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Robert Konrad/Stanford University

 文字が小さすぎて見えなーいっ! っとお怒りの紳士淑女の場合には、大きく見えて、目が疲れず、しかも頑丈なハズキルーペがある。実際に家の母親も買ったくちだが、鄢船のごとく現れた強力なライバル登場かもしれない。

 『Science Advances』(6月28日付)で紹介された米スタンフォード大学で開発中のスマートグラスは、着用者の視線を追って今見ているものに自動でピントを合わせてくれるハイテクメガネだ。

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老眼鏡のデメリット

 歳をとると、目のピントを合わせる力が弱くなり、近くのものが見えにくくなる。いわゆる老眼と言うやつだ。個人差はあるが40代から始まると言われている。目を細めたり、本やスマホを遠くに離さないと見えなくなる。

 そこで老眼鏡の出番となる。これには多焦点レンズが使われており、近くのものでも、遠くのものでもどちらにもピントを合わせられる。

 ところが、従来の多焦点レンズには周辺のものにピントを合わせられないという大きな欠陥があった。

 たとえば車の運転中に車線変更のためドアミラーに目を向けたとしよう。

 そんなとき、多焦点レンズを着用する運転者の視線は、レンズの一番高いところを通して道路の先へ向けられていた状態から、ほぼ直角に曲げられ、レンズの低いところからドアミラーへ向けられる。

 こうした状況できちんとピントを合わせることが、老眼鏡には苦手なのだ。遠近両用の老眼鏡もあるが、多くの場合レンズの下側が老眼鏡となっており、真横のものを見るのにはなれるのに時間がかかる。

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Robert Konrad/Stanford University

視線追跡センサー式の液体封入レンズ


 新開発のスマートグラスは、視線追跡センサーで着用者が見ている物体までの距離を正確に三角測量する。レンズには液体が封入されているので、その距離データに応じて、膨れさせたり、薄くしたり制御することが可能だ。

 こうすることで、見ている対象のピントを自動でさっと合わせてくれるのだ。もう運転中の老眼鏡でヒヤリとすることもない。

 論より証拠、そのイメージを掴むには、実験画像を見るのが一番手っ取り早い。

 画像の下隅に映っている着用者の目に注目だ。視線が左に向けられると、あら不思議。鉢植えと植物のかげから身を乗り出したコアラがくっきり。

 反対に、視線が右に向けられると、ブーメランにしがみついたコアラがくっきりするではないか。こりゃ、便利。

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Robert Konrad/Stanford University

今後の課題は軽量化


 今回新開発されたのは、レンズや視線追跡センサーではなく、センサーのデータを利用して液体封入式レンズのピントを制御するソフトウェアなのだそうだ。

 その性能は、老眼の56人を対象とした実験で好評を博すなど、折り紙付きだ。

 今のところ、VRゴーグルのようにゴツくかさばりそうなので、よほどのガジェット好きではない限り、実用性は低い。

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Robert Konrad/Stanford University

 でも、もっと軽量コンパクトでスタイリッシュに改良が施されたらかなり便利になるんじゃないだろうか?特に近眼と老眼の両方をあわせ持った人には朗報かも。

References:Smart glasses follow our eyes, focus automatically | Stanford News/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52276770.html
 

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