「争点なき選挙」と言われる今夏の参院選の台風の目になりそうなのが、山本太郎が結成した政治団体れいわ新選組」だ。2億円超の寄付金を集め、10人の「当事者」「スペシャリスト」を候補者に担ぎ出した。山本が考える「争点」とは何か?を聞いた。

消費税廃止は大命題。既成政党を超える政策で国会に殴り込みをかける

 参院選公示の2日前、曇天を突くように、山本太郎は激しく叫んだ。

消費税という罰金で、みなさんが金持ちや大企業の尻拭いをさせられてるのはおかしいでしょう!」

 新宿駅西口に集まった約1000人の聴衆からは割れんばかりの拍手が巻き起こる。モニターを使った政策説明や質疑応答など工夫した手法をとる、れいわ新選組街頭演説は目下、話題沸騰中だ。

 4月から募っている寄付は、すでに2億円を超え、演説時には寄付希望者が列をなす。ALS患者や、重度の障がいのある女性、創価学会員など、インパクト抜群の候補者たちも話題をさらっており、れいわ新選組は、今夏の参院選における台風の目である。

 そんな選挙の準備で多忙を極める山本太郎氏が、SPA!の直撃に答えてくれた。まず、れいわ新選組を旗揚げした理由から聞いた。

自由党で一緒だった小沢一郎さんの『野党共闘しないと自民党に勝てない』という言葉に異論はありません。ただ、当時は立憲民主党が独自路線を決定するなど、共闘が難しい状況になった。そのなかで自分にできることは、せめて野党が共通政策を掲げるように、外側からプレッシャーをかけることだと思ったんです」

 野党の共通政策とすべく、山本氏がプッシュするのは、まずは消費税減税、そして最終的には廃止である。現在、野党は増税凍結で足並みを揃える構えだが、山本氏は「甘すぎる」と一喝する。

「与党が増税を明言したまま選挙に突入するんですから、野党は怖くもなんともないと舐められているのです。増税凍結は、増税の先延ばしでしかないんですから、多くの困窮した人を変える選択肢にはなりえない。野党は一致して減税の姿勢を示し、この参院選でねじれを実現して次の政権を窺うべきですが、力及ばずでした」

◆20年間もデフレ状態の国は世界を見渡しても日本だけ

 このように政局をつくりにいく側面もあるが、山本氏が説く消費税減税・廃止論は単なる人気取りではない。実際に消費増税が景気に悪影響を及ぼしている。’14年に消費税を8%に引き上げたときは実質個人消費が8兆円も減り、貯蓄ゼロ世帯が急増したのだ。

「20年間もデフレ状態の国は世界を見渡しても日本だけ。実質賃金は下がり続け、人々の生活も地盤沈下している惨状のなか、消費を冷え込ませる消費増税は、国家の自殺行為です。しかも、税の公平公正という観点からも消費税は間違っています。金持ちが道楽で買うダイヤモンドフェラーリにかかる税率と、ワーキングプアが水やパン、紙おむつなど生きるためにかかる税率が同じ。とうてい公平とは言えませんよ」

 確かに、年収によって消費税の負担率に大きく差が出るのは事実だ。日本経済新聞の調査では、消費税が5%になった’97年は、200万円未満の低年収層は負担率5.5%だったのに対し、1500万円以上の高年収層は1.1%。税率8%になった’15年では、前者が7.2%に増えたのに後者は1.6%にとどまる。仮に税率が10%になると、前者は8.9%になるが、後者は2.2%にすぎない。山本氏が指摘するように、消費税には確かに逆進性がある。

「現在の国民生活は、子供の7人に1人が貧困という状況。なのに『消費増税による財政再建』とか言う奴は、とんだDV野郎ですよ。この国の再建を言うなら、まずは最低限の底上げをしないと。デフレ不況で、日本という同じ船に乗っている人がたくさん死にかけているんです。それを助けるのが、第一でしょう。苦しい人への愛とカネが足りない政策が、20年以上も続いたのがこの国の悲劇です」

 今、日本に必要な緊急政策として、山本氏が打ち出す言葉は大胆だ。消費税廃止はもちろんのこと、最低賃金を1500円へ引き上げてこれによる中小事業主の赤字は政府が補償。また「奨学金徳政令」と題し、奨学金をチャラにすることも公約している。当然ながら、こうした政策には財源確保の面で批判も相次いでいるが、山本氏はそれらを一刀両断する。

「財源は税収に縛られるわけではありません。デフレ時には政府が新規国債を発行して大胆に投資すべきなのです。こう言うと、財務省菅直人さんや野田佳彦さんを洗脳した手法、破綻したギリシャケースを持ち出しますが、あれはユーロ建てで借金をしていたから。自国通貨の円建てで借している日本とは全く別の話。問題はインフレの制御のみです」

◆過去20年で最大の被害者はロスジェネ世代

 最低賃金の伸び率が停滞し、デフレの出口が見えなくなった“失われた20年”。それを脱するために、国が積極的に投資すべきという考えが山本氏の政策の根底にある。とくに投資対象として氏が注目するのは、かの20年における最大の被害者である「ロスジェネ世代」だ。

「過去の歴代政権は、ロスジェネ世代に、賃金補償や家賃補助などの施策を打って、家庭を持てる環境を整え、第3次ベビーブームを起こすべきでした。それがなされなかったため、少子化が進み、年金制度も立ち行かなくなったんです。ロスジェネ世代は政府の経済政策の失敗で損をさせられたわけですから、政府は賠償政策という意味でも、彼らにこれから投資しなければならない。家族をつくりたいと思う人には、最大限のサポートをするのが、持続可能な国家づくりだと思いますよ」

 もちろん、山本氏の目はロスジェネ世代にとどまらず、若者から老人まで全世代を見据える。

「現在の生活保護は、完全に沈没した状態の人でなければ受けられません。これを、沈没前に救えるような、全世代を対象とした生活保障制度に変える必要があります。家賃補助や食費などの生活扶助など、その人が必要としている分野の保護を、切り分けて受けられるようにすべきです」

 セーフティネットの下限を引き上げ、その種類も増やすという点で、税と社会保障のあり方を大きく変える提言である。

「今の与党は、大企業コントロールされ、法人減税など大企業が得をする政策ばかり行っています。割を食っているのは庶民です。逆に言えば、大企業から政治のコントロール権を取り戻せば、庶民は自分たちの生活を底上げできる。まずは庶民がコントロールできるアイコンとして僕らを国会に送り出すことで、政治家が自分たちのために動くことを実感してほしいんです」

 従来のパワーゲームに楔を打つ第一歩として、山本氏は今回の参院選を位置づけている。

「今回の選挙で政党要件が満たせれば、安倍首相との党首討論や幹事長対談への出席が可能になり、メディアへの露出も増えます。与党攻撃はもちろん、野党が嫌がることも言っていきます。なにしろ野党の中にも、与党に反対するポーズだけの議員がいますからね。僕はそこもしっかり突いていくから、政治に緊張感が生まれて、予定調和ではなくみんなガチンコでケンカするようになりますよ。そういう“永田町イチの嫌われ集団”を目指していきます」

 今夏、れいわ新選組が振るう剣先は、政権政党に刺さるか。

山本太郎
’74年、兵庫県出身。高校時よりタレント活動をしていたが、’12年、政治活動を開始。’13年、参議院選挙で東京選挙区で当選。’19年、政治団体れいわ新選組」を立ち上げ代表に就任、今夏の参院選に10人の候補者を出す

<取材・文・撮影/沼澤典史・野中ツトム(清談社)>
※週刊SPA!7月9日発売号「山本太郎、吠える!」特集より