」の結果は…

これなら「勝てる」と思っていると、袋から炭水化物を取り出した。 「とんかつドック」である。 ああ、かぶっているではないか。 同じ冷えたカツなら、こちらのほうが、量、質、味のバリエーションともに上だぞ。えへん。

とんかつドック食べ終えると次に、鮭わかめにぎりを取り出したが、それを見て勝利を確信した。 今日は「こだわりのとんかつ弁当」で勝利。 いい日になりそうだ。

※2018年6月より「三元豚トンカツ弁当」に変更

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(取材・文/しらべぇ編集部・マッキー牧元