ヤマハ音楽教室などでつくる「音楽教育を守る会」が、音楽教室での演奏について、JASRAC日本音楽著作権協会)に著作料を徴収する権利がないことの確認を求めた訴訟の口頭弁論が7月9日、東京地裁(佐藤達文裁判長)であった。この日は、約2年間にわたって「生徒」として、ヤマハ音楽教室に通っていたJASRACの職員が証人として出廷した。

JASRAC職員「正当行為だった」

この職員は、2017年5月から2019年2月の約2年間、JASRACによる指示で、東京・銀座のヤマハ音楽教室に「生徒」として通っていたという。朝日新聞7月7日付)が「潜入調査していた」と報じたことから、インターネット上で批判の声があがっている。

証人尋問で、原告代理人から「潜入調査だったのか?」と問われると、職員は「原告(ヤマハ音楽教室)のレッスンがどのようにおこなわれているかについての実態調査だった」「(業務のための)正当行為だった」と答えた。

音楽教室の申込み用紙の職業欄には、自分の判断で、JASRACの職員ではなく「主婦」と書いていたという。

JASRAC常任理事「その場で確認しないとわからない」

この日の口頭弁論後、JASRACは報道陣の取材に応じた。

記者から「今回の件は、調査の仕方も含めて、世論の中には、批判の声がある。どう受け取っているか」と問われると、JASRACの増田裕一常任理事は「とくに演奏権は、その場で確認しないとわからない。権利者にとって弱い権利だ。その利用の状況を確認するためにはやむをえない」と述べた。

過去の裁判例では、今回のような実態調査は「正当」だとした判決がある。

「主婦」を音楽教室に送り込んだJASRAC「やむをえない行為、実態調査だ」